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【米光×中村 ぷよぴったん対談】その3:「ゲーム屋さんがやるべきお仕事」 電子書籍でゲームデザインを教える意味

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『ぷよぷよ』『魔導物語』『バロック』などの名作ゲームを生み出した米光一成氏と、人気ゲーム『もじぴったん』シリーズのディレクター、プロデューサーを務めた中村隆之氏。現在、米光氏は立命館大学で講義を持ち、電子書籍を対面販売する“電書部”を主宰、中村氏はバンダイナムコゲームスを退社して現在は講演を中心に活動するなど、ゲーム業界とは少し離れたフィールドにも軸足を置いて活躍しています。“国産2大パズルゲーム”を世に送り出した2人は、今何を教え、ゲームについて何を考えているのでしょうか。ガジェット通信はこの2人の対談を企画、このとき初対面という2人に「遊び」「学び」「ゲーム」「電子書籍」をキーワードに語っていただきました。第3回は、中村氏が今後やりたいというゲームデザインを教える電子書籍の話題から、電子書籍というメディアのゲーム性、今後の可能性について語ります。

聞き手:ガジェット通信 宮原俊介(shnsk)

第2回「【米光×中村 ぷよぴったん対談】その2:「世界は全部ゲームになる」 “米光予言”が示唆する新しい学びの姿」はこちら( http://getnews.jp/archives/96967 )

・“ゲームデザインを教える”ゲーム

中村:自分が経験的に学んできたゲームデザインの手法を、皆に教えたいなと思っているんです。

学生のころからゲームを作ってきて、しかも複雑なものじゃなくシンプルなものにゲーム性を見出していくうちに、「最低限これさえあればお客さんは楽しんで遊んでくれるんだ」というものが見えてきた部分があって。これは形にしたいし、うまく伝える手段が欲しいと思ったんですよ。

1つのやり方は講演活動で、今は企業さんとか大学とかで講演をしてるんですけど、講演だけだと物理的に僕が行ってしゃべらなきゃいけないし、時間的な問題もあるんで、そうじゃない方法で一番いい方法は何かといったら、“ゲームでゲームデザインを教える”のがいいんじゃないかと。

僕がバンダイナムコゲームスを辞めるときに『iPad』が出たんで、「これはすばらしいデバイスだな」と。まず思ったのが、業界に入った人でもアマチュアでも、ゲームをゼロから作るプロセスを見せたい。ゲームってこうやってできていくし、こうやれば面白くないけど、こうやったら面白くなるとか。たとえば、矢が飛んでいくスピードを半分にしただけで、「ピュウ」が「ピューーーー」となった方が面白い感じがするとか。そういうバランスをとる過程を見てるから、「こうやるよりはこうやった方がいい」「ここはこういう工夫のしどころがある」とか分かるじゃないですか。その過程を見せたいと思って。

最初に考えたのは、1ページずつめくるたびにゲームがだんだん完成していく電子書籍アプリ。最初は主人公の動きだけで、ジャンプするだけ。だんだん追加していって、当たり判定つけて、音をつけてとか。音をつけたら一気に“ゲームになった感じ”ってあるじゃないですか。それまで音なしで作っていてイマイチと思ってたのに、「音素材上がりました」って組み込んだら一気に完成した感とか。ああいうのって、ゲームを作った人じゃないと分からないので、その感覚をまず伝えたい。こういう場合はこうした方がいいとか、自分でスライダーで弓矢のスピードを調整して、このへんが気持ちいいというスピードで次のゲームができていくとか。あくまで構想なんですけど。

・インタラクションで教える『ゲームデザイン研究所』

米光:似たことをやったことがあるんです。『RBB TODAY』で公開していた『ゲームデザイン研究所』。もうサイトに上がってないんですけどね。『おぎわら遊技場』(デイリーポータルZ)の荻原(貴明)さんと組んで、「インタラクションって何?」というところから始めて、Flashでゲーム制作の過程を実際に触って学んでもらう連載です。

ボタンを押すと明るくなる。これはまだアクションとリアクションだと。インタラクションにするには、向こうからこちらのアクションを引き出す何かをしなきゃいけないんだとか。ウェブに載せてたから、持ってこなくていいやと思ったら……消えちゃってる。復活してほしいなー。

キャラを出すところから始めて、移動させるインタラクションをどう作るかなんてのが、触って分かる。こうすると移動する(サンプルデータを見せながら解説)。

中村:イメージは完全に同じ感じですね。

米光:連続パンチを入れるとゲームはどうなるかな、とか。どう調整していくかとか。作り方みたいなものも含めてやっていました。

・電子書籍のインタラクション

米光:電子書籍の話で言うと、今まで書籍って、作るまでに時間かかって、ページ数は必要だし、出した後は簡単には書き換えられないので、結論めいたものでバーンと出す。作ったあと出るまでも時間かかる。どうしても流通を通って本屋で手に入れる。電子書籍だとそのスピードとかが早くなるから、ある種インタラクションができる。わっと書いて20ページで出して。

中村:バージョンアップすらできますもんね、買った人にね。

米光:買った人が「これ違ってるよ」「あーごめんごめん直しとく」とか、「もっとここ、これ入れた方がいいんじゃない?」って言われて、すぐバージョンアップして、もう一回出して渡すって、もうこれってインタラクションだから、ここ自体がほとんどゲームなんですよね。

中村:なるほど。

米光:あっちがAボタン押したから、オレはジャンプしましょうってのを、ちょっとインタラクションスピードはゲームよりは遅いかもしれないけど、60分の1秒でとかやってないけど。でも今までの本よりは圧倒的に早くできるようになったってのが、やっぱり大きい。僕が電子書籍に興味を持ってるってのは、ようやくインタラクションという実感を得られるメディアになってきたと。

中村:僕はちょっと違うかもしれないんですけど、多分『Kindle』じゃダメなんだと思うんですよ、僕がやりたいのは。要するに紙を単に電子化したものではダメで、触って、そこにインタラクションがないと、多分僕がやる意味がないっていう感じがしてます。多分『iPad』とかそういうデバイスでないと。作ろうとしているのは、いわゆる本といえば本なんだけど……。

米光:本の中にもインタラクションがある。

中村:そうです。物理の教科書とかね、インタラクションがあったら理解度が全然違うと思いますよ。他の教科書とか参考書とかも「そうしちゃえばいいのに」と。

米光:今日ちょっと『iPad』を持ってきてるから……(iPadを出す)。脳に関する本を出したことがあって、その時に色々調べて見ても“海馬”がどういうものか分かんないんですよ。タツノオトシゴみたいだとか、つながってるとか、2つあるとか、いろいろ書いてあって、どこのどれが海馬なのか、分からない。でも……。

中村:あーわかった!クルクル脳を回せるやつですか?

米光:そうそう。『3D Brain』というアプリがあって。これで海馬を検索すると海馬がどういうものか、立体モデルとして分かるから。それまで本読んでもイマイチどういう形なのかが分かんなかったものがしっかり……(『3D Brain』を検索する)。 

中村:それですね。

米光:あ、そうか。海馬ってつながってるんだけど、つながっていないところだけを「海馬」って呼ぶんだ、ってのがようやく分かる。やっぱり3Dで回せて「ああ、こうなんだね」みたいな。インタラクションが入ったことがやっぱり大きくて。

中村:そうですね。

米光:説明する側の都合っていうか、説明する方は分かってるから、「分かってない人の分かってないっぷり」が分かんない(笑)。でもこれだと“モノ”として解剖した脳がドンとあるのに近い。さっきおっしゃってたように、教えるんじゃなくて、ちゃんと教える場を提供して、あとは自分で探る、それで「ああー」って自分で発見できるのがいい。

・ゲーム屋さんのやるべきお仕事

中村:その意味ではゲーム業界が不況とか色々言ってるんだけど、僕自身は、ゲーム屋さんの世の中に対してやるべきお仕事って実は凄くあると思っていて。米光さんが「世界は全部ゲームになる」って言うのは本当にその通りですよ。でも、そのためには何をしなきゃいけないかっていうと、さっき言ってた「人間はどうやったら楽しく感じるのか」とか、“記憶”とか“学び”とか“遊び”というのが本能的にどういうものなのかを教えられるようになる必要がありますね。本当は体系的に教えてくれるところがあれば、外国でもいいからその大学に行って勉強したいくらいで。

多分それって既に脳科学とかそういう分野で研究もされているし、学問としてはこれから開拓されるところかもしれない。でも常に経験則として、「こうやったら楽しい」っていうのは、もう僕らベテランのゲームデザイナーとか持ってるんだから、これをうまく世の中の今困ってることに応用しない手はない。その経験則に沿ったやり方を感覚的に分かるようにして「僕はこういう考えでやってますよ」的なものを作るのが多分「このデバイス(iPad)が今一番最適だな」と思ったんですよね。

宮原:ゲームが“汎用的な言語”みたいになって、その“言葉”を覚えるための教科書を作ろうとしているみたいな感じですか。

中村:何だろうな、結局子供も言葉を覚えるよりも先に、物の動きとかを覚えちゃうっていうか。要するに「物理法則で物は落ちるんだ」っていうのは、実は教えられて学ぶわけじゃなくて、もうすでに多分赤ちゃんくらいの時点で重力があるっていうのを体感して覚えてるし、言葉よりも先に知るはずなんですよね。

そういう意味では実は論理的に、言葉を選んで教えていくっていうやり方もあるけど、それこそ物理とかって数式で言われても、何のこっちゃわからんと。だけど実際動くものを見せられたら「ああ」と。「本当にこういう風になるんだ」みたいな。「何で何で? 不思議だな」って思われたらそこで、実はこういうことなんだよっていうのを初めて教えればいいんじゃないかなと思っていて。

米光:今までは教えることの中心が言葉だったけど、こういうメディアが出てくることで、違うこともできる。今までだと教えられなかったこと、「それはあなたたちが社会に出てから体感してくださいね」ってことが、もう少し伝えられる。社会に出る前の架け橋がもう少し伸ばせるんじゃないか。

たとえば「世界が 多様だ」っていうのは言葉で言っても、実感としては分からない。でも、ネットとか、アプリとか、『Twitter』のタイムラインとか、ツールを使って本当に多様さを体験できれば、より実感に近づく。

今『iPhone』でちょっと面白いなと思っているのが、世界の音が聞ける『Global Sounds』というアプリがあるんですよ。色んな国のいろんな場所の『Googleマップ』上に写真と音を載っけられるんですよ。例えば……ローカル線の音(鳴らしてみる)。

中村:ほんとだ。

米光:アフリカの方に行くと、猿の鳴き声とか鳥の声とか色々あって、こういうのがあると「ああ世界って多様なんだ」ってのが言葉じゃなくて実感として分かるっていうものができている。

本だと編集した多様さが入ってるけど、これだとそれぞれの人がやってる、ある種ほんとにデタラメな“真の多様さ”みたいなのが、ここから感じられる。自分たちも写真と音をアップできて、その多様さに自分たちが含まれるんだってことが分かる。伝達できることの可能性の範囲が広がった。そこが面白いですよね。それこそゲームがなぜ面白いか、とかゲームをどうすれば面白いかって、今までだとなかなか伝えにくかった。

・感覚を伝えられる可能性

中村:本当にそうで、ゲームはどうやれば面白くなるかって、結局僕らはモノ見て実験して知ってるだけの話なんですよ。僕プログラマーなんで自分でプログラム組んだら「あれ?」って。

米光:「もうちょっと早い方が面白いな」とか。

中村:思い切って倍速にしたら面白かったとか、逆に半分のスピードにしたら面白かったりとか。あと音を入れたら急に面白いとか。あと僕が作った中で、本当に純粋なパズルを作ったら本当に楽しくなくて。純粋なパズルじゃないというか、ちょっと快感要素が入っていて遊び要素を入れたパズルみたいだと急に面白かったりとかして。

1か月1本で3本ゲームを作った話をしましたが、1本全然面白くないものがあって、もう1本同じパズルなのに、思わず自分でハマるくらい面白いものがあると。この差でようやく「そういうことか」と分かったりするじゃないですか。このノウハウをどうやって伝えるかっていう時に、僕は多分、本を書いても伝わらないなぁと思って。感覚的な問題っていうのもすごくあるし。

米光:なんでもスピードを半分にすれば面白くなるわけじゃないので。半分にするという規則を知るのではなくて、試行錯誤するほうが大切。

中村:そうなんですよね(笑)。だからそれは実感してもらわないと分からない部分があって、じゃあ皆さんにゲームを作ってもらいましょうって言って、1年間通しで講座をやるっていうのもまぁアリだけど、ちょっと違うなぁと。

で、「あ、そうか」と思って。じゃあ作ってる過程を、言ってみれば料理番組で「はい、こちらにできたものがございます」っていうのをやっちゃえば、「あー美味しい、確かにこの段階で既に美味しいや」みたいなのができてると。その面白いっていうのができた後に、例えば絵を加えて。でもその絵を加えるときも、例えば背景の絵と、動かせるものは絵のタッチを変えないと分からなくなっちゃうんですよ。例えば動かせるものは縁取りがついてて背景と区別がつくとか。それをじゃあそうしないで全部同じタッチで描くと、何が何だかもう分かんないとか、そういうのって比較させて実際に見てみて、初めて「ほらうまくいかねーだろ」って分かる、みたいな。

いい物とダメな物の差は、モノを見せないと分からないから。『iPad』のようなデバイスが出てきたことで、僕は書籍とゲームはもう逆に垣根をなくしてもいいというぐらい思ってる。むしろ垣根をなくしたものを僕が出してあげたいなという感じなんですよね。

それと、多分さっき米光さんが言ってた、電子書籍を出して、お客さんとのインタラクションという意味のスピードの速さが合わさると、僕が作ろうとしているものも「ここちょっと分かりにくかった」みたいなのがあれば、もうちょっと変えようとバージョンアップして、ってのができるんですよ。普通だと書籍版を買った人が新しいのを買うとなると、12版ぐらいでちょっとバージョンが上がったやつを買い直さなきゃならないけど、それも電子書籍ならできるじゃないですか。

米光:タダで替えられるようにしちゃえばいいということですね。

中村:そういう感じでやっていくと、世界が変わるなーと。さっき言ってたゲームデザインの電子書籍アプリのオチは既に考えてて、「これ実は、こういう要素を入れたら何でもゲームになりますよ」と。

作ろうとしているゲームデザインの電子書籍アプリは、ゲーム業界の人が最初に買うと思います。だけど本当はゲーム業界じゃない人にそれを触ってみてほしくて。だからゲーム業界じゃない人にも分かってもらえるように作って、そうすると例えばこれと同じことが、実は「うちのこういうのにも入れられるんじゃないか」とか。教育関係者も例えば教材作るときに、「うまくいったらすぐにほめる」のを採用してみようかとか、をやってみると段々変わってくると思うし。

・ユーザーインタフェースにゲームのノウハウを

中村:僕は本当にゲーム業界が果たす役割ってあると思うんですよね。サイトウアキヒロ先生が直感的に理解して楽しめるゲームのノウハウを応用した“ゲームニクス”というのをやられてて、僕もプログラマーなんで、 ユーザーインタフェース(UI)の設計にはこだわりがあって、分かりやすさとかすごく気にするんです。

例えばハードディスクレーコーダー……。本来エンターテインメントのための装置のはずなのに、触るたびにストレス感じて「今俺“はい”選んでるの? “いいえ”選んでるの? 分かんねえよ」みたいな(笑)。反応が遅いから押した後に遅れてるからこうなるとか、ゲーム作ってる人とかからすると「ありえない」構造なんだけど(笑)。そういうところを何とかするという意味も含めて、今ゲーム業界の人が果たす役割っていうのは凄いあると思うんですよね。『torne』なんて、まさにそれでよくなってる気がしますし。

ただ皆、ゲーム作ってる人は「ゲームが作りたい」っていう。そこに「もうちょっとなんとかならないかな」と。でもそれはきっと開拓者がいると思うんですよ。それこそ米光さんとか(笑)。サイトウさんとかかもしれないんですけど。

米光:まだまだインタフェースデザインの重要さが認識されてない。現場では、インタフェースデザインのディレクションみたいな人がいる方が絶対いいものができると分かってる場合もあるけど、組織の上までくると「何でそこお金使ってるの」っていうことになる。物理的に機能が増えるのなら分かりやすいし、書類も通しやすいんだけど、インタフェースデザインとなると理解されない。試行錯誤して、結局「ボタンと機能を3コ削りました」って、なぜそれがプラスなのか理解されにくい。

中村:そうですね。

米光:現場以外では分かりにくいことになっている。使いやすくする工夫は、ストレスを感じさせないようにすることだから、「インタフェースデザインがしてあります」っていうことがむしろ分からない方がいいわけです。

「ここをこんなに工夫してるでしょ」っていう自慢してるインタフェースデザインはダメなわけで。こうなってくると、うまくやればやるほど「これ何をやったのお前」って(笑)。「何にお金かけてんの」「こんなの当たり前でしょ」みたいな。「そういう当たり前を作るのが大変で……」みたいなのがあって、なかなか伝わんないんですよね、そこが。

中村:アップルはそこを言わないけど分かってやってる感じじゃないですか。『iPhone』なんて完璧に狙って触った気持ちよさみたいなのを、言わないけどうまくやってる。

米光:そこで色んな事を許してもらってる感じも(笑)。けっこう『iPhone』って色んなところでダメなんですよ。それこそマルチタスクがちゃんとしてなかったりとか。だけど触って気持ちいいから許しちゃうんですよね。やっぱりインタフェースデザインの勝利というか。何をやめて、何を追及するかというデザインの気持ちよさですよね。

中村:多分機能うんぬんもあるけれど、最終的にはそこが勝つ部分って絶対あるんですよね。

米光:僕もソニーバンクのネット銀行のインタフェースのアドバイザーをやったのですが、そことの戦いになるんですよね。ソニーバンクはそういう部分に凄く意識が高いところで、凄く理解があるんだけど、でもやっぱりトレードオフになっちゃうじゃないですか。

ボタンを押してパッと変化がないのは待たされた感じがするから、いったんアバウトに出しておいて、それが動いて正確な数字にしましょうとかアイデアを出すんだけど、それは銀行業務的にはできない。そこのすり合わせなんだけど、機能を1回落とすように見えることと、数値化できない気持ちよさを比べるので、なかなかしんどい。でもだんだん、そこは色んな実証された商品が出てきてるから、みんなそろそろ気付いている。

・『テトリス』の衝撃

中村:僕が実はそういうことに気付いたのは、『テトリス』で。それまでは足し算的に、いろんなものとかいろんな機能とか、いろんな絵を付けられることが、要するに発展だと思ってたのが、『テトリス』がガーンてきた瞬間に、いきなり16ビットとかいってたのが8ビット(笑)。「4ビットでも動くんじゃねーか」みたいなのが。

でも延々、猿みたいに遊べちゃう面白さってのを『テトリス』のようなシンプルなものに感じたときに、「あ、俺何か勘違いした」っていうのを、あの時に多分気付いて。何かこうひとつのものがあって、それを発展させて機能を追加していくのではなくて、実はもう全く新しく、でもシンプルに「これだけ」っていうのがあっても、それは商品として成り立つし、むしろそっちの方がお客さんとしてはありがたいもんなんだろうと。

キングジムの『ポメラ』とかまさにそうで、機能を削ぎ落とすことによって初めて、その商品の特性というのが一発で伝わると。電源オンで2秒で立ちあがって、すぐに議事録とかが書けると。「コンパクトに持ち運べる」って言っただけで伝わるし、逆にそういうシンプルさがないと商品として失格だったりするんですよね。

米光:僕『ポメラ』愛用してますよ。あそこまでシンプルだと、立ったままでも文章が打てる。

中村:だから僕は機能を追加していくやり方っていうのは、プロデュースっていう観点からみても、実はあんまりよろしくなくて。機能を追加すればコストがかかるし、確かに便利にはなるかもしれないけど、商品を売る前に伝わるものとしては、むしろ削ぎ落して、さっき言ってた「触ってて気持ちいい」とか、感覚的にでもパッとわかって、なおかつ言葉で言ってもシンプルに2行とかでも分かるっていう商品をむしろ作っていかないといけないんだっていうのを思ったんですよね。

僕自身そういうシンプルなものが好きだし、どうやったらシンプル化できるのかと。『もじぴったん』だと、後藤君(後藤裕之氏、『もじぴったん』のゲームデザインを担当)はすごいアイデアマンなんで、いっぱい面白いモードを考えるんですよ。でも僕は「絶対追加のモードは1個しか入れない」と。なぜなら『ニンテンドーDS』用ゲームのパッケージの裏には、「パズル」「対戦」「その追加のモード」としか書けないから、「絶対1個しか入れない」って言って(笑)。これは面白いなと思うモードもたくさんあったのに、凄い数、ボツにしたんですよ。で、『タッチ図鑑』っていうおまけが一番面白いから残したんですけど、結果的にそれが一番正解で。商品の魅力的にもそれで上がるし、コスト的にも下げられるし。だからその割り切る大切さみたいなのを僕はプロデューサーとして学んだところでもあるんですよね。でもその根っこは『テトリス』ですね。

米光:『テトリス』って衝撃でしたよね。それまではゲーム自体が右肩上がり。こんなのが出たとか、「画面よりデカいボスかよ!」とか(笑)。出るたんびに拡大路線の衝撃があったんだけど、『テトリス』はそういう方向じゃなくて、「ぎゃっ!」っていう感じはありましたよね。

中村:買った後はいろいろ入ってた方がいいけど、買う前のお客さんの視点から言うと、いっぱい入ってると何のための商品か分からなくなっちゃうっていうのがあって。そこはやっぱりコンセプトを明確にするために削ぎ落とすみたいなのが要るんだなって。それはすごい学びだったし。

米光:ユーザーも、たくさんあるとどうすればいいのか分からなくなっちゃうから、ない方がいいんですよね。

中村:本当はそうなんですよね。

米光:今はもう後から出せるから。

中村:(笑)。最初はもうすごいシンプルに出して、足りないって言われたら追加すればいいわけですからね。そういう方がいいのかもしれない。

※第4回は2月18日に公開を予定しています。


米光一成氏のブログ『こどものもうそうblog』
中村隆之氏のブログ『元もじぴったんプロデューサーの生の知恵ブログ』
【米光×中村 ぷよぴったん対談】その1:パズルゲームクリエーターの2大巨頭が出会う
【米光×中村 ぷよぴったん対談】その2:「世界は全部ゲームになる」 “米光予言”が示唆する新しい学びの姿

この対談は『エキサイトレビュー』との共同取材。また違った切り口で記事が公開されています。
「ぷよぷよ」と「もじぴったん」が対談! モンハン様にあやまれよー!(エキサイトレビュー)


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宮原俊介(編集長) 酒と音楽とプロレスを愛する、未来検索ブラジルのコンテンツプロデューサー。ゲームコミュニティ『モゲラ』も担当してます

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