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絵を描けなくてもマンガが描ける夢のソフト『コミPo!』発売 作者の田中圭一先生を囲む座談会

田中圭一さん

●キャラクターを”シェア”して絵を描かずにマンガを描く。このソフトはまさにマンガ版『ボーカロイド』

絵を描けなくても漫画家になれるソフトが登場した。その名は『コミPo!』。2010年12月15日発売だ。このソフトの中には、キャラクターや背景など、マンガに必要なパーツがすべて揃っている。ユーザーはそれらのパーツを組み合わせるだけでマンガを完成させることができる。絵を描く必要は、一切、ない。まさに革命的といえるソフトだ。

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音楽の世界に”シーケンサー”というソフトがあるのをご存じだろうか。これはデジタル音源を自在に組み合わせて音楽を作成するものだ。”シーケンサー”を使えば楽器を弾けなくても作曲をし、楽曲を完成させることができる。”楽器を演奏する”という技能がなくても音楽を創ることができるようにしたのがこの”シーケンサー”なら、”絵を描く”という技能がなくてもマンガを描けるようにするのがこの『コミPo!』なのである。

これまで漫画家は自らの絵柄を確立し、自らのオリジナルキャラクターを生み出すことに腐心してきた。しかし、この『コミPo!』のアイデアを生み出した田中圭一さんは、自分の絵柄を捨てた漫画家として有名。代表的なのは手塚治虫風の絵柄を用いたパロディだ。自分の絵柄は一切使わず、すべて手塚治虫タッチで描ききっている。手塚タッチを習得するため、2年間ひたすら模写を続けたという。さらには”本宮ひろ志”や”永井豪”の画風も習得。画風模写によるギャグマンガを次々と世に送り出している。通常、漫画家であれば「自分の画風を確立しなければならない」とか「オリジナルキャラクターでなければならない」という常識の中で作品を生み出していくものだと思うが、田中圭一さんはその常識をも軽く飛び越え、未知の表現領域を開拓した。文筆の世界であれば、「文体模写(パスティーシュ)」はひとつのカテゴリを形成しているが、田中圭一さんの作品群は「画風模写」「漫画パスティーシュ」とでもいうべきカテゴリを創出したといえる。

そういった、マンガの常識を飛び越えた中で創作を続けてきた田中さんだからこそ、この『コミPo!』を発想することができたのではないだろうか。『コミPo!』では、ユーザーがみんな同じキャラクターを共有する。同じ画風を共有する。誰が作っても同じような絵柄なのである。これまでの常識であれば、「誰かのマンガと似てる絵柄だったらマンガとしてダメだよね」となっていたところを、あえて無視した。ユーザーはみんな同じ画風を”共有”する。そのことによって、ユーザーは”絵を描く必要がなくなる”。「画風をつくりだす」「オリジナルキャラクターを生み出す」という、これまでとても大事だと思われてきたプロセスをそぎ落としてしまい、そこを「共通の画風」「共通のキャラクター」とすることで、画風やキャラクターのための膨大な手間を省いてしまう。

『ボーカロイド』という音声合成技術がある。ヤマハが開発したこの技術を使った『初音ミク』というソフトは2007年8月に発売され、大ヒットとなった。このソフトでは『初音ミク』という仮想の歌い手をユーザー全員で”共有”する。そのことにより、ユーザーは”歌をうたう必要がなくなる”のだ。これと同じことが”マンガ”というステージでも起きようとしている。まさに今、『ボーカロイド』を使って制作した楽曲の中から次々とヒット曲が誕生している。そういうことが現実に起きている。とすると、もしかすると……この『コミPo!』で描かれたマンガからヒット作品が生まれる可能性も……大いにあるのではないだろうか。それほどの可能性を感じさせるソフトである。

画風を棄て生まれたもの
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深水英一郎(ふかみん)

記者:

見たいものを見に行こう――で有名な、やわらかニュースサイト『ガジェット通信』発行人。トンチの効いた新製品が大好き。ITベンチャー「デジタルデザイン」創業参画後、メールマガジン発行システム「まぐまぐ」を個人で開発。利用者と共につくるネットメディアとかわいいキャラに興味がある。

ウェブサイト: http://getnews.jp/

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