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【MobileHackerz X 竹中直純 スペシャル対談(4)】私的利用のガイドラインが争点に–“全録”環境の課題

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24時間、全テレビ局を録画する“全録”でテレビが楽しくなる!MIRO(MobileHackerz)と竹中直純(未来検索ブラジル取締役、SPIDERの仕掛け人)が、テレビの新しい楽しみ方を語る対談シリーズ、第4回。“全録”の課題を議論するうちに、録画データの私的利用に話が及び、トークはさらに白熱します。(バックナンバー:第1回 / 第2回 / 第3回)。

聞き手:ガジェット通信編集部・宮原俊介(shnsk)

 

■手に入れると「なくなること」が不安に
 おふたりは24時間、テレビ局を全局録画する“全録”環境をお持ちなわけですが、全録環境の課題というのは、どういうものがありますか?

竹中  ハードディスクを24時間ホントに回し続けると、結構寿命に微妙な影響が出るんですよ。ヘッドがへたれるとか。だから『SPIDER』は「おやすみ時間」というモードを設けて少し休ませるというのを、ハードディスクメーカーの方からアドバイスを受けました。

平日の夜とか日曜の夜に、放送休止時間がある。あの間を止められるといいんですが、各局バラバラだったりするんで。理想的には壊れる部分のないシリコンディスクが普及して大容量であれば、24時間完全に動かし続けることができるんですが、コストの観点でハードディスクを選ぶしかないんで。iVDR、ああいうものを差すとどんどんチャンネルが増えるとか。そういうのをやれるといいけど、ハードウェア作るのは大変ですよ。

MIRO  『24時間ワンセグ野郎』のように自作する場合、ワンセグチューナーが手に入らない。こういうハードウェアを供給しているところがないのがまず1点(編集部注:24時間ワンセグ野郎で利用できるワンセグチューナーは、ノウハウの問題で対応製品が限定されており、入手が難しい)。

なぜないかというと、価値を認められにくいというか。それこそSPIDERみたいなハードウェアが1台30万円とか、それだけのコストを私は払う価値があると思うのですが、一般の人が払うかというと、そうではない。

それは発売当時の『コクーン』(ソニー)のときでも思ったんですけど、コクーンも当時DVDもついていないのに15万って、すごい高かったんですよ。でもあれは買ってよかったとすごく思う。たまたまレコーダーを買わなきゃっていう時期にコクーンが出たので買ったのですが、結局ハードウェアがないっていうのが一番課題で。じゃあこうやって自分で作ったときはチューナーがない。

次に、一回手に入ると手放したくない依存性の高い環境なので、それもある意味課題というか。「壊れたらどうしよう」という不安感がある。

竹中  SPIDERも、自分の家には開発機がそのままあって、ほとんど原型をとどめてないんですけど、「壊れたら本当にどうしよう」という。僕のだけCPUが違ったり、チューナーが微妙に多かったり、ビデオカードが違ったりするんですよ。

技術的な把握度はPTPに結構な時間を使って開発を一緒にしてたので、当時は全部把握できてるつもりだったんですけど、最近はほかの人も入ってきて、徐々に分からなくなってきている。サーバー側も含めて。なのでこれが壊れたら開発の人に泣きつくしかないのかなあと。そういう意味では、MIROさんが自分でいまだに作り続けているのは、すごくうらやましい。
 

■インディーズメーカーの強み
竹中  思うのは、PTPのように好きで作ってるメーカーの製品って、何か(ボタンなどを)押したときのレスポンスが早い。それが自分の視聴体験に影響する。市販のハードディスクレコーダーはコクーンも含めてもっさりしてるはずなんですよ、かなり。

いいCPUも積んでないし、メモリーもないからしょうがないんだよ、ということなんでしょうけど、やはり早くないと気持ちよくないですからね。改善しなきゃいけないんですけど。SPIDERは実現してるんで。1眼レフのカメラってレスポンスを考えてチューニングしてるけど、テレビのレコーダーってまったくそういうのがないんですよね。

MIRO  液晶テレビがようやくそうなってきて、レビューでも「サクサク」か「もっさり」というのが語られはじめています。最近はそういう話が持ち上がるようになってきてるんで。
ユーザビリティにお金を使って欲しいと思いますね。

竹中  世の中の家電メーカーはSPIDERのファームウェアをOEMすべきですよ。1台いくらとか。そういうインディーズハードウェアみたいなところで、本気で作っている人たちよりも、大きな家電メーカーで作ってる方がショボイってのがわからないんですよ。海外でもそうでしょ?

MIRO  海外は詳しくないですけど……。

竹中  海外のプロオーディオとかピュアオーディオの世界だと、「ガワをダイカストから削りだして台を作りました」「ボリュームがこんなに滑らかです」って言ってるのに、機器になってモニタにつなぐと、「これいつのファミコン?」みたいになるじゃないですか。あれは残念ですね。ワンセグ野郎とかけ離れた話になってしまいましたけど。

 24時間ワンセグ野郎は商品化できると思いますか?

MIRO  いや~、したいですけどねえ。
 

■ガイドラインという障壁
 商品化するうえでの課題というのは?チューナーが手に入らない。

MIRO  チューナーが手に入るかどうかと並行する話なんですけど、ワンセグのデータぐらいは自由に使わせてほしいですよね。今は24時間、生データを録画してますけど、本来のガイドラインからしたらアウトだし、インターネットでストリーミングするのも完全にアウトなんですよね。それでも、「ワンセグぐらいやったっていいじゃん」と。それが大っぴらにできるようになれば、それこそいくらでも大手メーカーが進出してくる世界だと思う。

竹中  それは何か変わればいいんですか?著作権法ですか?それとも……。

MIRO ARIB(電波産業会)のガイドライン。

竹中  ARIBって、メーカーがいっぱい入っている。放送局も入ってるんですよね。

MIRO  ハイビジョンのHD画質のコンテンツは百歩譲って分かるとしても、ワンセグのデータぐらい……。それを『YouTube』に登録する人がいたら、YouTubeが警察に通報するとか、訴えればいい話で。自分個人で録画したりストリーミングで観たりとかっていう利用で、ワンセグの画質ぐらい許してよって思いますよね。

竹中  それとつながる話なんですけど、デジタル放送の私的利用ルールがダビング10になったら、みんなダビング10になるっておかしいですよね。たとえば「世界遺産」はソニーが必死で作ったもので、TBSにとっても大事なコンテンツだと。これはダビング10が普及した後でも、コピー・ワンスしか許さないというようなことがあってもよい。

「その枠はコピー・ワンスで、ほかはダビング10でもいいですけど、場合によってはTBSの放送開始と放送終わりの映像はコピーフリー」だとか、番組によってきめ細かくコントロールするとか。CMもスポンサーがいいと言ったらコピーフリーにするとかあっていいと思う。なんでやらないんですかねえ。

MIRO  放送局のコントロールが難しいとか、機材の関係でという話は聞いたことがありますけど、まあ言い訳ですよね。そういう意味だと、NHKの7時のニュースにコピーコントロールがかかっているのもおかしい話で。

ソフトウェア産業でエンジニアとかやってると、受託開発をする。お客さんから開発費をもらって、ソフトウェアを開発したら、納品した成果物の著作権はお客さんに行く。自分たちで持ってるライブラリを使ったら、ライブラリの権利は自分たちで持って、使用権を渡す。お客さんのお金で、お客さんのリクエストで作ったものはお客さんのものになりますよね。でもNHKは全収入の95%は受信料なのに、コンテンツの権利はNHKなんですよ。

竹中  知ってます。でもあんまり言わない。
僕もマズいなと思うし、自分がNHKの番組に出演したときは自分が写っているワンショットはコピーフリーにしてくれって言いたい。いくらでもしゃべるし面白いことやるからコピーフリーにしてくれって言いたいんですけど、何をどうしたらできるかは、もちろん現場の人も分からないし、そこはいろんな工夫をすべきですよね。

MIRO  国民がお金を払って、NHKに番組を作らせているんです。ほかから契約して持ってきた番組にコピーコントロールがかかるのは分かるんですけど、じゃあ、なんでNHKニュースがコピーワンスなの、ダビング10なの、っていうのはものすごい納得がいかない。

竹中  1コだけNHKの方から聞いた納得できる話をしゃべると、オンデマンドの音楽著作権使用料に類するものって、放送時のものと、インターネットで配信しているもので処理が違う。その手間賃というか使用料だけ載せて売ってるんだと。「あれで儲けてはいかん」とNHK内外ではっきり言われてるんで、実費だけいただいているんですという話です。だそうですよ。

本質的には視聴者から受信料を集めて、もともと国民が発注したものを受注して作ったものなのに、コピーコントロールされている。

MIRO  コピーライトにはNHKの子会社が入って、子会社に発注して子会社が番組作って、DVD売ったりして「おかしいなあ」と思うんだけど、うちには『プロジェクト X』のDVDがあったりする(笑)。
 

どこまでが私的利用の範囲なのか
—-  24時間ワンセグ野郎を、家の中の家庭内LANで視聴する分には違法じゃないんですよね?

MIRO  いやまあ、別に外でやっても違法じゃないと思いますけどね。個人、私しか使ってないので。

 観るサーバーのIPアドレスとかが公開されなければ問題ない?

MIRO  そうですね。

竹中  anonymous httpでワンセグが置いてあるだけで、完全に公衆送信権を侵害していると言われるんですよ。技術的にどうあれ、そういう状態かどうか、ということが裁判では非常に重要で。それがftpだのhttpだの関係ないんで。ベーシック認証が人間ですごくカンタンに推測できるものだったらクロでしょうし。

MIRO  実態はどうなのか、ということで。公衆送信権の侵害というのは、不特定多数の人が見える状態で、見てる状態だと完全にアウトなんですよ。あくまで自分が個人で自分で複製したものを自分で使っている、というだけであれば、私的利用の例外規定に含まれるだろうと。

竹中  音楽は、一時それさえ許さない雰囲気になってましたからね。「一時的複製」みたいな考え方があって。基本的にはキャッシュを許したくない。厳密に言えば、「キャッシュを作った」イコール「コピーを作った」という解釈ができるから、「金払え」と言われるリスク もあるんですよ。一応、大丈夫っていう判例は出てますけど。

今は テレビ番組や映画などの映像で、複合著作物として包括的なガイドラインが作られようとしているので、キャッシュについては変なことにはならないんじゃないですかね。コンピュータの存在を無視できないことは分かってるんだから。

MIRO  インターネット上の視聴で、個人だけしか使えない状態という意味では、『ロケーションフリー』(ソニー)があるうちは大丈夫。大手のメーカーが地雷を踏みに行ってくれているので。

竹中  あれって海外からも観られるじゃないですか、どうなんですかね。

MIRO  『まねきTV』がそれで裁判に勝ったじゃないですか。

竹中  ロケーションフリーがいいのに、なんでうちはダメなのって論法で。

MIRO  まねきTVの前に『録画ネット』というのがあって、録画ネットは裁判で負けました。負けた理由は、録画ネットが作った録画サーバーを個人に売って、その個人が録画ネットの部屋に設置してもらって、海外から観るシステムだったんですね。「サーバーを個人に売って、個人が設置している」、というのはあくまでも名目であって、サービス全体を録画ネットがコントロールしていると。だから録画ネットが主体となって録画して配信しているから、私的使用じゃなくて公衆送信権の侵害だと。

まねきTVはそこに踏み込まない。ロケーションフリーの端末も、いらないんですよ。「そこらへんの量販店で買ってうちに送ってください。うちが設置します」というサービスです。なので、送信そのものは個人がやっている。まねきTVはタッチしていない。自分で準備したもので自分で録画・送信している分には私的利用の範囲だという判断される。

あれが通った以上、24時間ワンセグ野郎はアクセスコントロールするだけで大丈夫、と踏んでいます。
(編集部注:2008年12月15日、知財高裁が上記で触れた東京地裁の判決を支持。NHKと在京キー局5社による、まねきTV運営元の永野商店への控訴請求を棄却した。関連記事

MobileHackerz X 竹中直純 スペシャル対談(5)』に続く
 
 
MIRO プロフィール:

MobileHackerzの中の人。デジタルガジェットをこよなく愛するモバイル男。でも最近「自転車」にハマり、引越して電車移動の時間が短くなりでガジェットをいじる時間が少なくなってます……。

竹中直純プロフィール:
有限会社未来検索ブラジル取締役、武蔵野美術大学講師。インターネット草創期より、数多くのWeb サイトやシステムの設計・運営に携わるプログラマー。技術家を自称している。現在は、システム開発のみならず、Web関連のディレクションやプロデュースを多数手がける。
 
 
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記者:

宮原俊介(編集長) 酒と音楽とプロレスを愛する、未来検索ブラジルのコンテンツプロデューサー。ゲームコミュニティ『モゲラ』も担当してます

ウェブサイト: http://mogera.jp/

TwitterID: shnskm

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