【放射能影響予測】SPEEDIがちっともスピーディじゃない上に国民はスルーしてIAEAにだけスピーディに予測情報が報告されてた事について

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SPEEDI(文部科学省)

●国民に隠されていた予測情報
緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム「SPEEDI(スピーディ)」。そもそもこのSPEEDIは、今回のような事故が起きたとき周辺にどのような影響が出るか、「すばやく予測」するシステムなんだそうです。

でも、全然すばやくないですし、発表があるはずの原子力安全委員会のサイトをチェックしていても、23日に発表された試算の結果へのリンクがひとつあるだけ……。どうも変な感じなんですが、なんでうまく動いてないのかの説明もないので、なぜ情報が出てこないのかナゾなまんまです。推測するに、どうも分析するための元のデータがちゃんと収集できてないようなのです。じゃぁ、SPEEDIを使うのはあきらめて、他の方法を探ったり、海外の専門機関での分析結果を使えばいいのでは、と思うのですが……。

本来すごくスピーディなはずのSPEEDI

大震災から25日経過しますが、発表1回。大気中の濃度や被曝線量、そして環境への影響についての予測は、公式には、それだけしかありません。またその1回の発表に関しても、以下のような問題点が指摘されています。

・ヨウ素に関することしか書いてない。他の核種は?
・1歳児のことしか書いてない。2歳以上の人はどうしたら?
・放射性物質の放出が1回(24時間)おこなわれたという場合のシミュレーションしかない。継続的に放射性物質が放出されているとしたらどうなるのか、ということについては発表されていない。
・ぜんぜんスピーディじゃない

省庁はSPEEDIによる分析と発表にこだわり、発表は一元化すべし、と考えているようですが、果たしてそれでいいのでしょうか。日本には優秀な科学者がたくさんいますし、世界中にも多くの頭脳があります。また、SPEEDIが情報源としている「モニタリングポスト」と呼ばれる測定機器以外にも、測定機器を設置して日々データ提供をおこなっているところはあります。

さらに4月4日の官房長官会見や報道によれば、気象庁は国際原子力機関(IAEA)に対しては事故発生直後から予測情報を報告していたといいます。多い日は1日2回も……えっ? 日本人には教えてくれないのに、IAEAには教えるの? 曰く「仮定を基に計算した放射性物質の拡散予測データなので公表にはふさわしくないと考えた」とのことですが、本当にめちゃくちゃな話です。これは国民に対する裏切りであり、情報隠蔽と言われても仕方ないと思います。気象庁によれば「要望があれば公表したい」とのことなので、はやく公開して欲しいと思います。ていうか要望するに決まってますやん。

国 放射性物質の予測公表せず NHKニュース
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20110404/t10015080851000.html

SPEEDI発表資料より

●そもそもSPEEDIって
間違いがあればコメント欄で指摘していただきたいのですが、SPEEDIに関する説明を読んでいると、いざというとき迅速に周辺地域で放射性物質によるどのような影響が出るかを「サッ」と教えてくれるようなイメージです。これが機能すれば頼れる情報だと思ってしまいますし、おそらく震災前には、そんな感じで説明されていたんだろうと思います。そういう説明で予算もとっていたのだと思います。しかし、現実はそうではありませんでした。まず、正確なデータが不足しているようです。4月4日の枝野官房長官会見でも「原子力発電所から放出された放射性物質の量がわからないし、継続的な放射性物質の放出もどの程度かがわからない状態でのシミュレーションが困難であり苦慮している」と述べられていました。

使用される各種データ

例えば原子炉施設の事故に関しては以下の放出源情報が必要なんだそうです。

・異常事象発生時刻
・原子炉停止時刻
・放出継続時間
・放出高さ
・放出開始時刻
・放出核種名、放出率
・燃焼度

ですが原子力発電所が今回の規模で壊され、停電まで起きてしまって現地の状況がわからなくなり上記のような情報が収集できなくなるという事態までは誰も想定できなかったと思います。加えて「オフサイトセンター」とも称される福島県大熊町にある「原子力災害対策センター」には、SPEEDIに使われるデータが集まってくるはずでしたが、こちらも震災による停電で機能が停止しているそうです。うまくいけばそれらのデータは東京都文京区にある原子力安全技術センターという文部省管轄の施設の中央コンピューターに集約されるはずでしたが、情報がこなくては予測も難しい。それが、さきほどの枝野官房長官の「苦慮している」という言葉にあらわれていると思います。とにかく、いろんなトラブルによって、うまくいってない、というのは確かです。「SPEEDIによる予測がなぜ出てこないのか」についてはまとまった情報がないので、推測でしかない部分もありますがこのような理由であると思われます。それにしても、まさか予測システムの予測が出てこない理由を推測しなくてはいけないとは不思議です。関係各位はたいへんな中ではあると思いますが、今後情報の収集体制が整い、SPEEDIの予測情報もコンスタントに出るようになることを期待します。

こんな出力があるはず

※ガジェ通サーバー上の記事下に、参考リンクまとめがありますので、そちらもご覧ください。


参考リンク)
【放射能影響予測】SPEEDIの試算が発表される
https://getnews.jp/archives/106233

気象庁 | 環境緊急対応地区特別気象センターについて
http://www.jma.go.jp/jma/kokusai/kokusai_eer.html
気象庁がIAEAの指定する放出条件に基づいて計算したもの

●海外の研究機関等が出している観測データやシミュレーション
NNSA発表資料「The Situation in Japan (Updated 03/25/11)」
フランス放射線防護原子力安全研究所(日本語の資料もあり)
ノルーウェー気象研究所
オーストリア気象庁
ドイツ気象庁

●関連リンク)
(4月18日追記)
4月10日におこなわれた「第22回 原子力安全委員会臨時会議」の添付資料にSPEEDIによる資料が添付されていました。
外部被ばくの積算線量(3月12日から4月5日までのSPEEDIによる試算値)
http://www.nsc.go.jp/anzen/shidai/genan2011/genan022/index.html

(4月18日追記)
拡散の試算図2千枚、公表は2枚 放射性物質で安全委 – 47NEWS(よんななニュース)
http://www.47news.jp/CN/201104/CN2011041801000775.html

SPEEDI │ 防災技術開発 │ NNET
http://www.bousai.ne.jp/vis/torikumi/index0301.html

時事ドットコム:仮定の拡散予測非公表=放射性物質、IAEAには報告-気象庁
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2011040500004

放射性物質 安全委、拡散試算を公表(2011年3月24日 読売新聞)
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=38496

asahi.com(朝日新聞社):30キロ圏外の一部、内部被曝の可能性 極端な例で試算 – 社会
http://www.asahi.com/national/update/0323/TKY201103230465.html

asahi.com(朝日新聞社):枝野官房長官の会見全文〈23日午後5時過ぎ〉 – 政治
http://www.asahi.com/politics/update/0323/TKY201103230424.html

国 放射性物質の予測公表せず NHKニュース
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20110404/t10015080851000.html

asahi.com(朝日新聞社):気象庁が放射性物質の拡散予測 国内では公表せず – 東日本大震災
http://www.asahi.com/special/10005/TKY201104040357.html

放射性物質拡散予測、気象庁に公開を指示 : 科学 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20110404-OYT1T01078.htm?from=navr

福島民報:オフサイトセンター機能せず  
http://www.minpo.jp/view.php?pageId=4107&blockId=9804258&newsMode=article

関連議論)
放射性物質拡散シミュレーションをどう公開すべきか? – Researchmap

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深水英一郎(ふかみん)

深水英一郎(ふかみん)

トンチの効いた新製品が大好き。ITベンチャー「デジタルデザイン」創業参画後、メールマガジン発行システム「まぐまぐ」を個人で開発。利用者と共につくるネットメディアとかわいいキャラに興味がある。

ウェブサイト: http://getnews.jp/

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