「炎上」の火の消し方

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「炎上」の火の消し方

今回はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。

「炎上」の火の消し方

「ネットの議論のマナーの悪さを嘆く人たちへ」 2013年02月13日 『メカAG』
http://mechag.asks.jp/528745.html

「お行儀のいい世界で真っ先に切り捨てられるのは弱者」 2013年02月14日 『メカAG』
http://mechag.asks.jp/529108.html

でもちょっと書いたのだけど、インターネットが一般に広く普及する以前、パソコン通信や実名でのインターネットがまだ盛んだった頃に培われた、議論の技術というのが、インターネットの普及と共に失われてしまったように思う。今の時代の人々から見れば失われた先史文明みたいなものかもしれない(苦笑)。

今の人達は匿名こそが諸悪の根源で、実名制にすればすべての問題は解決するとか夢想しているけれど、そんなことはなくて実名でも炎上はたびたび起きた。

ただそれなりに規模が大きくかつ歴史の長いコミュニティは常連というか古参のメンバーがいて、火消し役を担っていたものだ。逆にそういう人材を得られなかったコミュニティは短命で崩壊・消滅した。

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まず人が集まれば論争(炎上)というのは避けられないことを認めるべき。問題はその火消しのタイミングと方法、つまり「終わらせ方」が重要。

当人たちも永遠に争っているわけにはいかないのは分かってるはずで、議論の上手い人は自力で議論の切り上げ方を知っている。それができない人は火消し役の人のお世話になることになる。

でもそれは恥ずかしいことじゃない。そうやって議論の仕方を学んでいくわけだ。

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上記のエントリと重複するが、まず双方言いたいことを言わせるべき。まだ言い足りないと思っている時に止めても無駄だし、無理に止めれば不満が残る。

そして論争相手はもちろんギャラリーも、とりあえず主張を聞くという姿勢が大事。あまりにも自分の価値観に反した主張であっても、とりあえず耳を傾ける。傾けたくなければ、聞かなくてもいいけど、とりあえず全部言わせる。

で、そうするとだんだんどちらも話す内容が尽きてくる。息切れしてくるわけだ。ここが火消し役の登場のタイミング。ここで議論を切り上げさせればいいのだ。そうしないから、あとは互いに人格攻撃になる。

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大事なことは、火消し役は議論のジャッジをしてはいけない点。どっちの主張が正しいか述べてはいけない。論争になるのは簡単に決着がつかない問題なのだから、その場で形ばかりの決着をつけても意味がない。そもそも正しい判断にならない。

では火消し役は何をするか?双方の主張の整理をするのだ。それぞれの主張のポイントを自分の言葉でまとめる。これにより当事者たちは「自分の主張が理解された」と満足する。

このまとめは相当注意深く行う必要がある。それまでの双方の議論の流れをすべて理解した上で要領よく要点をまとめなければならない。火消し役のまとめに対して当事者から「いや、そこは違う」となったら、信用されない。

どちらかの立場寄りであってもいけない。火消し役が個人的な意見を持つのは自由だが、「まとめ」自体は極めて中立的に行わなければならない。どんなに内心馬鹿馬鹿しいと思うような意見に対しても、中立を貫くことが必要。自分の意見を言いたいなら「まとめ」のあと。でもその場では言わない方がいい。

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双方の主張が整理されれば、争点も明らかになる。で、大抵の場合はそれは主張している人間の価値観に依存するものだから、どちらかが正しいということはできない。

意見の違いの根本はどこにあったのかを明らかにするだけで十分なのだ。当事者たちもその点について相手を説得できるとは思っていない。

大事なことは、双方の論者に、自分の主張が(同意されないまでも)理解されたと思わせること。それで納得するのだ。そういうことがわからない人たちは、どっちが正しいか一生懸命ジャッジしようとするから、いつまでも炎上が終わらない。

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またギャラリーも振る舞いを考えなければならない。思わず自分もなんらかの意見を言いたくなるだろうけれど、まずはそれまでの議論のログをきちんと読むこと。重複した意見を言ってはならない。大変かもしれないが、それができない人間は議論に参加する資格はないと考えるべき。

そしてそのルールが守れない人間に対してはその言動を非難すべき。まあこれができないのがネットイナゴなんだよね。同じ意見を、我も我もと繰り返す。

長い議論では上記の火消し役の話で述べたように、適時これまでの議論の要点のまとめを行うのは良いと思う。ただしまとめがそもそもどちらかまたは両方の意見を誤解しているものだと、百害あって一利なしだから、これは相当な技量がいることを肝に銘じるべき。万に一つも当事者たちから異論が出ないように、神経を使う必要がある。

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これらはBBSやメーリングリストなどのコミュニティで行われていたこと。よく管理人など権限を持ってないと火消し役ができないと考えている人がいるけれど、そんなことはなくて、むしろ古参の常連が担っていたことが多いと思う。

つまり火消し役の人が、火を消せるのは、こうした争点をまとめる能力だけなのだ。権限で火を消しているわけではない。双方の当事者が納得するような(異論を差し挟む余地のない)まとめを行えればこそ、火消しができる。

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ではブログのコメント欄ではどうか。ブログ主は当然自分の主張があり、たいていの炎上はブログ主が当事者になるから、上記のような火消し役の登場を期待するのは難しい。まあ他人のブログのコメント欄の炎上の火消しを買って出る物好きがいないとは限らないが、あまり多くはないだろう。

なのでブログ主が自分のブログの炎上を止めたいなら、上記のような火消し役を自分で行う必要がある。要するに自分に反論してくる人間の主張を注意深く聞き、彼らの主張の要点を彼らが異論を挟めないレベルで、まとめる。

そして自分との争点を分析し、これ以上はちょっとやそっと論争しても進展しないことを示す。

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とはいえ毎回そういうことをやるのは負担が大きすぎるように思う。また争点を整理して、この先は議論を続けても意見の一致は期待できないことを示しても、引き下がらない人も多いだろう。

ここで引き下がらない人というのはようするに議論をしたいのではなく、発言の回数で(つまりしつこさで)相手に自分の主張を強要しようとしている人(つまりネットイナゴ)なのだから、そういう人はブロックするなり書き込み禁止にして問題ないだろう。

なにも誠実さだけがすべてではない。冷酷に切ることも健全な議論には必要。そうしないと有意義な議論に回す時間やエネルギーが奪われてしまう。

よくあるパターンは、ブログを始めた初期に、とにかく誠実であろうと過度にネットイナゴに対しても忍耐強く接したために、その反動で、健全な主張をする相手さえも安易にブロックしたりするようになる。繰り返すが誠実さはむしろ有害。冷酷になるべき。

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論争というのはどちらの主張が正しいか決着を付けるのが目的ではなく、自分の主張を相手に伝えること。当たり前だが大抵のことは容易には同意されない。自分が逆の立場になればわかると思うが、そう簡単に自分の意見を変えないだろう。

双方伝えたいことを交換しそれでお開きにすればいいのだ。それが議論というものだ。

で、それ以上をするなら、つまり数を頼みに相手に圧力をかけて、強引に意見を変えさせようとするなら、まあそれは好きにすればいいと思う。別に止めないし否定もしない。ただそれは議論ではない。「議論」の名の下にそういうことを行うべきではない。それは議論に対する冒涜。そこのところを間違えないように。

あとあえていえば「理解できない」とか「納得いかない」という言葉を安易に連発するのは、戒めるべき。これらは反論ではない。反論というのは相手の主張の矛盾や飛躍を指摘すること。「理解できない」なら、それは自分が馬鹿だということ。これを認めたら馬鹿ほど議論に強いことになってしまう。どうにもこうにも「理解できない」としか表現できない状況はあるけれど、安易に使うべきではない。

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追記

これが正統な火消し役の心得だと思うけど、少なからず燃えている中にダイナマイトをぶっこんで、爆風で酸素を全て燃やし尽くすことで消すようなタイプもそれなりにいたと言うか今でもいるような気がする。

よくわからんが、皮肉ったり茶化したり話を逸らしたりするってこと? そういうのは結局当事者たちをコケにして鎮火させようという方法で、議論への真摯な姿勢とは言えんね。あくまで正攻法を貫くべき。常に正攻法でうまくいくとは限らないが、何が何でも火を消そうとすれば、ミイラ取りがミイラになってしまう。助け舟は出すが、その船に乗らないなら、それはそれでしかたないこと。そういう意味でも冷酷さは必要。

執筆: この記事はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。

寄稿いただいた記事は2013年02月28日時点のものです

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