マスコミはウケる記事を書きたがる(メカAG)

マスコミはウケる記事を書きたがる(メカAG)

今回はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。

マスコミはウケる記事を書きたがる(メカAG)

以前国の「特別会計」が話題になったことがあった。一般会計をはるかに超える予算を持ち、国民の目から隠された予算…という触れ込みだった。国会で一般会計の赤字は議論されるが特別会計については議題にも登らない。官僚が国民の知らないところで好き勝手しているのだ、と。

実際には省庁の各部署の重複分の予算を単純に足し合わせてしまったために、目の玉が飛び出るような額になっただけだった。つまりある部署の支出が別な部署の収入になっている。これは単に政府の中で金がくるくる回っているだけで、ソレを単純に合計したら、同じ金が何重にもカウントされてしまう。

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現役世代は借金が多いのに、高齢者はむしろ資産が多いというのも一時期話題になった。現役世代の借金の多くは住宅ローンであり、返し終わった頃に定年になるというだけなのだが。しかも悪質なことに本の資料には借金の内訳が書いてあるにもかかわらず、その部分を消して発表する人まで出る始末。

年金も現在の高齢者は現役時代にたいして支払ってなかったにも関わらず、現在はたくさんもらっているという批判もあった。でも彼らの親は年金をもらってなかったから、彼らは現役の頃自分の給料から直接親の生活費を出してたんだよね。

現在の現役世代は確かに支払う額は多いが、親はもらっている年金で生活しているから、親の生活費を負担しなくて済んでいる。単に間に国が介在しているか否かの違いでしかない。

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戦後の犯罪件数のグラフを示し、現在高齢者が若い頃は犯罪件数が異常に多かったという。だからこの世代はなにか異常な世代なのだという主張がある。でもグラフの内訳を見ると跳ね上がっているのは強姦とか。この時期風営法が改正されたので警察が力を入れて取り締まった。だから見かけ上犯罪件数が増えているのであって、それ以前に強姦がなかったわけではない。ようはそれ以前は犯罪じゃなかったというだけ。

とにかく政府は国民の目から隠れたところで策謀をめぐらし、高齢者は幸福で若者は不幸でなければならない。そういう記事がウケるわけだ。ウケる記事はチェックが甘くなるのが困ったもの。

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「従業員はロボットに置き換え? 飲食店で進む自動化」 2014年07月21日 『CNN.co.jp』
http://www.cnn.co.jp/business/35048912.html

この記事って、英文の記事があるのだろうか?記事中にいくつか出てくる固有名詞を検索しても、あまりそれっぽい英文の記事がヒットしないんだよね…。それとも日本版独自の記事なのだろうか。まあ独自の記事を書いちゃいけないってわけじゃないけど。

記事の内容を分解してみると、特に「飲食店で従業員をロボットに置き換える」という具体的な話が語られているわけではない。いくつかの要素を組み合わせて、そういう流れを読み取っているだけだ。

ひとつはファーストフード店の労働者の賃上げストライキ。これは2012年頃から起きてるから、それほど目新しい話じゃない。パネラ・ブレッドというベーカリーカフェチェーンが端末を使った自動注文システムの開発に着手したというのは4月のことらしいから、まあ新しいニュースではある。でも端末の自動注文ってすでにあるんじゃ…?そんな目新しいことでもないような。

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せいぜい具体的なのはここまでで、あとは雇用政策研究所(EPI)が発表した「最低賃金が15ドルになれば、自動化が進む」という予測。そして10~20年後には配送車が自動運転になるとかレタスの選別にロボットを使ってるとか。

自動運転ってどうなんですかね。高速道路とかならいいと思うんだけど、たとえば商店街の道とか、人を避けながら(人と駆け引き?)なんとか走ってるような状態の場合、自動化できるもんなんですかね。コンピュータの判断だと永久に動けないんじゃなかろうか。だって目の前に人がいるんだもん(笑)。ちょっと動かせば人が避けてくれるとか、そこまで考えられるのだろうか。

結局この記事の骨格は、1)ファーストフード労働者の賃上げストが起きている。2)端末による自動注文システムの開発に着手した。この2点だけだよね…。それだけでファーストフード労働者の仕事が奪われるとは思えないのだが…。

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この手の話についていつも述べていることだが、すでにある仕事が機械に置き換えられるという点だけを見ていて、新たな仕事が登場する可能性を無視してるのが問題。産業革命は人間の雇用を奪わなかった。むしろ新たな産業を生み出した。もし産業が革命が起きなかったら、現在も人間は産業革命以前の仕事に忙殺され、あらたな産業を興す余裕などなかっただろう。

人間は金儲けの天才であり、次々にいろいろな産業を考えだすものだ。起きてもいない機械化による失業者の増加を心配するなど、まさに杞憂だと思うけどねぇ。きっと金儲けがうまい人が、新たな産業を考え出してくれるだろう(笑)。

人間がロボットに合わす形なら、かなり自動化できると思うんだよね。ハンバーガーショップも、ボタンを押すとガタンとハンバーガーが出てくる。すなわちハンバーガーの自動販売機(笑)。

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たとえばレストランで配膳をするロボットって、結構高度だと思うんだよね。客がうろちょろしている店内を、ちゃんと間をすり抜けて料理を目的のテーブルに運ばなければならない。いたずらしてロボットの周りを人間が取り囲んだら、ロボットはどうするんでしょうね。

立ち往生してしまうのか、無理矢理人間を押しのけて通ろうとするのか、無骨な用心棒ロボットが裏から出てくるのか、人間の店長に助けを求めるのか…。ロボット三原則じゃないけど、まさに人間の要求というのは矛盾しまくっているわけで、それをなんとかこなしてるのは、人間の店員だからだと思うんだよ。

まあ最終的にそういうことを解決したロボットが登場するとしても、かなり先な気がするんだけどね…。そう簡単に鉄腕アトム並の知性を持ったロボットができるとは思えないのだが。

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にぎり寿司ロボット(シャリを寿司の形に握るやつ)が登場して人間の雇用を奪ったかといえば、逆だと思う。いままで安く寿司を提供できなかったのが、寿司ロボットのお陰で安く寿司を提供する店が増えたわけだ。当然人間の店員も増えただろう。

結局、現状の機械ができるのは、やっぱ決まりきったことであって、機械の間をうろちょろしてその間を補完する人間はいなくちゃならない。機械が普及すればするほど、人間も必要。そういう人間が要らなくなる時代というのは、鉄腕アトムのように人間とほぼ同じことができるロボットが登場した時の話。

そういう時代は、ワガママな一般市民の相手はロボットに任せて、人間の店員は「高級志向」の金持ちだけを接客してればよくなったりするかもね(苦笑)。「本物志向」というか、機械で作れる時代に手打ちそばが流行るのと同じで。

スマイルゼロ円じゃないけど、「接客」が重視されるようになったのも、それだけ社会のいろいろな部分が機械化されて、社会全体に余裕が出てきたからだと思うのだよね。それまではとにかくものを作るだけで精一杯。店員の態度が悪かろうが、料理が出てきさえすればいい、と。むかしは個人商店が多かったから、店員の態度なんて愛想悪くて当然ぐらいだったような。接客態度云々というのはデパートやチェーン店とかが主流になってからだよね。少なくとも庶民が行くような店は。

執筆: この記事はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。

寄稿いただいた記事は2014年07月29日時点のものです。

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