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【MobileHackerz X 竹中直純 スペシャル対談(5):最終回】2011年のテレビを大予測–テレビ離れは“進まない”

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MIRO(MobileHackerz)と竹中直純(未来検索ブラジル取締役、SPIDERの仕掛け人)が、テレビの新しい楽しみ方を語る対談シリーズは、いよいよ最終回を迎えます。24時間、全テレビ局を録画する“全録”の環境で見えてきた現在のテレビの課題。地上アナログテレビジョン放送が終了する2011年、テレビはどうなっているのでしょうか。大胆かつ辛口に予測します。(バックナンバー:第1回 / 第2回 / 第3回 / 第4回)。

聞き手:ガジェット通信編集部・宮原俊介(shnsk)

■テレビは「情報弱者」のメディアになる
2011年になったらテレビはどうなると思いますか?テレビ離れが進みそうに思いますが。

竹中SPIDER』や『24時間ワンセグ野郎』のような“全録”の環境は急に普及することはないと思います。急に200万台とか300万台とか出るものではないので。

なので、テレビ離れが進むと思います。結果、さらにテレビの体力が弱り、テレビの制作能力も弱り、よりインターネット側に番組制作の力がシフトしてくる。と同時に、やはり地上デジタル放送に嫌々シフトしたユーザーが、弱ったテレビを「まあいいか」と観続けることで情報格差が今より広がる。

地上デジタル放送を観る方が「情報弱者」であると。

竹中 そうです。
放送局が余裕がなくなると思うので、偏向報道してるとか、作り方が偏るとか、そういうことが広がるかもしれないんですよ。

それをずっと観なければいけない人、情報を取りにいけない人というのは、インターネットを使って自分で情報を探す人との差が広がるでしょうね。今でも起こってるんですけどね、それがより進む。

MIRO テレビ業界からお金がなくなっていくでしょうね。でも、テレビ局には頭のいい人がいっぱいいるので、そのまま座して死を待つことにはならないかなあと。

何かしら『YouTube』やらなにやら出てきて、テレビ局も色々もがきながら実験してますよね。でもやっぱり今テレビが弱いところは、自分たちが作った番組の権利を守ろうとしすぎて、テレビの側に座りながらインターネットにちょっかいを出している状態であること。結局、インターネットからそっぽ向かれて失敗して、というのを繰り返してるので。

2011年までその状態だったらヤバいと思うんですけど、頭のいい人たちがたくさんいるので、これじゃマズいと踏み込んでくることがあるんじゃないかと。
そうなると、コンテンツの制作力はなんだかんだ言ってテレビがズバ抜けてるので、インターネットも巻き込んで面白いことになってくれるといいな、と。願望込みですけどね。

竹中 単なるビデオクリップは、どんな面白い顔の人が写っててもビデオクリップであって。番組として成立させるためには、タイトルがつき、MCがいて、現場にはカメラさんがいて、制作の人がいて–といろんな人がかかわって、初めて1時間観られるようなものができてきた。それが今のテレビの財産なので、テレビでないところまで広がっていくのは楽しみではありますよね。

■メディアの境界線が“溶ける”
竹中 ネット動画がいくら進化しても、平面に色とりどりの動画が現れ音が出てきて、それに人が時間をとられるスタイルが根本的に変わることって簡単には起こらないと思うんですよ。

3Dで再生できる機器が爆発的に安く普及して、だれでも街中で観られるみたいな状況になれば変わると思いますが、それはほとんどSFの世界じゃないですか。「映像が、ある時間を費やすのに一番情報量の多いものである」ということであれば、テレビだろうがインターネットだろうが、一番力を持っているのはテレビの制作チームですよね。映画はまた別の力があると思うんですけど。そういうメディアの境界線が“溶けて”くる。

MIRO 前からお金集めのお題目で言われた「放送と通信の融合」とか「インターネットとテレビの融合」とかお題目の上っ面じゃなくて、本当に制作側が踏み込んで境界線が溶けてくると、何かまた新しい面白いことが起こりそうだなと。いつか踏み越えなきゃいけない一線があって、2011年ごろまでにはだれかが崩しにかかってくるんじゃないかなと。

竹中 何度も出しますけど『世界ふしぎ発見』」という番組が、CMを見ているときに視聴者に電話をかけさせて、クイズに答えさせたりしているんです。このようにリアルタイムで見ていないと成り立たない構成にしているのは、頭のよさの表れだと思うんですよ。気づいているわけですよ。昔ながらの価値観とか慣習に基づいた番組の作り方で、最大限に視聴者に縛りをつけるとすると、こういうやり方になりますよね。

そうでない前提で、24時間いつ観られるか分からない環境になったときに、ふしぎ発見の制作チームが番組やスポンサーの日立を好きになってくれる仕掛けを考えたら、絶対面白いことを考えると思うんですよ。そこに早くシフトしてほしい。

■テレビ離れは“進まない”
竹中 ちょっと意見を変えてみていいですか。今後、テレビ離れは“進まない”です。なんだかんだいって、みんなでかいテレビを買いたいんです(笑)。どんな老人でもね、言葉は悪いですけど貧乏人でも、テレビを買うんですよ、2011年でも。

だから、テレビという形の情報に依存している人たちは、どんどんテレビに吸いつけられると思います。とすると、テレビはもしかしたら、そういう弱い人たちのメディアになるかもしれない。

そのときにテレビ制作側に強さがない場合、今と同じことを延長するしかないとすれば、通信販売とか、消費者金融は規制されましたけども、パチンコもどういう規制されるか分からないですけど、そういう企業の顧客となる人がガバーっと観るようなメディアになる。その人向けのコマーシャルメッセージであふれかえるようになる。

テレビ離れが進むのは、そういうメッセージがイヤな人たちですよ。徹底的にイヤがられて、「テレビなんて観ないよ」というのは進むと思う。そうなると、“全録”している意味がなくなってくるので、テレビには頑張ってもらわないといけないんですよ。

テレビを制作している人たちはものすごく頑張っていると思うけど、大局的に見るとテレビにも、スポンサー制度による「好きに番組を作れない」とか自主規制の塊になりつつあるわけですよね。その先にあるものは繁栄ではなくて、テレビの緩やかな「死」なんです。でもテレビ離れは進まない。

だけど、まわりにあるNHKの受信料問題とか合理化について、みんな納得できるものにしていかないと、イヤな人はまったく観ない世界ができてしまう。

■映像が持つ権威は保たれるのか?
竹中 僕らが15歳(編集部注:25年前)ぐらいのときにワープロが出てきて、それまで日本語を印刷しようと思ったら活字で印刷するか、和文タイプを使わなきゃいけなかったことが、あっという間に自分でできるようになったんですよ。

「僕はアホです」って、普通の印刷物ではありえない言葉を書いて印刷すると、そのまま“印刷されて”出て来る。印刷屋に頼んだわけでもないのに。この技術的革新によって、その後結構短い期間で、紙に印刷したものが信用できるっていう価値観って崩れたと思うんですよ。

動画っていまだに、どんなにありえないものでも、アホらしいものでも、それなりに力を持っているんですよね。でも、個人個人の脳内での信用する仕組み、オーソリティ(権威)を感じる仕組みっていうのが、いつポロっと取れるのか分からないんですよ。もう取れていいころだと思うんですけど。

MIRO オーソリティを与える対象というかレベルがいくつかあって、それを分けて話をしなければいけないんですけど。

「映像に写っているものが事実かどうか」というオーソリティはまだ当分崩れない。見て実写に見えるかCGに見えるか、というところで、違和感なく実写に見える映像を作るのにはコストがかかる。見て実写に見えるものが、「そういう出来事があったかどうか」という意味ではまだ当分映像には力がある。

ではひとつの番組というか、まとまった映像としてできているコンテンツについて、そのコンテンツの中の主張とか信用力があるかどうかは、もうだいぶ崩れてきている。

その中でも、地上波のテレビ番組がまだ力を持っているのは、あからさまな編集技術とか番組を作る構成能力、スタジオのセット、などコストがかかっている映像にはそれなりの力があって。そういうところにお金がかかっていない映像は自分で作れるという認識がある。「YouTubeにあるからこれは本物だ」というのはないですよね。YouTubeに上がっているものでも、テレビ番組、お金がかかっている映像は信用して観ていると思う。

竹中 じゃあ、もう既に境界線が溶けかけている。
大規模で巧妙なウソをつける人がいれば、そのへんの価値観を一気に動かせる可能性がある。

MIRO セットとかにお金をかけてプロの編集で、どこからどう見てもテレビ番組なのに、中身は大ウソっていうのが、あたりまえのように作られれば。今でも本当にお金をかけてウソを作る、バイラル広告が増えてますよね。映っているのはウソくさい映像なんだけど、本気にしてドキドキしちゃう人がいたりとか。そろそろ崩れてくると思う。

■「ウソ」も「ブラック」も放送して選べる方がよい
竹中 テレビを開放すればいいんだよね。
全部ウソです、という前提があれば、牛を解体する(編集部注:ダミアン・ハーストの作品か)とかね。それが延々と流れるとか。

久米宏の新番組で『久米宏のテレビってヤツは!?』というのが始まってるはずなんですが、テレビの可能性を追求する番組であるはずなのに、話が朝鮮や中国に及ぶと「やめましょう」となる。テレビにはたくさん可能性があるのに、自ら可能性をつぶすような行為をしているとしか思えない。そういうせめぎ合いについて、うがった見方をすると非常に面白い見方ができる。

あと『アンパンマン』みたいな子ども番組がつまらない。自粛してバラエティ番組でできないようなことは絶対にできないからです。もともとの、やなせたかしの狂ったエピソードとかが放送できない。首がないアンパンマンが活躍するネタとか。アンパンマンは、初期はバイキンマンに対してものすごく冷たいんですよ(笑)。『サザエさん』も長谷川町子のブラックなエピソードがあるのに。

MIRO たまたま読んだ長谷川町子のマンガで、子どもがお父さんの書斎にあるヒロポン(覚せい剤)を間違って飲んでしまって、「アハハ、ウフフ、ああ愉快」というエピソードがあってビックリしましたけど(笑)。

竹中 あらゆるものが(自主規制で)ダメなわりには、硫化水素の作り方とか放送しているでしょう。「ノックアウト」という言葉まで引用して、「即死ねるんです」と評論家に言わせて。人を殺してるのと同じだと思うんですよね。「今日は原爆を作ってみましょう」という番組を放送するのと一緒ですよね。
(以下、原爆の製造が技術的にどう面白いか続く)

今の話(原爆の製造法)は海外のサイトで読んだんですけど、「実はウソです」ということがあるかもしれない。そういう肩透かしがあるとか、本当ではないものがあるとか、ヤバい情報があることを知っていて、「あんまり見たくない」「気持ち悪い」というものを、子どもや老人が選べるようにした方がよいと思う。

番外編に続く

MIRO プロフィール:
MobileHackerzの中の人。
デジタルガジェットをこよなく愛するモバイル男。でも最近「自転車」にハマり、引越して電車移動の時間が短くなりでガジェットをいじる時間が少なくなってます……。

竹中直純プロフィール:
有限会社未来検索ブラジル取締役、武蔵野美術大学講師。
インターネット草創期より、数多くのWeb サイトやシステムの設計・運営に携わるプログラマー。技術家を自称している。現在は、システム開発のみならず、Web関連のディレクションやプロデュースを多数手がける。

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記者:

宮原俊介(編集長) 酒と音楽とプロレスを愛する、未来検索ブラジルのコンテンツプロデューサー。ゲームコミュニティ『モゲラ』も担当してます

ウェブサイト: http://mogera.jp/

TwitterID: shnskm

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