【Adobe CS5】64bit化した『Premiere』『AfterEffects』は動画編集の福音となるか

64-bitネイティブ対応

アドビが開催した内覧会にて、5月下旬にリリースを予定している『Adobe CS5』の説明が行われた。アドビは『Adobe Premiere』『Adobe After Effects』の64bitネイティブ対応を発表済みだ。確かに民生機でもHD撮影が当たり前となった昨今、動画編集には一層のリソースが必要とされる。しかし、一方では未だ32bitOSを使用しているユーザーも多く、この決断は英断とも挑戦とも言える。果たしてどのような新機能が実装されるのか? また64bit化に伴いどのような進化を遂げたのか? 本記事ではそれらの点を踏まえ『Adobe Premiere』および『Adobe After Effects』に関してダイジェストで紹介する。

Adobe Mercury Playback Engine

・『Adobe Premiere』に実装される『Adobe Mercury Playback Engine』
『Inter BEE(国際放送機器展)』でも話題となり御存じの方もいるとは思うが、今回『Adobe Premiere』には『Adobe Mercury Playback Engine』が実装される。これは64bit環境のマルチコアに最適化された映像処理のエンジンだ。この採用により得られる恩恵は多く、例を上げるとリアルタイム再生のパフォーマンスの向上・対応エフェクトの高速処理・GPU高速処理に対応した『NVIDIA CUDA技術』の採用、もちろんレンダリング処理も大幅に短縮されるなど多岐に渡る。

内覧会では実際のレンダリングのデモンストレーションが行われた。このデモは「30秒程度のHD素材を720p動画に書き出す」というものであったが、わずか数秒でレンダリングが終了した。もちろんマシン環境に依存するが、『CS4』でのレンダリング時間と比較すると非常に高速な処理が期待できる。またシーケンスの解像度も向上している。例えば今まで作成自体が不可能であったスーパーハイビジョンサイズ(7680×4320ピクセル)の解像度をもつシーケンスも作ることができる。まだまだ実際に必要とする方は少ないかもしれないが、将来を見据えての拡張性も十分だ。また様々なプリセットも用意され映像業界で使用されている『Digital SLR』『RED R3D』『HD422』などのフォーマットにも対応。また他社製編集システムとの連携も充実しており、現在必要と思われる機能はカバーされている。

・『Encore CS5』とFlashへの書き出し
『Encore CS5』にも若干触れておこう。オーサリングツールである『Enocore CS5』ではswf形式の出力にて字幕付きのFlash動画を書き出すことができる。この字幕情報はテキストデータで保持されており字幕検索によるタイムシークや、更にはGoogle検索からも探すことができる。検索エンジンからのアクセスが可能ということは、より広い層へのアピールにも期待がもてる。

64bit対応で快適になったAfterEffects

・『Adobe After Effects』の新機能と大幅な利便性の向上
– RAMプレビューの高速化・長時間化
複雑なエフェクトを多々適用する機会の多い『Adobe After Effects』では、プレビューをRAM上に展開する。ただし32bit版では物理メモリが4GBまでしか扱えず、これによりHD素材であれば数秒程度を再生するのが限界であった。しかし64bit化の恩恵からメモリの制限が大幅に緩和され、メモリさえ増設してあれば30秒程度のプレビューも可能。またプレビューの再生も大幅に高速化している。

ロトブラシツール

– 注目の新機能『ロトブラシ』
今回の発表で一番気になった機能と言えば間違いなく『ロトブラシ』ツールだ。これは映像の一部を自動的に切り出してくれるツールである。過去の製品において、素材の一部を切り出す作業は大変面倒であった。今までの作業手順をいえば「1フレームごとに映像をマスクし抜き出す」ことになり、これは不可能ではないが膨大な時間を必要とした。しかし今回の新機能『ロトブラシ』を使用すれば、1フレームで切り出しを行えば、それを他のフレームでもソフト側で判定し反映してくれる。つまり1度マスクを指定してしまえば『AfterEffects』が自動的にマスク部分を補正・追尾してくれるのだ。

マスク部分のみ抽出すると綺麗に抜き出せているのがわかる 人物が動いたとしても抜けることなく綺麗に抜き出していた

内覧会では人物の切り出しデモが行われた。映像中の人物を抜き出す処理であったが、動いている人物の輪郭を自動的に判別していた。またブルーバックなどを用意せず普通の背景であったにもかかわらず、きれいに抜き出しており使い勝手は大変良さそうだ。

64bit対応プラグインはWindowsで90種類 MacOSで88種類

・64bitプラグインの対応状況は?
また気になる点としてはプラグインの対応状況だ。『After Effects』には過去にも優秀な外部プラグインが用意され、作業効率を上げる一助となっていた。残念ながら32bit版のプラグインは使用できないが、現時点においてWindows版で90種類、MacOS版で88種類の64bit対応プラグインが提供される。もちろん今後も対応プラグインは随時提供されていくので心配は無用だ。

いかがだっただろうか。『Premiere』『After Effects』ユーザであれば、本記事を読む前から64bitには大きな期待をしていたことだろう。安心して欲しい、今回の『Adobe CS5』はその期待に応えてくれるはずだ。発売は5月下旬。それまでに64bit環境を整え、少しでも早く『Adobe CS5』を導入し実際に自分自身でその快適さを感じて頂きたい。

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ひげおやじ

インターネットの賑わっているところに大概参加をしながら約20年。 ここ最近はニコニコなどの動画サイトを根城にしつつ、何だかよく分からない生活を送る。 生放送においては過去に、日本全国を生放送をしつつ巡ったり、ヨハネスブルグ、ジンバブエ、カザフスタンなど「そもそも回線は大丈夫なの?」といった場所から生放送を行ったことも。 しかし、一番好きな場所は『自分の部屋』とのたまう、自称「世界で一番忙しいニート」・「世界で一番仕事をしない自宅警備員」。

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