ホームレスな生活

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ASSIOMA

今回は大元隆志さんのブログ『ASSIOMA』からご寄稿いただきました。

この記事は、以下の記事のつづきとなっておりますので、こちらも合わせてお読みください。
「Big Issue(ビッグイシュー)に入っていた一通の手紙」
https://getnews.jp/archives/64084

ホームレスな生活
前述の記事でも取り上げさせていただいた渋谷東急本店前のホームレスの人から、『Big Issue(ビッグイシュー)』 *1 と呼ばれるホームレス支援の雑誌を購入しました。彼はまたホームレスの方の日常をつづった手紙を配っていました。受け取ったつづきの手紙を紹介します。
 *1:ビッグイシュー日本
 http://www.bigissue.jp/
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ホームレスな生活 ~その2~

ホームレスのおっちゃんの一日
「みだしなみ」

顔を洗う為に向かう場所とは、公園。
自分はいつも新宿中央公園で、顔を洗う。
人によっては、ホテルの地下のトイレや、オフィスビルの
地下トイレなどさまざまだ。

中には、寒い時期は、お湯の出る場所もある。
自分は待つのが嫌いなので、いつも公園である。

冬は水がつめたいが、慣れればなんとかなる。
まず最初に手をセッケンで洗う。その後ツメを洗う。

ブラシにセッケンを付けて、ツメの間を綺麗にブラッシング。
これが自分にとっては重要なポイントになる。
何か買ったときとか、ビッグイシューの販売でお客さんとの
お金のやりとりをした時にツメがきたないとマイナスポイントだと思う。

だから自分はツメを短めにして毎日ブラシで納得いくまで洗う。
その後、顔を洗う。顔を洗い終えると、次は頭をシャンプーで洗う。

今はいいが冬はこの作業が一番こたえる。
その後は足を洗って歯をみがく。

毎日これを繰り返す。
雨の日はビッグイシューの事務所で。

どうしても今はおフロは一週間に2、3回ぐらいしか入れないので
この日課は大切なのです。

たまには、コインシャワーや福祉事務所でのシャワー(タダです)を
利用するときもある。

コインシャワーは大体7分で二百円ぐらいである。だからたまにおフロに
入ると、頭や体を3回から4回、念入りに洗う事になる。
大体一時間近くはいつも入っている。

疲れを取る為のフロが逆に疲れる時もある。その日はよく寝れるのも事実。
そして顔を洗い終えると事務所に出掛けるのです。

次回へ続く。
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・この手紙を書いた”おっちゃん”に会うには?
『Big Issue(ビッグイシュー)』販売時間:だいたい11時ごろ~18時ごろ
『Big Issue(ビッグイシュー)』販売場所:渋谷東急本店前の交差点の角
だいたい下記写真のどちらかの場所で販売しているそうです。

ホームレスな生活 ホームレスな生活

参考情報:渋谷駅周辺の『Big Issue(ビッグイシュー)』販売場所

ホームレスな生活

・世にも奇妙な日本のホームレスの現状
総務省統計局の発表している完全失業率 *2 によると、日本の失業者数は年々増加しています。平成22年4月の発表では、完全失業者数は356万人。前年同月に比べ10万人(2.9%)の増加。18ヶ月連続の増加とあります。
 *2:『労働力調査(基本集計)平成22年5月(速報)』 平成22年6月29日 総務省統計局
 http://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/tsuki/pdf/05400.pdf ※Adobe Acrobat Readerが必要です

ホームレスな生活

図:「完全失業率の推移(男女計)」 *2の資料5ページ参照

更に、厚生労働省の発表した、相対的貧困率 *3 では、完全失業率の増加を象徴するように、15.7%と過去最高を記録しています。
*3:『相対的貧困率の公表について』 平成21年10月20日 厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2009/10/dl/h1020-3a.pdf ※Adobe Acrobat Readerが必要です

ホームレスな生活 その2

図:「相対的貧困率の年次推移」 *3の資料1ページ参照

同じく厚生労働省の所得分布状況 *4 を見ても、平成21年の日本の平均所得金額は547万5000円。年々減少傾向にあり、500万円未満の所得が56.6%に達しており、所得の低下の実態が浮き彫りになっています。
 *4:『平成21年 国民生活基礎調査の概況』 平成22年5月20日 厚生労働省
 http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa09/2-2.html

ホームレスな生活

図:「平均所得金額以下の世帯の所得金額階級別累積度数分布」 *4の資料参照

では、ホームレスも増加傾向にあるだろうと思って、同じく厚生労働省のホームレスの実態調査 *5 を見てみると、低迷する日本経済とは逆行し、年々減少傾向にあるとされています。その数は全国で1万3124人。平成21年から22年にかけて2635人も減少している。少なくともここ数年、景気回復の実感を感じていませんし、この調査結果には驚きを隠せません。
 *5:『ホームレスの実態に関する全国調査(概数調査)結果』 平成22年3月26日 厚生労働省
 http://www.mhlw.go.jp/bunya/seikatsuhogo/homeless10/index.html

ホームレスな生活

図:「全国のホームレス数」 *5の資料参照

・増加する生活保護。寄付より支援政策の方が大切ではないか?
統計から見える数値だけでは、真意はわかりませんが、景気が低迷しており、国民の生活水準が低下傾向である数値が発表されているにも関わらず、ホームレスの減少が報道されるという状況を考えた場合に、考えられるのは下記の3点ではないかと思います。
1)衰弱死
2)周囲の人間の助けによる社会復帰
3)ホームレスから生活保護の需給

1)、2)による数が少なくないとは言えませんが、3)が増えているのではないでしょうか? 生活保護の受給者数は増加の一途をたどっている *6 との報道を良く目にします。生活保護を受けている方には、身体的な障害を抱えていて、働きたくても働けないような方たちも居るでしょうから、国民にとって、必要な支出であるとは思います。しかし、一方で、ホームレスの減少も何%かは生活保護の需給による物ではないかと思うと、複雑な気にもなります。
 *6:「生活保護世帯数と保護率の推移」平成22年6月10日更新 『社会実情データ図録』
 http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/2950.html

この一連の“ホームレスな生活”を書いている人のように、社会復帰に向けて自分で立ち直る工夫をされている方への支援を惜しいとは思いません。しかし、全員がそうなのだろうか? と思うと、疑問を感じざるを得ません。

私には、福祉というものの奥深さはわかりませんが、税金を払っている立場の人間から一言言わせて頂くと、安易な金銭の給付ではなく、ホームレスの方々が自立するための教育や仮設住宅の増設等の支援機能を充実させてもらえればと願うばかりです。

大切な事は、働く喜びと、自分の力で生きているという誇りを感じてもらえるようにする事が本当の意味での“支援”ではないかと思います。安易な給付は単なる“寄付”と同じであり、受給者が給付に依存するようになれば、本当の意味での自立はむしろ遠のくと思うからです。

執筆: この記事は今回は大元隆志さんのブログ『ASSIOMA』からご寄稿いただきました。

文責: ガジェット通信

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