“疎開”のすすめ

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内田樹の研究室

今回は内田樹さんのブログ『内田樹の研究室』からご寄稿いただきました。

“疎開”のすすめ
“疎開”を勧めている。政府や自治体の方からいずれ公式にアナウンスがあると思うけれども、東北関東の大震災の被災地への救援活動を効率的に実施するためにも、被災地や支援拠点となる東北関東の都市部から、移動できる人は可能な限り西日本へ移動することを勧めたいと思う。

いま被災地と、その周辺には限られた資源しかない。特に燃料の不足が顕著である。東日本一円では自動車による移動がしだいにむずかしくなりつつある。東海地方にまで地震が広がって、新幹線をふくむ交通インフラの運転も安定していない。できれば、移動手段に十分な余力があるうちに、移動できる人は西に移動することが望ましいと思う。

福島の原発については、危機的状況をすみやかに脱することを私も願っているが、主観的願望と客観的状勢判断は混同すべきではない。万が一、放射性物質の広域への飛散が始まったときに起こるパニックを想定すれば、“パニックがまだ起こらないうちに”できる限りのことをした方がいい。その備えが結果的に無駄だったとしても、それは非とされるべきではない。むしろ喜ぶべきことである。

放射性物質への耐性の脆弱(ぜいじゃく)な妊婦や幼児を第一とし、次に春休み中の児童生徒学生で、被災地や支援拠点にとどまる喫緊の必要がないものへ西への移動を組織的にすすめる。

文科省や厚労省はすでにそのような疎開プランの立案に取り組んでいると私は信じているが、まだ西日本の自治体や学校や公共施設に“疎開者”受け容れの可能性を打診するところまでは来ていない(少なくとも本学には届いていない)。大学はそれぞれある程度の宿泊施設を備えており、給食設備もあり、図書館も体育施設もあるし、情報環境も高いレベルにある。ボランティアで受け容れ支援をする学生たちの数も十分にある。

被災地および支援拠点都市からの学生生徒の“疎開”先として大学はもっとも適切なものの一つだろうと思う。私はまず神戸女学院大学が、政府や自治体から要請があったときに即時対応できるように準備に入るべきだと考えている。たぶん教職員や学生院生の多くも、現在の事態がさらに長期化するなら、それくらいの備えは必要だという考え方に同意してくれるだろう。

もちろん大学ごとにかかわりの深い学校へ“受け容れ”を申し出て、個別に調整するという単発の事業でもよいのだが、できれば文科省の組織的な指揮のもとに受け容れ”は進められるべきだと思う。そのための官庁なのだから。

もし、文科省筋の方で、これを読んでいる方がいたら、“疎開”プランについてのご意見をお聞かせ願いたいと思う。まさか「余計なことをするな」というリアクションはないと思うが。

執筆: この記事は内田樹さんのブログ『内田樹の研究室』からご寄稿いただきました。

文責: ガジェット通信

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