退職完全マニュアルnote(note)

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退職完全マニュアルnote

今回はかんねこさんの『note』からご寄稿いただきました。

退職完全マニュアルnote(note)

このマニュアルは退職に悩むあなたのために書きました

「もっといい給与のところで働きたい」
「本当に嫌な上司がいてどうしようもない」
「入社してみたけど、自分がやりたいことをやれなかった」

さまざまな思いで退職を希望する方は多いと思います。

ですが、退職したい場合に「なかなか退職できない」という悩みを持たれる方もまた多いのではないでしょうか。

「退職したいと言いにくい」
「正社員なのにそんなに簡単に辞められないでしょ」
「上司が退職を許可してくれない」

このような退職の悩みに対する「処方箋」を書いたのがこのnoteです。完全無料です。内容がよいと思ったらどうか困ってる方のためにSNSで拡散してあげてくださいませ。

【もくじ】
・軽く自己紹介をさせてください
・大前提として、退職は自由だし一方的でいいんです
・あなたは賃貸借契約を解約するのに悩みますか?
・でも会社に何を思われるか何をされるか
・ちょっと待った!退職代行サービスについて
・退職の意思の伝え方
・会社が退職届を受け取ってくれない場合
・退職届を出したあとの二週間を無断欠勤できるか
・無断欠勤について脅しをかけてくる会社にビビる必要はない
・退職届を出したあとの二週間について給与をもらいながら会社を休む方法
・会社が怒って給与を払ってくれなくなった場合
・離職票の手続きを行なってくれない場合
・嫌な会社に縛られる人生を変えるために

軽く自己紹介をさせてください

こんにちは。弁護士のかんねこと申します。

弁護士を10年続けてきて、今年になってはじめてオフラインでの仕事以外でも誰かの役に立ちたいと思うようになりました。

そこで、ツイッターで特に労働問題に関する法律情報を発信するようになりました。例えば、このような感じで。

かんねこの有給ツイートまとめ
https://twitter.com/i/moments/1048503876943470592

【いらっしゃいませ】
こちらは、わかりやすく、法律、介護、人生のヒントをつぶやきます。

得する法律情報を知りたい(特に労働)
介護に興味がある
生き方に悩んでる
猫の絵やゆるい図解が好き

そんな方におすすめです。
DM法律相談無料!お気軽にどうぞ

かなりの相談をツイッターのDMで受け付けておりますが、全て無料で応じています。

その相談のなかで一番多かったのは労働に関する問題で、とりわけ目立ったのが「退職」に関するトラブルでした。

そこで、退職の知識や考え方を正確に伝えたいと思い、今回のnoteを作成しました。

なお、このnoteでいう労働者は、期間の定めのない労働契約で働く労働者(典型的には「正社員」)を想定しています。

大前提として、退職は自由だし一方的でいいんです

「退職なんて自由にできるの?」
「上司の許可がなかなかおりなくて」

そう思う方もいらっしゃると思います。

ですが、退職は自由にできます。ここで、法律(民法)を確認してみましょう。

(期間の定めのない雇用の解約の申入れ)
第六二七条 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。

ごく一般の会社員の場合には、この規定が適用されます。

ですから、

(1) いつでも解約の「申し入れ」ができ
(2)申し入れをした日から二週間を経過すると契約が終了する

のです。

ポイントは「いつでも」申し入れができるということ。理由は問われませんので、ただ「辞めます」と言えばいいんです。

また、やめるのに会社の許可は必要とされていません。申し入れの日から二週間で契約は自動終了です。

よって、あなたは「上司が辞めさせてくれない」と悩む必要はないのです。

一方的に辞めることができるのですから。
そう、恋人を一方的にふるように。

あなたは賃貸借契約を解約するのに悩みますか?

さて、ここまで書いても次のような反応があるかもしれません。

でも、会社に迷惑をかけちゃうから

ですが、もともと法律上自由に解約できる契約を解約することで悩むべきではありません。例えば、賃貸借契約も自由に解約できます。

(期間の定めのない賃貸借の解約の申入れ)
第六百十七条 当事者が賃貸借の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。

このときに、あなたは「大家さんに迷惑をかけちゃうから解約できない」って思いますか。思いませんよね。

法律上、労働契約も同じ構造なんですよ。悩む必要はありません。

もし、あなたが「会社に迷惑をかけてはいけない」と強く思っているのであれば、それは学校教育か会社に洗脳されているからです。

辞めると「会社に迷惑」と言いますが、辞めたいと思いながら働き続けるほうが実は会社にとって迷惑です。なにより、そのような会社で働く人生を続けるという選択は「自分に迷惑」をかけていないでしょうか。

ここまで申し上げても「でも…」と思うのであれば、あなたは本当は会社を辞めたくないのかもしれません。もう一度「辞めたいか」どうかを考えてください。

考えてみて「辞めたい」という気持ちに変わりがなければ、どうか「自分に迷惑」をかけない選択をしてください。

でも会社に何を思われるか何をされるか

とはいえ、怖い会社であればあるほど、悩みますよね。「会社が何をしてくるかわからない」という恐怖心もあるでしょう。

ですが、先程申し上げたとおり、退職の意思を伝えてから二週間経過すれば労働契約は自動終了です。

二週間ですよ。「辞めたい」と思いながら仕事を延々と続けるくらいなら多少の「居心地の悪さ」は我慢しましょう。しかも、あとで申し上げますが、条件が整えば、この「二週間」さえ働かなくて済む方法もあります。

また、会社はあなたが退職することになってもあなたを攻撃することはできません。労働法はあなたを守ります。「退職」に関して言えば会社は法律上弱い立場にあります。安心して退職の意思を伝えましょう。

ここから先は「どうやって退職の意思を伝えるか」という具体的な方法から、退職の意思を示したあとに会社から想定される圧力からあなたを守る知識をお教えします。

ちょっと待った!退職代行サービスについて

さて、退職の意思を伝えにくい場合を想定して、最近は「退職代行サービス」というものが話題になっています。

「「退職代行EXITって怪しくない?」とツッコんだら、人の命を救うサービスだと熱弁された」2018年09月29日『新R25 – 20代ビジネスパーソンのバイブル』
https://r25.jp/article/594765609820034879

「退職代行サービス」が続々生まれる深刻理由」2018年11月21日『就職四季報プラスワン』
https://toyokeizai.net/articles/amp/250560

退職代行サービスができるのは、あなたに代わって退職の意思を伝えることだけです。

もちろん、このサービスを使っていただくのは自由ですが(業者側の言い分によれば、このサービスで退職できた方も相当数いるとのことです)、サービスに限界があることを理解しておいてください。

まず、退職代行サービスがあなたに代わって退職の意思を伝えても、会社がそのあとあなたに連絡することは自由です。

そもそも、法律上、会社が退職代行業者と話をする義務はありません。会社が代行業者の担当者に対して「本人としか話さない。何の契約関係もないあなたと話す義務はないはずだ。」と言えば、それで代行業者は手の打ちようがなくなります。

また、文字通り退職の意思を代わって伝えるだけの代行業者は、法律上の紛争についてあなたを代理して交渉することはできません。そのような行為は「非弁行為」として厳しく規制されているのです。

(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)
第七十二条 弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。

したがって、弁護士ではない代行業者が例えば次のような問題にぶつかった場合にも、代行業者は手を打てなくなります。

(1)退職の意思を伝えたら会社が「懲戒解雇にする」と言ってきた
(2)会社が「それまでの給与を払わない」と言ってきた
(3)会社が離職票を発行しないと言っている

実際に、私は「退職代行業者に頼んだら会社が「懲戒解雇にする」と言ってきた。代行業者は「私たちは対応できませんので他のところに相談しにいってください」とサジを投げた」という相談を受けたことがあります。

利用する場合には、そういう可能性も一応想定はしておきましょう。

そもそも、退職の意思を伝えた場合のあなたの振る舞い方としては2つのパターンがあります。

(1)退職の意思を伝えたあとにバックレる
(2)退職の意思を伝えてから2週間は勤務する

(2)の場合、退職の意思を伝えたあとも2週間は会社の上司と顔を合わせるのですから自分で退職の意思を伝えたほうがよいと思います。

代行サービスを使うことで「あいつ、代行サービスを使ったらしいぞ」という噂が立つと余計に過ごしにくくなるでしょう。

(1)の場合でも、退職の意思を伝えてバックレるのであれば(バックレるのがいいかどうかは別として)、わざわざ退職代行業者に費用(数万円)を払って退職の意思を伝えてもらう必要はないように思います。

面と向かって退職の意思を伝えるのが難しいという方もいると思いますが、退職の意思は書類で示せば十分です。

退職代行サービスでも退職届はご自身で書いて郵送するものとされています。

前述のとおり、退職の意思を(書類ででも)示してから二週間経過で労働契約は自動終了です。

退職代行サービスを使うことに直ちに異論を唱えるつもりはありませんが、果たしてあえて費用を払ってサービスを利用する意味が本当にあるのかは考えたほうがよいでしょう。

退職の意思の伝え方

退職の意思の伝え方は簡単です。
「退職届」を書き、それを会社に渡すだけです。

書く内容はシンプルでいいです。

    退職届
◯◯株式会社 人事課 御中
このたび一身上の都合により平成◯年◯月◯日をもって退職することといたしましたので、民法627条1項に基づき、本日、労働契約について解約の申し入れをいたします。
平成×年×月×日
氏名 ◯◯◯◯ (印鑑)

平成×年×月×日にはこれを届け出る日付を、平成◯年◯月◯日には二週間後の日付を入れてください。

「退職したいと思います」という言葉を添えてこれを渡すだけで十分です。二週間経過後には労働契約は終了します。

先程述べたとおり、会社の許可がなくても労働契約は終了しますから、二週間後にはあなたは会社にいく必要がありません。

会社が退職届を受け取ってくれない場合

しかし、ブラック企業では会社が退職届をすんなり受け取ってくれないとか、受け取ったけれども「そんなものはもらっていない」などと開き直られる可能性が否定できません。

そのような場合に確実に退職の意思を示す方法をお伝えします(かなり高い確率で会社の拒否が想定されるなら、はじめからこの方法を使ったほうがいいかもしれません)。

その方法は「内容証明郵便」で退職届を会社に出すことです。

内容証明郵便は、いつ、いかなる内容の文書を誰から誰あてに差し出されたかということを、差出人が作成した謄本(コピー)によって日本郵便が証明する制度です。

詳細はこちらのページをご覧になってください。

「内容証明」『日本郵便』
https://www.post.japanpost.jp/service/fuka_service/syomei/

かつては印刷した文書で郵便局に出しにいく必要がありましたが、最近は電子内容証明サービスというものもあり、オンラインで手続きを完結させることができます。好きなほうを利用してください。

「e内容証明(電子内容証明サービス)」『日本郵便』
https://www.post.japanpost.jp/service/enaiyo/index.html

内容証明郵便で送った場合には、会社に確実に退職の意思が伝わります。また、退職の意思を伝えたことが証拠に残りますので、会社から「退職したいなんて聞いていない」と言われる可能性がなくなります。

確実に会社に退職の意思を伝える場合には、この制度を利用しましょう。

書式は先程のものと殆ど同じです。

宛先だけ、人事課ではなく、会社宛(カッコ書きで代表取締役、つまり社長の名前も書いておく)にするといいと思います。あなたが契約しているのは人事課ではなく「会社」なので、会社宛に退職の申し入れをするのが確実と思われるからです。

    退職届
◯◯株式会社 御中
(代表取締役 ◯◯◯◯ 様)
このたび一身上の都合により平成◯年◯月◯日をもって退職することといたしましたので、民法627条1項に基づき、本日、労働契約について解約の申し入れをいたします。
※なお、離職票は退職日経過後に私の住所に郵送いただきますようお願い申し上げます。
平成×年×月×日
氏名 ◯◯◯◯

※の記載は、離職票が必要であることを明確に示すためのものです。

退職届を出したあとの二週間を無断欠勤できるか

退職届を出したあとも、法律の規定がある以上、二週間が経過するまでの間の労働日は出勤する必要があるのが原則です。

この出勤日に出勤しなかった場合については、連絡がなければ「無断欠勤」となりますし、法律上は、「債務不履行」(契約で定められた労働義務をあなたが履行しなかった)ことになります。

私は「無断欠勤」を推奨するわけではありませんが、本当にあなたが今の職場を苦しいと思っているのであれば、この二週間についても自分を守るために無断欠勤することはやむを得ないと思います。
(もしそういう事情がなく、精神的に余裕があるなら、二週間は勤め上げて全力で引き継ぎ業務をしてください)

ただし、無断欠勤の期間については給与はもらえません。給与を払われなくてもいいからとにかく会社から逃げたいという場合に無断欠勤をするようにしましょう。

無断欠勤について脅しをかけてくる会社にビビる必要はない

無断欠勤は前述のとおり「債務不履行」(契約違反)になるので、もしかしたら「損害賠償を請求する」「訴える」と脅してくる会社があるかもしれません。

ですが、私はこのような脅しについてはそれほど心配しなくていいと思います。

例えば、あなたが会社で重要なポストについていて、無断欠勤の期間に重要なプロジェクトがあり、あなたが無断欠勤したことによってプロジェクトに失敗したという事情があれば会社に相当な損害が発生したとも言えましょうが、そのような特別な事情がない限り、会社に「給与」以上の損害が発生することはあまり考えれないのではないでしょうか。

そして、無断欠勤の場合には会社はそもそも給与を払わなくていいのですから、会社があなたの無断欠勤によって具体的に(給与以外の)損害が生じたと証明することは困難だと思うのです。

身もふたもないことを言いますが、殆どの労働者は「替え」が効く存在なのです。特に、いわゆるブラック企業においてはそうだと思います。だから、「あなたが」無断欠勤したから会社に損失が生じる、損害賠償請求されるなどという心配はする必要がないのです。

結論として、「無断欠勤」は法律違反ですが、あなたの不利益としてはその期間における給与をもらえないだけです。それ以上に現実的に会社から何らかの請求をされる可能性はきわめて低いと思います。

また、「無断欠勤」を理由に「懲戒解雇する」と言ってくる会社もないわけではありません。

ですが、既に退職の意思を示している状況で「懲戒解雇」をするというのは明らかに会社の嫌がらせ目的であり、そのような「懲戒解雇」は明らかに無効です(懲戒解雇はよほどの事情がないとできません)。

また、企業が感情的になって「懲戒解雇」だと言ってきたところで、解雇は30日前に予告しなければなりません。

予告せずに解雇(即時解雇)するためには解雇予告手当(平たく言えば30日分の給与)を払わないといけないのですが、わざわざ手当を払ってまで「懲戒解雇」を言ってくる会社もそうそうないでしょう。

そうすると、企業が「解雇」だといっても実際に解雇できるのは30日後のことになり(30日前の解雇予告が必要だから)、その段階ではあなたの退職届(二週間後に辞める)によって労働契約は終了しているのです。終了した労働契約について「解雇」を行えるわけがないのです。

以上から、退職届を出したあとの「懲戒解雇」というのは企業のあなたに対する「脅し」以上の意味を持つものではなく、退職届を出すことによって実際に有効な「懲戒解雇」がなされることはあり得ないと思います。

先程述べましたように私も「無断欠勤」を推奨するわけではありません。
ですが、無断欠勤によるリスクはそれほど大きくない(殆どの場合、「無断欠勤中の給与をもらえない」ことくらいである)ことも分かっていただけるかと思います。

「どうしても会社に行きたくない」という場合には、会社から直ちに逃げる(無断欠勤する)のもやむを得ないのではないかと感じます。

退職届を出した後の二週間について給与をもらいながら会社を休む方法

ここまで退職届を出した後の二週間の「無断欠勤」についてお話ししてきましたが、実は「無断欠勤」にせずに、退職届を出した後の二週間について給与をもらいながら会社を休むという夢のような方法があります。

それは、退職届と同時に「有給休暇」を申請することです。

前提として、有給について確認しておきましょう。

有給は「6ヶ月間継続勤務」し「全労働日の8割以上を出勤する」ことによって法律上当然に発生します。勤務継続日数と有給の付与日数(法律の定めによるもの)の関係は次の通りです(正社員前提)。

6ヶ月・・・・10日
1年6ヶ月・・・11日
2年6ヶ月・・・12日
3年6ヶ月・・・14日
4年6ヶ月・・・16日
5年6ヶ月・・・18日
6年6ヶ月・・・20日

有給はその年度に消化されてなければ次の年度に繰り越されますが、発生してから2年で時効(権利が消滅する)にかかります。
そうすると、発生してから2年経過していない有給は残っているわけです。

具体的に言うと、あなたが1年8ヶ月、有給も使わずに働いてきたとします。この場合、勤務6ヶ月で与えられる10日の有給は残っていますし、勤務1年6ヶ月で与えられる11日の有給も残っているわけです。合計で21日の有給はあなたの武器になります。

有給の利用目的は何でもいいとされています(ストライキ目的はだめ)。
また、勘違いしている人もいますが、有給を使うのに会社の同意は必要ありませんし、会社が有給の利用を拒むこともできません。

よって、退職届を出したら、退職日までの2週間について有給を使うと申告しましょう。

労働者が有給を申請した場合、会社ができるのは、有給を使う時季を「他の日にしてくれ」とお願いすることだけです(これを「時季変更権」と言います)。あなたが退職届を出した後は、まもなく退職するわけですから、会社が「他の日にしてくれ」と言うことはできなくなります。

こうして、あなたは退職届を出してからめでたく退職となる二週間について「無断欠勤」をせずにすみますし、給与ももらえるわけです。

ブラック企業であればあるほど、少なくともあなたが2週間(14日)の有給を残している可能性はかなり高い。有給を使わずに1年半まじめに勤め上げてきたならばこの作戦は使えます。

有給取得する場合の書式については、こちらを参考にしてください。

    有給取得の時季指定書
株式会社◯◯ 御中
(上記代表取締役 ◯◯◯◯ 様)

申請日 平成◯年◯月◯日
所属部署 ◯◯
氏名 ◯◯◯◯ 印

労働基準法39条5項に基づき、下記日時を有給使用の時季として指定させていただきますので、よろしくお願いします。

平成◯年◯月◯日(会社にいかなくなる初日の日付)~平成◯年◯月◯日(退職日)

会社が受け取ってくれない場合もあります。そういう場合(あるいはそういう危険性が大きい場合)には、退職届と同じく内容証明を送ることをお勧めします。

会社が怒って給与を払ってくれなくなった場合

前述のように「無断欠勤」した場合にその分の給与を払ってもらえないのは当然です。しかし、あなたがそれまでに働いた分については当然給与をもらえます(残業時間は残業代ももらえます)。

退職したことの報復として、会社が(あなたが働いた期間に対応する)給与を払わないというケースも可能性としてはあり得ます。

ですが、賃金の未払いは犯罪です(罰金30万円)。
また、未払賃金に対しては、通常、支払日の翌日から年6%の遅延損害金(延滞利息)がつきます。あなたが退職しても賃金が払われなければ退職日の翌日から年14.6%の遅延損害金(延滞利息)がつくのです。

以上のことを伝えれば、会社は給与を(しぶしぶでも)支払う可能性が高いでしょう。

手紙で伝える場合のサンプル文(支払日が退職日前にくる場合)を載せておきますので、参考にしてください。できれば内容証明郵便で送るのがいいでしょう。

    請求書
◯◯◯◯株式会社 御中
平成◯年◯月◯日
氏名 ◯◯◯◯

私が働いた平成◯年◯月◯日から平成◯年◯月◯日までの給料について、すでに支払期日を経過しているにもかかわらず、いまだに振り込みがなされていません。

そこで、下記の口座に、未払い日数◯日分の給与(基本給◯◯円、残業手当◯◯円)および支払期日から年14.5%の割合による遅延損害金の支払を求めますので、平成◯年◯月◯日までに必ずお振込みください。
(口座)

賃金の未払いについては罰金が課されます(労働基準法120条1号)。仮に平成◯年◯月◯日までにお支払いいただけないようであれば、未払いの事実を労働基準監督署および弁護士に相談せざるを得なくなりますことをお伝えしておきます。

なお、賃金請求については、働いたことを出勤簿やタイムカードで証明する必要があります。もしものときのために、退職届を出してからすぐに会社に行かなくなる予定のときは、退職届を出す直前の出勤簿やタイムカードを記録(スマホで撮影する等)しておきましょう。

離職票の手続きを行なってくれない場合

退職の日を三週間すぎても離職票が届かない場合には、まずは、ハローワークに相談して、ハローワークから会社に対して指導をしてもらいましょう。

企業には離職票を発行する義務がありますから、ハローワークから指導されれば、その指導に従わざるを得ないと思います。

また、退職した事実を確実に証明できればハローワークにて離職票を発行してもらうことができます。退職届を内容証明郵便で出しておけば、法律上、二週間の経過によって退職扱いとなるのですから、ハローワークには内容証明の控えをもって退職したことを説明しましょう。

このとおり、会社が離職票の手続きを拒んでいる場合であっても、対応策はありますから、安心して退職届を出してください。

嫌な会社に縛られる人生を変えるために

最後に申し上げます。
人は「我慢強い」一面がある一方、案外脆い一面もあります。
ブラック企業に長く勤めていると相当のストレスがたまっています。

大きすぎるストレスの蓄積はよい結果を産みません。
「我慢強さ」が美徳とされる時代はとっくに終わりを迎えています。

我慢して嫌な会社に勤め続けた結果、あなたは多少の忍耐強さを得るかもしれません。しかし、それと引き換えに大切な時間が費やされ、あなたのメンタルが蝕まれていることも忘れてはいけません。

未だに「最近の若者はすぐに会社を辞める」「我慢が足りない」という言説に接することがあります。

しかし、そのような言葉に惑わされないでください。

長い人生において、過大なストレスを与え、心から楽しむことのできない仕事に膨大な人生を費やす選択にこそ合理性がないのです。

どうか、今勤めている会社が本当に嫌だと感じているのなら、躊躇をせずに、会社に遠慮することなく自分の望む決断を下してください。

 
執筆:かんねこ弁護士

 
執筆: この記事はかんねこさんの『note』からご寄稿いただきました。

寄稿いただいた記事は2018年12月18日時点のものです。

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