ソフトの拡張性がヒットのカギ? Android搭載のユニークなノートPC『dynabook AZ』製品レビュー

東芝のAndroid搭載ノートPC『dynabook AZ』

東芝が8月下旬に発売予定のノートパソコン(PC)『dynabook AZ』をお借りしました。10.1型の液晶モニタとキーボード、タッチパッドを備えたノートPC型の本体に、OSはAndroidを採用した野心的な製品。Androidを搭載したタブレットPCがデルやAsusなど各社から予定されていますが、ネットブックの形態でAndroidを搭載する端末はほかに例がありません。東芝は“クラウドブック”というカテゴリーを命名し、スマートフォンの機動性とPCの操作性の両立をコンセプトにしています。はたしてどんなPCなのでしょうか。

※すべての写真を見るにはこちらをご覧ください

・ビジネス文具っぽい外観

ビジネス文具のような雰囲気

まず外観をチェック。閉じた状態でも厚さ12~21mmと非常に薄く、軽いことから、B5判のビジネスノートのよう。

天板のテクスチャパターンも、ビジネス文具のような印象を強くします。重量もわずか870gなので、小脇に抱えたりカバンに入れて気軽に持ち運べるのが特徴です。

・ハード上の拡張性は十分

HDMI出力端子とヘッドホン出力/マイク入力共用の端子、SD/SDHCメモリーカードとマルチメディアカードに対応するブリッジメディアスロットを装備

インタフェースは、左側面にHDMI出力端子とヘッドホン出力/マイク入力共用の端子、SD/SDHCメモリーカードとマルチメディアカードに対応するブリッジメディアスロットを装備。

USB端子とUSB Mini-B端子がひとつずつ、電源コネクタ、セキュリティロックのスロットを装備

右側面にはUSB端子とUSB Mini-B端子がひとつずつ、電源コネクタ、セキュリティロックのスロットを装備しています。

SDカードやUSBメモリーなどPC用のデバイスは外部ストレージとして認識されるので、PCからデータを受け取って作業することも可能。HDMIで出力すれば、グラフィック処理に優れた『NVIDIA Tegra 250プロセッサ』によりテレビなどに接続して大画面を利用することができます。外部の機器と接続して利用するハード上の拡張性は確保されています。

ネット接続端末として良好

ウェブ閲覧はノートPCと遜色なし

通信は無線LANとBluetoothに対応。ブラウザでウェブサイトを利用するには軽いうえにモニタが見やすく、快適な端末といえるでしょう。ただし、外出先で無線LANに接続するには、接続スポットを利用するか、イーモバイルやソフトバンクモバイルの『Pocket WiFi』、NTTドコモの『ポータブル Wi-Fi』といった無線LANルーターを使う必要があります。

メールアプリケーションも標準で装備されているので、ウェブの閲覧や電子メールの利用といったネットブック用途には十分に対応します。また、Windows PCをネットワーク経由で遠隔操作するアプリケーション『SingleClick Connect』を利用して、外出先から自宅のPCにある画像、映像、音楽などのデータを再生することも可能。ネットに接続して機能する“クラウドブック”としての機能が押さえられています。

バッテリー駆動時間がスペック値で7時間というのも、Android搭載ならではの特徴としてうたわれていますが、限られたレビュー期間では検証できませんでした。触った印象では、ウェブの閲覧などで連続使用しても、少なくとも4時間以上は動きそうです。

スマートフォン的な挙動に慣れが必要
見た目がノートPCなのでついついPCとして操作してしまいますが、OSの違いによる微妙な操作の違いには少し慣れが必要かもしれません。例えば、前の画面に戻る場合に「ESC」キーを押す、ホーム画面に戻るときに「HOME」キーを押す、といったAndroid独特な操作は覚えておく必要があるでしょう。

ブラウザのスクロールは、ポインタが必ずどこかをポイントしているスマートフォン的な挙動に一瞬とまどいますが、タッチパッドを使ってPCのようにスクロールさせることができます。矢印キーを使ってポインタを移動させることによるスクロール操作も有効です。

特殊キーにより使いやすい設計のキーボード

キーボードにはホームや設定、メニュー、ブラウザやメーラー、検索ウィジェットの起動、映像や音楽の操作、最近使ったアプリケーションの表示といった特殊キーが用意されており、ポインタの移動や選択に頼らなくても操作しやすくなっています。

・豊富なソフトをプリインストール

19のアプリケーションをプリインストール

本体には電子辞書アプリケーション『デ辞蔵』、オンラインメモサービス『Evernote』アプリ、『Twitter』クライアントとしても利用できる『fring』、マイクロソフトの『Office』文書を表示・編集したりPDF文書を表示できる『Documents To Go』やメディアプレーヤー『TOSHIBA Media Player』など、19種類のアプリケーションがプリインストールされています。

11のウィジェットをプリインストール

デスクトップからすぐに利用できるウィジェットは、『Google』による検索、『YouTube』など、アプリケーションと重複するものを含め11種類をプリインストール。

デスクトップは全5画面から構成され、アクセスする場所のSSIDにより自動で切り替えが可能。職場用、自宅用、外出先用など用途に応じてウィジェットを配置、デスクトップをカスタマイズできます。

・ソフトの拡張性はどうなる?
ここまで触ってみて、いくつか気になる点が浮かんできました。まず、『Androidマーケット』の利用について(7/28 追記:『dynabook AZ』には、『Androidマーケット』アプリがプリインストールされていません。このため、『Androidマーケット』からアプリをダウンロードすることができなくなっています)。今のところ、『Androidマーケット』はLAN接続には対応しておらず、3G回線からの接続でのみ利用できます。つまり、『dynabook AZ』では『Androidマーケット』からアプリをダウンロードしてカスタマイズしていくことができないのです。

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7/26 追記:
東芝ウェブサイトの『dynabook AZ』製品ページに「Android Marketからアプリケーションをダウンロードすることはできません」と記載されており、今のところ『Androidマーケット』の利用を想定していない仕様であることが分かります。

7/28 追記:
記事の公開後、読者より「『Androidマーケット』はLAN接続には対応しておらず、3G回線からの接続でのみ利用できます」という記載内容について事実と異なるのでは、と指摘をいただきました。

東芝に追加取材したところ、『dynabook AZ』は「Andoridマーケットは接続形態によらず利用できません」という回答を得ました。下記で記載しているように、海外でSIMを挿入して使う場合にも、同様に利用できないとのこと。その理由について質問すると「Google社にご確認いただくべきご質問かと思います」との回答が。

そこでGoogle広報部に、なぜ『dynabook AZ』で『Androidマーケット』が利用できないのか質問してみました。質問に対して「まず『Androidマーケット』はスマートフォンでの利用を前提にしたもの」と前置きしてから「個々の機器に関してはコメントしない方針です」という回答を得られました。

これらから推測すると、今のところGoogleはノートPCやタブレットといったスマートフォンではない機器に、『Androidマーケット』の利用を許諾していない模様。ただし、今後スマートフォン以外のAndroid搭載機器が増えていくことから、この方針が変更される可能性がありそうです。

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バッテリーを外すとSIMが挿入できるスロットが

バッテリーを外すと、実はSIMカードのスロットがあり、『dynabook AZ』も3G通信を利用できることが分かります。東芝にこの点を質問してみると、「SIMスロットは海外向けです」との回答が。『Androidマーケット』がLAN接続を許可しない限り、国内では『Androidマーケット』は使えそうにありません。

それでは、東芝独自にアプリを追加したりアップデートすることはあるのでしょうか? 東芝からは「今後のアプリの追加は、動作確認をした上で提供することを検討しています」という回答を得られました。どのような形態で配布されるのかは不明ですが、今後東芝独自にアプリを提供していく考えはあるようです。

OSのアップデートについても聞いてみました。現在のOSは、プリインストールされるものとしては最新のバージョン2.1。ここからアップデートされる可能性について東芝は「検討中ですが詳細はまだ申し上げられません」と回答しています。バージョン2.2に対応すれば『Flash Player 10.1』でFlashコンテンツも再生できるようになるのですが、この先どうなるのでしょうか。

・Androidスマートフォンユーザーのネットブック

Androidスマートフォンユーザーには手軽に使えるネットブック

上記をふまえると、既にAndroidスマートフォンを使っているユーザーには、『dynabook AZ』は手軽に使えるネットブックとして大活躍しそう。『Evernote』を活用してスマートフォン、『dynabook AZ』間でデータを同期しながら、TPOに応じて使い分けができそうです。

とはいえせっかくAndroidを搭載しているのに、現状ではAndroidアプリを入手してカスタマイズできないのは少し残念。Androidスマートフォンと『dynabook AZ』の関係を『iPhone』と『iPad』にたとえるとしたら、いくら「大画面になって『iPad』はスゴい!」と絶賛するユーザーでも、『iPhone』で使える『App Store』が使えなかったら手放しで絶賛できないでしょうから。今後の東芝、そして『Androidマーケット』の対応が注目されます。

『dynabook AZ』主な仕様
CPU:NVIDIA Tegra 250プロセッサ、1.0GHz、2コア/2スレッド
メモリー:512MB(オンボード)
記憶装置:16GB 内蔵フラッシュメモリー
ディスプレー:10.1型ワイド WSVGA TFTカラー Clear SuperView LED液晶、1024×600ドット
キーボード:85キー、キーピッチ 19mm、キーストローク 1.6mm
ポインティングデバイス:タッチパッド
通信機能:無線LAN、Bluetooth
メディアスロット:1スロット(SDメモリーカード、SDHCメモリーカード、マルチメディアカード対応)
インタフェース:USB2.0×1、USB2.0 Mini-B×1、ヘッドホン出力/マイク入力(3.5mmφ3極ミニジャック)×1、HDMI出力端子×1
ウェブカメラ:1/5インチ プログレッシブ方式CMOSセンサ、有効画素数約130万画素
サイズ:W262.0×D189.8×H12.0~21.0mm
重量:約870g
付属品:ACアダプター、電源コード、取り扱い説明書、保証書、バッテリーパック

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shnsk

宮原俊介(エグゼクティブマネージャー) 酒と音楽とプロレスを愛する、未来検索ブラジルのコンテンツプロデューサー。2010年3月~2019年11月まで2代目編集長、2019年12月~2024年3月に編集主幹を務め現職。ゲームコミュニティ『モゲラ』も担当してます

ウェブサイト: http://mogera.jp/

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