第2回:天狼院書店 三浦崇典さん(前編)
本と人を繋ぐ人、本を通して人と人を繋げる人。新たな人と本の関係を造り出してしている方々にお話を聞く連載です。第2回は「天狼院書店」の三浦崇典さんです。
池袋ジュンク堂の脇の道を雑司ヶ谷に向かってまっすぐ歩いて行った先、お蕎麦屋さんの2階にそのお店はあります。階段を登り、ドアを開けてまず目に飛び込んできたのは「こたつ」。5月なのにこたつ?? 足を入れてみてビックリ!こたつの中を涼しい風が。これはヒンヤリ涼しい「冷やしこたつ」なのです。天狼院書店はこんなアイディアの玉手箱のような遊び心溢れた本屋さんでした。
新しい業態の本屋を作る
――まず、三浦さんはどうして以前勤めていた書店を辞めて独立しようと思ったのですか。
以前から書店を作りたいという思いはあって。前の書店でもお店の改革をしたりといろいろ勉強させていただき、機は熟してきたかなと思いまして。
――それでクラウドファンディングを始めたのですか。
いや、それは辞めてから1年後でしたね。前の書店を辞めたのは2012年3月で、そのときには以前に起業していた会社の借金が結構ありました。でも、独立して書店を作りたいと言ったら、出版業界の方々がいろいろと仕事をくれて。ライティングや営業戦略とか。それで借金を全部返した後に、いよいよお店を作ることにしました。クラウドファンディングでは、いろんな人がFacebookでシェアしてくれました。そのおかげで達成することができました。
そのほか、大部分の開業のための資金は国民生活信用公庫や巣鴨信金に、新しい業態の本屋の事業計画書を本一冊分くらい書いて資金を調達することができました。いまは新刊書店を開こうと取次に口座作ろうとしても、とても条件が厳しくて、相当手元資金がないとほとんど不可能に近い状況なのです。古書店は別ですが。
でも自分は新刊書店しか頭にはなかったですね。
――この場所はどうやって決めたのですか。
池袋がいいな、というのは最初からありましたね。オリンピックに向けてこれからますます中核的な街のひとつになっていくと思っていますので。その中で、ここ(南池袋)にした理由ですか? それは当然お金ですよ(笑)。お金があればもちろんジュンク堂さんみたいな場所にお店だしたいですけど。誰だって(笑)。
――内装もとても綺麗ですよね。
有り難うございます。女性的にしようと思って女性のデザイナーさんにお願いしました。あと、棚も職人の大工に全部手作りでお願いしました。これ、お金かかっているんだよなあ。床もすべて張り替えました。居心地の良さに拘りたかったので。
天狼院書店という名前の秘密
――「天狼院書店」という名前の由来、皆さん聞きたがると思うのですが。
インタビューでは「ネットで名前を検索したときにトップにすぐ出てくるから。三浦書店じゃ他にもいっぱい既存のお店が出てきちゃうし。」なんて答えているのですが、本当のこというと忘れちゃいました(笑)。
すみません。お客さんがいろいろと推測してくれて「孤高の星シリウスに因んでつけたのですよね。」とか。格好いいから思わず「あ、そうです。」なんて答えちゃったり(笑)。もう本当に自分でもわからないから、「秘密です。」っていうことにしようかな。うん、そうしよう。「公式見解は秘密です。」
部活動というコミュニティ
――最初に本屋をはじめるときから「部活」とか「皆の本棚」とか、作ろうと思われたのですか。
最初からコンセプトは決まっていましたし。ips細胞のように進化し続ける書店にしたかったのです。「部活」という名前を思いついたのは後なのですが、イベントはもともとやるつもりでした。
――お客さんが自分のおすすめする本を並べているコーナーがありますが、この権利を得るにはどうしたらよいのですか。
それには、2500円以上お買い上げいただいたお客様にプレミアムカードというものをお渡ししてまして、毎月10日から25日の間にエントリーしていただくのです。ずっと棚をキープしたいからということで、毎月2500円以上買い続けてくれる方も多いですね。
――お客様はどういった層のかたが多いですか。
うーん、女子高校生から57歳の男性まで。近所から釧路まで。ロンドンから来たという人もいたかな。土日はもう、観光地みたいにいろいろな所から来てくれます。テレビなどの取材が多いので、それを見て全国から来てくれます。
でも、部活に定期的に出てくれる人は関東一円ですね。
――部活は現在いくつあるのですか。
17、8個かなあ。全部ちゃんと回転してますね。土日に3本ずつとか。著者のイベントなども併せると月刊40本くらいイベントがあります。部活はそれぞれスタッフがマネージャーとして仕切ってくれていて、各自がFacebookで告知して自由に集まっています。
(プロフィール)
三浦崇典
天狼院書店店主。(株)東京プライズエージェンシー代表取締役。雑誌『READING LIFE』編集長。天狼院書店の1店舗目「東京天狼院」を池袋にオープンし、福岡、京都開店予定。新しい読書スタイル「リーディングライフ」を提唱。
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