“ホームレスのIT活用”を支援するNECと『ビッグイシュー』による講座がスタート
都市部の路上で販売されている雑誌『ビッグイシュー』をご存知でしょうか。『ビッグイシュー』は、ホームレスの販売員により販売されている雑誌で、1冊300円の売り上げのうち、160円を販売員の収入としています。この『ビッグイシュー』販売員を対象に、日本電気(NEC)とNPO法人のビッグイシュー基金がホームレスのIT活用を支援する講座『NEC×ビッグイシュー ホームレスの人のためのIT CONNECTION講座』をスタートさせました。
講座を始めたきっかけは、過去に『ビッグイシュー』販売員だったホームレスに倉庫勤務の仕事を紹介した際、バーコード入力でパソコン(PC)に触ることに最後まで抵抗があり、結局1ヵ月で辞めてしまったこと。たとえホームレスであっても、ネットカフェなどでだれでもPCが触れる時代ですが、PCにまったく触ったことがない人にとっては苦手意識を持つのは当然でしょう。社会復帰を目指すホームレスには最低限PCのスキルが必要と考えた『ビッグイシュー』が、NECに協力を求めたとのこと。NECは社会貢献活動の一環として、この講座の企画立案と資金、ボランティアスタッフの提供を担当しています。
第1回の講座は5月9日に東京・四谷ひろばパソコンルームで実施。今後は毎週日曜、全14回の開催を予定しています。内容はPCの基本的な使い方から、履歴書作成を通じた自己との対話と他者に向けた表現の講習、ビジネスマナー、手紙の作成、企画書作成など多岐にわたるもの。NECと『ビッグイシュー』は過去にも2007年、2008年にホームレス向けPC講習を実施してきましたが、受講者となるホームレスがITの基本スキルだけでなく、ITを活用してコミュニケーションスキルを身に着ける必要があると判断し、今回はITを活用した自己表現を目指す内容の講座を企画したそうです。
受講者となる『ビッグイシュー』の販売員は、既にブログを持っているPC経験者から、ローマ字入力が分からない人までレベルはさまざま。それでも「ブログを作りたい」「視野を広げたい」など意欲をもって講座に参加しています。会場には受講者とほぼ同数のボランティアスタッフが参加。マンツーマンでPCに向かう姿があちこちで見られました。
第1回の講座はPCの電源の入れ方からマウスやキーボードの使い方、Windowsの『ペイント』を使ったお絵かき、ファイルの保存までを解説した後、ブラウザを使って自分が雑誌を販売するエリアの天気を調べたり、サイトを検索する操作までをレクチャー。講座を担当する品川ITサポーターズのブログに、その場で撮影・更新した記事が公開されていることを確認すると、受講者は感嘆の声を上げていました。今後、受講者の中から続々と“ホームレスブロガー”の誕生が期待できそうです。
ここでITを学ぶことは、その後の就業支援などにつながっていくのでしょうか?NECでこの講座を担当するCSR推進部社会貢献室主任の池田俊一氏にお話をうかがったところ、「ITとコミュニケーションを身に着けることが就業支援になると考えています。秋には受講者が電子メールを使って雑誌販売をする計画もあるんです」とのこと。路上の販売で購入できなかった購読者に、販売員が電子メールを介して雑誌を販売していく計画があるそうです。販売員にとっては、ITを習得することが売り上げの向上にもつながるため、高いモチベーションで講座に参加できるというわけです。
「ホームレスのIT活用」というユニークな試みのこの講座。ブログで自己表現したり、電子メールなどのコミュニケーション手段を活用することで社会復帰を果たしていくホームレスが今後増えていくかもしれません。
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宮原俊介(エグゼクティブマネージャー) 酒と音楽とプロレスを愛する、未来検索ブラジルのコンテンツプロデューサー。2010年3月~2019年11月まで2代目編集長、2019年12月~2024年3月に編集主幹を務め現職。ゲームコミュニティ『モゲラ』も担当してます
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