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ボランティアが足りているというのは幻想です。今こそ立ち上がりましょう。

ふんばろう

早稲田大学大学院商学研究科専任講師、西條剛央さんよりご寄稿いただきましたので掲載します。(ガジェ通:深水英一郎)

●ボランティアが足りているというのは幻想です。今こそ立ち上がりましょう。

今になってよくわかる。自分は甘えていたと。やれるのにやらない。間違っていると思っているのに見過ごす。書けるのに書かない。言うべきなのに言わない。そういうのはもう止めにした。

《4月2日》

今もって大好きな伯父さんは行方不明。子ども(いとこ)は震災翌日から現地でずっと探し続けている。伯母さんや伯父さんの妹(母)は病院や遺体安置所を回っている。

グランディ21の遺体安置所。首や手足ももげた遺体が多いため、直接遺体をみることはできない。だから遺体と持ち物の写真が貼られている。

仙台市消防局の兄は、カラスが集まっているところを捜索するといっていた。だから遺体は陸上海中にかかわらずいろいろな動物に食べられている。酷い話で書いているだけでも胸が苦しくなってくるが、これが現実。

ボランティアに、タバコや酒はよくないと考える人がいるかもしれないが、現地の人の気持ちをわかっていない。そういうものが少しあるかないかではまったく違う。自分だって飲みたいのに、なぜ被災地の人には禁止するのか。

阪神大震災のことを持ち出して、避難所ではお酒がダメだとか、アル中になるとか言っているひとがいるけど、完全に的が外れている。南三陸町だけでも生き残った半分の人が生活しているのだ。僕らが送ったところで、一人が大量に飲めるわけもなく、せいぜい一口ずつ飲めるかどうかだ。

過去から学ぶのは大事だ。しかし過去は過去であり今ではない。同じところもあるだろうけど、違うところもある。人類が体験したことがない災害だ。頭でっかちな、お役所的な思考は現場の支援の妨げになる可能性がある。今、そこの場で、何が必要か想像力を働かせ、自分の頭で考えなければならない。

テレビでやっているようなメジャーな避難所の人は困っていない。むしろ物が余っているのだ。なのにマイナーな避難所には回ってこないらしい。賞味期限が二日切れたおにぎりだけがくるといっていた。佐藤さんは、被災して以来おにぎりとおしんこしか食べておらず、「昨日はじめてサバの缶詰を食べて、うまかったなやぁ」といっていた。

仙台市の行政には怒りを覚える。仙台市のメジャーな避難所には物が溢れているのだ。それで東京都庁で物資の受け付けをやっていて物凄い集まっていたのに、仙台市はもう要りませんと断ったのだ(それで都庁も受け付けをやめた)。なぜ同じ宮城県で困っている地域に分配しようと考えないのか。

現地のボランティアが余っているなどというのは幻想だ。今回は余震や原発の関係もあってボランティアはまったく足りていない。特に僕らが回った6箇所の避難所には1人のボランティアもいなかった。

ただ、公式のボランティア登録とかすると、メジャーな避難所にしか割り当てられず、自由に活動することができない。今、物も人も一部に偏っている状態なのだ。南三陸町だけじゃなく、実質上孤立していて本当に困っている避難所はたくさんある。

有志が支援物資を持って現地に行った方がよい。そこの人と話をして、物資のないところを案内してもらえばよい。間違ってもテレビで報道されたメジャーな避難所にもっていってはいけない。そこは空から陸から物資は補充される。

テレビに惑わされないで欲しい。物資も人もまったく足りていない。テレビに映っている人たちは恵まれている人たちなのだ。田舎には高齢の人が多い。若い人は少ない。漁師さん達がやられている。ネットで情報を集めるなどということはそもそも発想にすらない。

ネットできることもある。しかし、今回の津波に襲われた主被災地の多くはネットとは無縁だ。現地に行って直接話を聞いてはじめてわかることがあまりに多い。ボランティアをしたいという人は万全の準備を整えてぜひマイナーな避難所を探して行って欲しい。必ず力になれる。

これをみている人はネットができる強みを活かして欲しい。ぼくらは現地に行って、そこの地域の人々に信頼されている魚屋さんとつながりを持つことができた。その人に窓口になってもらい、僕らはネットで必要な物資の募集をかけて、全国からそこに送ってもらう。

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深水英一郎(ふかみん)

記者:

見たいものを見に行こう――で有名な、やわらかニュースサイト『ガジェット通信』発行人。トンチの効いた新製品が大好き。ITベンチャー「デジタルデザイン」創業参画後、メールマガジン発行システム「まぐまぐ」を個人で開発。利用者と共につくるネットメディアとかわいいキャラに興味がある。

ウェブサイト: http://getnews.jp/

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