【シェアな生活】「リアルで会見に参加するのは、質問したいから」 畠山理仁さんインタビュー

畠山さん

『公の記者会見オープン化』という難題に立ち向かうフリーライター畠山理仁さんに”公の情報共有”についてきいてます。今回で第4回目です。前回はこちらです。
※連載シリーズ『シェアな生活~共有・共感・共生がもたらす新しいライフスタイル』関連記事です。

登場人物:
畠山=畠山理仁(はたけやまみちよし)。記者会見オープン化を求める活動で注目されるフリーライター。
深水=深水英一郎(ふかみえいいちろう)、ガジェット通信。

●リアルで記者会見に参加する意味

――深水:たとえば、記者会見については行かずともある程度中身はわかるじゃないですか。議事録もあるし、最近はビデオを出しているところもある。

畠山:出しているのは外務省と官邸とかですかね。総務省はやってないんですよね。まあ、『ニコ動』とかで見れますけど。

――深水:実際に記者会見に行くことによる利点って何でしょうか。

畠山:僕の場合、記者会見には質問をしに行くんですよね。あと、写真を撮りに。記者会見って、質問をしないと面白くないじゃないですか。「面白い」という言い方もアレですけど。まあ、他の人が聞きたいことを代表して質問するというのもありますけど、基本は自分が疑問に思ったことを聞きに行くという場所だと思ってるんですね。質問や撮影が無いときはネットで見るのもいいですね。家で裸で見ていてもいいので(笑)。こう、寛いだ感じで見ていても。

――深水:全裸で。

畠山:えぇ、全裸ででも(笑)。

――深水:全裸で議事録見ちゃったりもできる。

畠山:そうそう。裸踊りしながらでも見れる。

――深水:まぁ、踊ってたらあまり頭に入んないと思いますけど。畠山さんとしては、民主党の記者会見オープン状況は何合目というか、何パーセントだと思いますか?

畠山:5%くらいじゃないですかね。

――深水:ああ、全然ですね。省庁で言うと、質問できる省庁っていうのはどのくらいなんですか?

畠山:今、質問できるのは、週2回でクラブも一緒のやつだと、外務省と金融庁ですよね。それから、法務省、厚生労働省、首相官邸、あとは文部科学省。あと何があったかな?

――深水:消費者庁とかは? 電話で聞いた限りだとかなりオープンだったんですけど。

畠山:あ、消費者庁もできますね。あそこはできたのが去年なので、クラブが始めなかったんですよね。クラブがなくて、規約も全然なくて、広報の人が極めて普通の感覚を持った人だったので、行きたいって言う人は入れましょうっていう形でやってたんですね。そしてだんだん、来る人が決まって来て。クラブ室もね、フリーの人が使える共有の机がたくさん取ってあったんです。だけど、来る人はやっぱりクラブの人に限られてきたので、共有の机はちょっと少なくなって。でも、今でもフリーの人が来て使っていいよっていうスペースが4席くらいはありますよ。大きな媒体も常駐しているわけではないので、べったりくっついてるって人はいないんです。ただ、各社のブースっていうのはもうあります。確かに消費者庁はオープンですよね。

――深水:まだ新しいっていうことが大きいんですね。あまり話題に上がらないのが不思議ですが。

畠山:うーん、そうですね(笑)。

――深水:それは、消費者庁自体が小さくてあまり注目されないというのもあるんでしょうね。新しいけど当たり前のことを当たり前にやっているという意味では注目してもいいのではないかと思うんですが。記者会見開放というとどうしてもみんな外務省、岡田克也さんあたりに注目が集まりますけど。

●今、そこで生まれつつある新しい記者クラブ

畠山:それは、記者クラブとしっかり戦って開いたという意味では、一番激しくやったところなので。消費者庁の場合は、記者クラブがなかった状態から始まって、今はだんだん記者クラブの側が規約というか決まりのようなものを作り始めていて。例えば、以前『Ustream』で中継をした人がいて、それ自体は別に何の問題もないはずなんですけれども。

――深水:ブロガーのパセリさんですよね。

畠山:そうそう。入るときの申し込みの建前と、やったことが違うっていうことで、記者クラブ側が「これは……」と言い始めて。消費者庁の広報としては気にもしていなかったことなんですが、記者クラブ側が「どういう目的で取材入るのか聞こう」ってことになっていって。事前に書類を出してくれっていうことなってきていて。そういうのが少しずつできはじめている。

――深水:まさに今、ライブで”記者クラブ”ができはじめている。

畠山:そうそう。『消費者問題記者クラブ』とかそういうのがあるんですけど。まだゆるやかな感じですけどね。

――深水:どの記者クラブもそういう歴史をたどってきたんでしょうね。

畠山: 国土交通省は質問できる人とできない人がいるんですよね。いまだに規約を変えてくれません。農林水産省は入って写真は撮れるけど質問できない。法務省はフリーの記者も質問できます。財務省は入れるようになりました。経産省は入って質問できるっていうのは昔から。「人気がなくて人が来ないから別にかまいませんよ」と言われます。

――深水:人が集中しない省庁は緩いのかな。

畠山:そうですね。あと、防衛省はダメでしょう? 官房長官もダメで。今、岡崎トミ子さんが国家公安委員長と消費者庁を兼任しているので、消費者庁でやるときに国家公安委員長に質問することができるっていう。

岡崎さんは、火曜日には警視庁のほうで会見をやり、金曜日には消費者庁のほうで会見をやっている。消費者庁の方からバランスをとって欲しいということで申し入れをしてこの形が実現しているんです。実は警察で会見をやる場合、フリーの人は中に入れないんですよ。記者クラブの人しか入れない。なので岡崎さんが消費者庁に来たときにそちらで警察関係の質問をおこなう。兼任しているからそういう抜け道的な質問ができる。でもね、そんなのちっともオープンじゃないですよね(笑)。

後は、国家戦略担当相の玄葉光一郎さんも、記者クラブと合同の会見で大丈夫。記者クラブとは別でやっているのが、環境省と行政刷新の蓮舫さんかな。記者クラブが拒否したから、別の日にやっているんですよね。環境省は環境大臣の小沢鋭仁(さきひと)さんのときに“一般会見”っていう名前でやり始めたんですけど、松本龍さんになってから一回も開かれていない。

――深水:結局、”人”次第なんですね。仕組みになっていない。

畠山:そうですね。本人にその気があるかないか。

――深水:記者クラブっていうのは既得権益なわけですよね。“権力の番人”だとかそういうものではなくなってしまった。

畠山:本人たちは“番人”だと思っているかもしれないですけどね。

――深水:本人たちはそう思っているかもしれないけど、結局情報を扱う商売に関わる人達ですから情報を独占したい、なので他の人は入れない、ということですよね。

畠山:現場の人たちは優しかったりするんですよ。質問しても「面白かったよ」って言ってくれたりとか。名乗らないでみんな質問しているから、「名乗らないで質問すればバレないよ」とこっそり教えてくれたりとか(笑)。現場の人たちは、会見がオープンじゃない状況は問題だとは思っているんだけど、ただ各社いろんな考えもあるし、会社に持って帰るとやっぱり「ダメです」って言われたり。

――深水:要は、商売の邪魔すんなって話ですよね。

畠山:そうですよね。単純にそうだと思います。

――深水:余計なやつが入って来て、別な情報ルートで発信されると困っちゃうよ、と。

畠山:そうそう。「俺たちがスポンサーを取って放送しているのと同じものを無料で配られたら困ります」ということです。総務省がフリーに動画撮影を認めないのは、そういうことだと思うんですね。

――深水:映像系の、テレビ局等からの圧力なんじゃないですかね。総務大臣の原口さん自身はかなり積極的にオープンにしようという意思を感じたんですがね。結局会見で質問も撮影もできなかったけど。原口大臣は、自分で『Ustream』使って会見のテストをやってたりしてましたよね。大臣がこんだけやりたいのにそれでも動かせないというのは、ほんと怖いですね。

畠山:一応、会見の主催は記者クラブってことになっている。で、記者クラブの主催っていうのは、建前上は言論の自由を保障するために記者クラブが主催して、それに権力が応じなければいけないということになっているから、政治の側から「記者クラブをなくせ」っていうのは難しいんですよ。

――深水:政治の側から「しっかりせえ」ぐらいは言えるのかな。

畠山:しっかりしろとか、オープンにしろとか要請はできます。実際それをしてたりもするんですけど、そこで「いやいや、それではセキュリティがどうの」とか言われるわけですよ。

――深水:まあ、でたらめですよね。

畠山:でたらめですね。全然。

(つづく)

【シェアな生活】「リアルで会見に参加するのは、質問したいから」 畠山理仁さんインタビュー
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(編集サポート:kyoko)

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深水英一郎(ふかみん)

深水英一郎(ふかみん)

トンチの効いた新製品が大好き。ITベンチャー「デジタルデザイン」創業参画後、メールマガジン発行システム「まぐまぐ」を個人で開発。利用者と共につくるネットメディアとかわいいキャラに興味がある。

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