携帯ゲームで年収1000万円!個人クリエーター護美童子インタビュー

携帯ゲームサイトの『アプリ★ゲット』(http://appget.com/)を運営するスパイシーソフトは、『アプリ★ゲット』にゲームを投稿した個人クリエーターが、年収1000万円を達成したと発表しました。果たしてどんなクリエーターなのでしょうか。個人クリエーターの星野裕太(護美童子)さんにインタビューしてみました。

回答者:
星野裕太さん(写真右)
山田元康さん(写真左)スパイシーソフト株式会社 代表取締役社長

インタビュアー:
未来検索ガジェット通信編集部・宮原俊介(shnsk)

■大学を中退、クリエーターとして上京
記者 星野さんは、どのような経緯でクリエーターになり、独立したのでしょうか。

星野 はじめに携帯のアプリを作り始めたのが高校3年くらいなんですけど、初めて携帯で動くアプリを作って、『アプリ★ゲット』に登録をしたんです。

そこでユーザーの声を聞きながら作っていって、人気がでてきて。それから『アプリ★ゲット』さんからコラボのアプリだとかサポートの話とかあって、連絡を取って。そこからアクションゲームの『チャリ走』に人気が出たんです。(編集部注:累計1000万ダウンロード)

たくさんの人に遊んでもらえるようになったので、クリエーターとして、いろいろ作ってやっていけるのではないかと考えて、大学を中退して東京に出てきました。

記者 携帯のアプリを作ったきっかけは?

星野 もともとプログラム自体に興味があって、Windowsアプリとか考えたんですけど難しくて。でも「ゲームは作りたい」と思ったのと、自分でも携帯のアプリで遊んでいたので「どういうふうに作るのかな」と調べてみたら、Javaという言語に出会いました。勉強していたC言語に文法が近いということで作るようになったんです。

記者 『アプリ★ゲット』での最初の作品がチャリ走なのでしょうか?

星野 違います。
最初は『ぱ!ねる』というパズルアプリです。キャラクターを右左に動かすと、周りのパネルが赤から青になるんですけど、全部のパネルを青にしてクリアみたいな、簡単なゲーム。それが一番最初に作ったものです。

記者 最初に出された当初、いろいろなユーザーの意見を聞いたそうですが、どんな意見を得られましたか?

星野 『アプリ★ゲット』に登録して、たくさんのユーザーに遊んでもらえたみたいで。「おもしろい」とか「こうなったら おもろしいんじゃないか」という話を掲示板で見ました。

記者 最初はどれぐらいのペースで制作されたのでしょうか。年間何本とか。

星野 月に1~2本ですね。

■専属契約でサポート
記者 今はスパイシーソフトと専属契約を結ばれているんですよね。

山田 専属契約は月額、固定で報酬をお支払いする契約なんですが、専属契約といっても、メシを食って寝てください、死なないでくださいという程度の話です。うちからは何本配信してくれ、とかを設けているわけではないんですよ。作った場合は、うちで配信してくださいと。でも作らなくてもいいんですよ。特に作ることについて制約はないです。急かすこともないですし。本当は作ってくれた方が嬉しいですけど(笑)。

記者 「コラボアプリ」とはどんなものなのでしょうか。

山田 三角形ですね。クリエーターさん、ユーザーさん、『アプリ★ゲット』編集部の三者で協力しながらものを作ろうという企画を「コラボアプリ」と呼んでいます。

クリエーターさんには作りたいもを作る、というのがある。それプラス、『アプリ★ゲット』のようなコミュニティの場とか、ユーザーさんを集める場を提供して、いろいろなユーザーさんの声をフィードバックして、クリエーターさんも「じゃあこうしよう」と作っていくんです。

記者 作る前にテーマはあるんですか?

山田 要望をもらうのではなく、クリエーターさんの原作があって、続編をユーザーさんと一緒に作ろうということです。そうでないと、○○アプリが欲しいとか、ユーザーさんの要望を聞く場になってしまう。そういう場ではないです。

記者 あくまでクリエーターの原作があって、ユーザーのフィードバックとアプリゲットの間でブラッシュアップしていいものを作ろうと。1本作ったら、作品ごとに契約していくんでしょうか。

山田 公式サイトで配信する契約をします。

最初は雑誌の1コーナーの企画として始まったんですが、それを携帯サイトに移動して、本格的に進めています。

記者 クリエーターが収益を獲得する手段を具体的に教えてください。

山田 まず、広告収益です。『アプリ★ゲット』では、もともとはクリエーターサイトへ誘導して、クリエーターさんが自分のサイトに広告をつけるモデルでした。今現在は、人気に応じて広告の収益を分配する仕組みを構築しようとしています。

それ以外に、アプリ自体を決済代行して販売する仕組みがあります。多くのファンを持っているクリエーターさんとは専属契約しています。専属契約を結んでいる場合は、その間にアプリを作っても作らなくても一定の報酬を毎月お支払いしています。多くのファンがついているアプリについてはライセンス費用もお支払いしています。そのアプリの続編を制作する際に、クリエーターさん自身でアプリを作らなくても、版権使用料のような形でお支払いしています。

また、クリエーターさんのサイトから、ユーザーさんが有料サービスに入会したときに報酬をお支払いしているアフィリエイトがあります。いろんな形でクリエーターさんにお金が入ってくる。そうなると、クリエーターさんもそのお金で生活することができ、創作活動に専念することができる。そうすると良質な作品がたくさん生まれ、結果、ユーザーさんが集まる。

我々の収入が上がってクリエーターさんへ還元できる報酬も上がります。そうすることでクリエーターさんの投稿が増えて、ユーザーさんにいっぱい来てもらう、というモデルをいろいろ試行錯誤しています。

記者 星野さんは、専属になって個人のときと何か変わったことはありますか?

星野 何がどう変わる、ということはないですね。

記者 『アプリ★ゲット』では、1000万円を稼ぐクリエーターは何人かいらっしゃるんですか?

山田 少なくとも把握している中では1人、たぶんほかにも何人かいると思います。星野さんかどうか分かりませんが、3年後には年収1億円というクリエーターさんというのが、1人は出てきて欲しいと思っています。1億円ぐらいいかないと、アメリカンドリームにならないので。

■個人なら自分でやりたいことを
記者 星野さんに、個人で制作するメリットとかデメリットを教えていただきたいのですが。

星野 メリットは、やはり何人かでやる場合は、それぞれがやりたいことを一緒にしなきゃいけないから、ある程度妥協しなくちゃいけないとか。個人でやれば自分のやりたいことをそのまま作品として反映できる。それがメリットだと思います。デメリットは、メリットで言ったことにもありますが、アイデアをどんどん出していく場合には、何人かいた方が出やすいかなと思います。

記者 今後星野さんがやってみたいことはどんなことですか?

星野 携帯の性能が上がってきているので、オンラインを使ったチャリ走のオンライン版とか、そういうものを作ってみたいです(編集部注:今後『アプリ★ゲット』では、ユーザーのプレイ結果をゴーストデータとして対戦できる仕組みや、ターン制のリアルタイム対戦など、オンラインゲームの開発ができるAPIの提供を予定しているという)。

記者 オンラインになると開発規模が大きくなりますが、それでも個人制作のスタイルを貫いていきたいですか?

星野 それをおもしろくするために人が必要であれば、個人にこだわる必要はないと思います。ひとりの方がやりやすければ個人でやりますし。

記者 パソコン版のゲームを作ってみたいということですが、具体的には?

星野 勉強中です。作るとすれば、パソコンのスペックを生かして3Dを使う面白いゲームとか、携帯で作ったものをPCで遊べるようにしたい。今まで遊んだことがない人に遊んでもらいたいです。

記者 これからクリエーターを目指している方とか、個人クリエーターとして活動されている方にメッセージをお願いします。

星野 クリエーターをやってる人は作品に対して何かしら思いをこめて作ると思います。ゲームなら、自分の中では画像や見た目がどうとか、というよりは、遊んで面白いものを作っていきたい。ほかのクリエーターにも、見た目にこだわるのではなくて、本当に面白いものを夢中で作って、トコトン作り込んでもらいたいなと思います。

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宮原俊介(エグゼクティブマネージャー) 酒と音楽とプロレスを愛する、未来検索ブラジルのコンテンツプロデューサー。2010年3月~2019年11月まで2代目編集長、2019年12月~2024年3月に編集主幹を務め現職。ゲームコミュニティ『モゲラ』も担当してます

ウェブサイト: http://mogera.jp/

TwitterID: shnskm

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