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同性愛者が生まれるメカニズム

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今回は神無久さんのブログ『サイエンスあれこれ』からご寄稿いただきました。

同性愛者が生まれるメカニズム

テレビのバライティー番組で見ない日はないほど、日本でもようやく市民権を得てきた感のある同性愛者ですが、この人口の約8%を占めるといわれる同性愛者がどのようなメカニズムで生まれてくるのかについては、ほとんど何も分かっていないのが現状です。その多くが家族性であることから、同性愛遺伝子なるものの探索が試みられたこともありますが、未だ見つかったという報告はないようです。

面白いことに、同性愛はなにも人間に限った特徴ではないのです。例えば、カリフォルニア・カモメのつがいの14%はメス同士、オーストラリア・コクチョウのつがいの6%はオス同士であり、羊のオスの8%は、オスにしか興味を示さないのだそうです。このことから、同性愛には種を超えて、何か普遍的な誕生の背景がありそうです。しかし、同時に、子孫を残すことができない同性愛が、どうして自然淘汰されることなく、一定の割合で存在するのか、これも進化の謎として未だ明らかになってはいないのです。

そこでこれらの疑問に答えるべく、米・カリフォルニア大学サンタバーバラ校のWilliam Rice氏らは、The Quarterly Review of Biology誌の中で、大胆な仮説を提唱しています*1。

*1:「The Quarterly Review of Biology Vol.87」 2012年12月4日 『JSTOR』
http://www.jstor.org/stable/10.1086/668167

性の決定に関して、ヒトの場合、デフォルトが女性であるため、Y染色体を持たないとそのまま女性化するのですが、Y染色体があると精巣が形成され、そこで作られる男性ホルモンによって男性化します。しかし、実際は、胎児の受ける性ホルモンの影響は、副腎や母体からの影響も含め、それほど単純なものではないといいます。このように胎児の発育過程において複雑に変化する性ホルモンの影響を最小限にとどめ、胎児の本来の性を維持するために、胎児にはその性によって異なるEpi-marks(Epigenetic marks、エピジェネティック・マーク:DNAやヒストンタンパク質*2に対する化学修飾)が存在し、性ホルモンに対する感受性を調節しているのではないかというのがRice氏らの主張です。

*2:「ヒストン」 『Wikipedia』
http://ja.wikipedia.org/wiki/ヒストン

そして、さらにRice氏らは、通常は次世代へと継承されることのないこのEpi-marks(この差によって生じるエピジェネティック変異の遺伝についての関連記事はこちら*3)が、何らかの原因によって次世代、つまり胎児の子供へと継承された場合、その子が同性愛者になるのではないかと主張しています。つまり、女の胎児がもっている、女性ホルモンに敏感なEpi-marksが、胎児の将来の息子へと伝わってしまった場合、本来なら影響を受けない量の母体由来の女性ホルモンに対しても敏感に反応し、その息子が部分的に女性化してしまうというわけです。

*3:「エピジェネティック変異の遺伝メカニズムがちょっとだけ?明らかに(前編)」 2011年08月01日 『サイエンスあれこれ』
http://blog.livedoor.jp/science_q/archives/1520844.html

Rice氏らは、数学モデルを用いて適応度を計算した結果、このようなEpi-marksシステムは、子の性決定を確実に遂行できるというメリットがあるため、集団内に急速に広がることがわかりました。その結果、本来乗り越えられないはずの世代間障壁を、一定の割合で乗り越えたEpi-marksが出現し、それが孫の世代の性決定に混乱を招いた結果が同性愛であり、それ自身に何ら適応上のメリットがなくても淘汰されることなく、一定の割合で存続してきた理由なのではないかと考えているようです。

ただし、Rice氏らの主張は、現時点ではあくまでも仮説であり、今後実験的な検証が必要なのは言うまでもありません。同性愛の謎が本当に明らかになるのは、もう少し先のことになりそうです。

執筆: この記事は神無久さんのブログ『サイエンスあれこれ』からご寄稿いただきました。

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