【シェアな生活】「政治家はネットに魅力を感じている」 畠山理仁さんインタビュー
『公の記者会見オープン化』という難題に立ち向かうフリーライター畠山理仁さんに”公の情報共有”についてきいてます。今回は第5回目です。前回はこちらです。
※連載シリーズ『シェアな生活~共有・共感・共生がもたらす新しいライフスタイル』関連記事です。
登場人物:
畠山=畠山理仁(はたけやまみちよし)。記者会見オープン化を求める活動で注目されるフリーライター。
深水=深水英一郎(ふかみえいいちろう)、ガジェット通信。
●政治家はネットに魅力を感じている
――深水:そもそも記者クラブが政治の側から「記者会見をオープンにしてください」と言われるって、変ですよね。
畠山:恥ずかしいことですよね。政治の側がやめてと言ってるわけではないのに、記者クラブの側が入れないとかいうのは非常におかしい。記者クラブだけの閉鎖された空間で限られた人たちに向けて話をしていると、その人たちに都合のいいように編集されてしまう。そして報じられなかったことが結局”死んじゃう”わけじゃないですか。他に見ている人がいないから隠すことができるし。これは、政治の側としては嫌な部分もある一方で利用できる部分もある。
――深水:今までは政治の側から見ても閉鎖的な方がメリットがあった、ということなんでしょうか?
畠山:オープンにするってすごい勇気のいることだと思うんですよ。例えば、今まで20人ぐらいの人間に質問されてただけなのが、300人とかに一斉に突っ込まれるようなことになるわけですから。政治の側も相当自信がないとオープンにするって言えないと思うんです。でも、それでもオープンにして欲しいって政治の側に言わせる記者クラブってヤバいんじゃないの? って思いますよね。本当に伝えたいことを報じてくれていないと政治が思っているからオープンにしてくれって言っているわけで。
――深水:これから政治と人々の力関係が変わっていく中でメディア側も変化は避けられないはずですよね。やっぱりそれはネットの力が強まっているということですか?
畠山:政治家はネットの力に魅力を感じているんじゃないでしょうか。新聞とかテレビだけじゃなくて、ネットだったら全部そのまま流すっていうことができますし。政治の側としてはできるというよりやってくれると思っているかもしれないですね。利用してやろうって言う風に思っているかもしれない。でも、全部出すことによって、今までは何ページ分しか出ないからすごい突っ込まれ方をしていたのが、全部出ることによって「本当の意味はこっちなんだな」と理解してくれる人が出てくるかもしれないっていう期待もあるんだと思いますね。証拠として、後から「あの発言のシーンは何だったんだろう」って思った人が、ログが全部あったら直接見て「あ、そういう意味じゃなかったんだね」って気付くチャンスができるわけじゃないですか。
――深水:ある時期、地方の講演会で政治家が言った言葉の一部を失言として取りあげて、全体がどうだったのかわからないワンフレーズだけを繰り返して失脚させたりということがありました。
畠山:今、まさに柳田さんがそうですね。柳田さんの場合は、うかつだったと思いますけどね。(編註:インタビュー時、柳田稔法相の国会答弁軽視発言問題が起きたばかりだった)
――深水:発言の状況や文脈ごと届けられるようになれば印象も変わるし、問題じゃないかもしれない。単に地方講演で面白いことを言って和ませるためのジョークかもしれない。言葉はそのときの状況も含めて考えないとわからない。ワンフレーズだとそれが判別できないんですよ。
畠山:そうそうそう。柳田さんの場合はサービスで言ったところもあると思うんですね。サービスで言っているのか本気で言っているのかっていうのも、前後見ればわかるわけですし。結局全文見ても「あれは良くないよ」って話になることもあるかもしれませんけど。
――深水:検証できる、というのがポイントですね。それこそ『ニコニコ動画』の『ニコニコ生放送』で小沢さんが会見をやって話題になっていましたけど、「思う存分伝えられる」ということは重要なんじゃないですか。そういうネットのツールとかネット放送を利用する政治家は増えて行くと思います?
畠山:ああ、増えると思いますね。
――深水:原口一博さんの『Ustream』会見はちょっと未来すぎたっていう気がします。大臣が一人で資料まで読みあげて、図表を出して、視聴者のコメントを読み上げ、質問に答える。すごいけど画期的すぎたというか。すごすぎて他の大臣が真似できない。(2010年4月9日、原口総務大臣が自らUstreamを利用してオンライン会見の実験をおこなった https://getnews.jp/archives/55179 記者クラブ主催の会見とは別に、国民と大臣が直接やりとりする試みとして注目された)
畠山:僕も画期的だと思いましたよ。この間『記者会見ゲリラ戦記』を作るにあたって原口さんにインタビューをしに行ったんですけど、本人にあれは画期的でしたねって話をしました。
――深水:ほんと素晴らしいんですけど、エッジが効きすぎてて。実質続かなかったですし……。あれはやり過ぎなのかな。将来、あんな会見もあり得ると思います?
畠山:あの形ってすごいと思うんですよね。あれで本当に、なんだろうな……見ている人の声が直接届くっていう意味では、画期的なことだと思うんです。会見で質問がタイムラインに流れてきていて、それをそのまま読みあげて答える。しかもどんな質問が出ているか、参加している人全員がわかる。例えば大臣に対してキツイ質問がざーっと何回も出ているのに、大臣がそれを無視しつづけたっていうのまでわかっちゃうじゃないですか。それってすごくいいことだと思いますよ。「あ、この人は逃げる人なんだ」とか、「あ、これに対してはこういう風に説明をする人なんだ」というところまでわかる。
――深水:ただ、あの形そのままだと難しいですね。目の前に流れる大量のコメントの中から的確に質問を拾いあげて答えるなんて、誰でもできるもんじゃない。あれが原点となって、たとえば質問者は誰かが代表して別な人がまとめてする、などの工夫をしていけば実現できるようになるのかな。
(つづく)
※トップ写真は、原口一博氏によるネット大臣会見の模様より引用
畠山 理仁¥ 798
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(編集サポート:kyoko)
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トンチの効いた新製品が大好き。ITベンチャー「デジタルデザイン」創業参画後、メールマガジン発行システム「まぐまぐ」を個人で開発。利用者と共につくるネットメディアとかわいいキャラに興味がある。
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