『カービィのエアライダー』レビュー:脳汁ドバドバ! 超・多幸感が味わえるSwitch2のキラータイトル

「大乱闘スマッシュブラザーズ」の生みの親であるとともに「星のカービィ」シリーズの生みの親でもあるゲームクリエイター・桜井政博によるNintendo Switch 2向け新作ゲームが発売された! もちろん、『カービィのエアライダー』のことだ。

「もう買った!」という人も少なくないだろう。筆者もダウンロード版を事前購入した上で、オンライン体験会である「おためしライド」を繰り返しプレイ、もちろん発売当日は0時からプレイを開始した。そんな筆者のアツい期待を上回るレベルで面白い本作だが、一方で体験会が必要と判断される程度の「わかりにくさ」を持っていることも事実。

そこで本作に魅せられた筆者としては、この記事で、一人でも多くの人に本作の面白さを伝えたい!

レースゲームではなくレース×アクションゲーム! シリーズ最新作『カービィのエアライダー』

『カービィのエアライダー』は、「星のカービィ」シリーズの最新作であるとともに、ゲームキューブで発売された「カービィのエアライド」シリーズの最新作でもある。カービィの登場キャラクターたちが、「エアライドマシン」と呼ばれる乗り物に乗って競争するという内容で、一見するとレースゲームに近い。この点は、『カービィのエアライダー』を紹介する動画配信「カービィのエアライダー Direct」において桜井自身が、「こりゃあ『マリオカート』でよいですね」とネタにしていたほどだ。

しかし、『カービィのエアライダー』の楽しさは、レースそのものではなく、レースとアクションが融合した新たなゲーム性にある。最初に「わかりにくさを持っている」と書いたのはこのためだ。

本作は「マリオカート」と比べたくなる程度にはレースゲーム風。だから、「レースゲームとして面白いか?」という観点から、本作を見てしまいがち。だが、本作の醍醐味はレースとアクションが融合した新たなゲーム性にあるのだ。

本作の操作形態は、スティック操作とBボタン、Yボタンというシンプルなかたちに落とし込まれている。スティック操作でハンドリングを行い、Bボタンが「チャージ」、Yボタンが「スペシャル」。

レースゲームであれば、前進するためのアクセル操作が必要になるところだが、本作には存在しない。前進は自動的に行われる。

Bボタンによる「チャージ」は、「エアライドマシン」の種類によって挙動が異なるものの、基本的にはブレーキとダッシュを兼ねたアクション。ボタン押下中は速度が下がるとともに「チャージ」ゲージが増加し、ボタンを離すと貯まったゲージに応じて急加速ができる。

また、Bボタンは「星のカービィ」シリーズでおなじみ、敵を吸い込むアクションにも使う。吸い込んだ敵が特殊能力を持っているなら、コピーしてその能力を使用可能だ。

Yボタンによる「スペシャル」は、必殺技的なアクション。敵を倒してスペシャルゲージを貯めることで、キャラクター固有の技が発動できる。

もし本作がレースゲームであれば、ハンドリングと速度調整にフォーカスした操作形態となっていただろう。レースゲームの醍醐味は、直線でいかに速度を伸ばすか、カーブでいかに減速しないか、いかに総走行距離を縮めるか……といった、ライン取りと速度調整を重視したものになるからだ。

一方、本作の操作形態は、レースゲームに似ているものの、フォーカスされているのは「攻撃」と「方向転換&急加速」だ。

実際に本作の「エアライド」モードで攻略を試みると、操作形態の違いが明確にわかる。「エアライド」モードは、3Dレースゲーム的なゲームモード。エアライドマシンに乗る者たち……すなわちエアライダーたちがコースを走り、いち早くゴールに到着することを目指す。

本作で速度を上げる方法は、「チャージ」からの加速、「敵を倒す」、「他のエアライドマシンが出す星に触れる」というもの。このため重要になるのが、カーブのように速度低下と方向転換が必須となるポイントで的確に「チャージ」を使い、敵方向へ移動&攻撃し、敵を確実に倒す……という立ち回り。

つまり、ライン取りや速度調整よりも、敵と戦うアクションゲーム的側面が強く押し出されている。

(画像は「マリオカート ワールド」)

「マリオカート」シリーズも、緑甲羅やバナナといったアイテムで敵を狙ったり、回避したりといったアクション性を持っている。ただ、緑甲羅やバナナはあくまで他プレイヤーの妨害が目的。アイテムは確かに重要だが、それよりもレースゲーム的なハンドリングやライン取りが問われる仕上がりとなっている。

一方、本作は「他のエアライダーを倒す」「敵を倒す」といったことに強くフォーカスされていて、明らかにアクションゲームとしての比重が高いのだ。

こうした、アクションゲームとしての魅力が最も詰まった、本作のメインといえるゲームモードが「シティトライアル」モード。16人のエアライダーがトップを競う内容で、「フォートナイト」に代表されるいわゆる「バトロワ」的なモードだ。

「シティトライアル」モードでは、空に浮く島「スカイア」を自由に走り、制限時間以内にできる限りの育成用アイテムを集める。育成用アイテム以外にマシンも落ちており、自由に乗り換え可能。

制限時間が経過したら、決着をつけるため「スタジアム」へ移動。「スタジアム」ではミニゲームによって勝者を決める。

もちろん、マシンや育成によってミニゲームの有利不利は違う。ただ、4つのミニゲームから好きなミニゲームを選んで戦えるので、育成状況とマシンを踏まえて、最も有利なミニゲームで戦うことが可能だ。

「シティトライアル」モードは、操作方法こそレースゲーム的だが、ゲームの楽しさは完全に「バトロワ」。それでいて、必ずしも直接的な戦闘で決着をつけるわけではないので、「バトロワ」とも異なっている。ガンガン強くなっていく育成と、時折発生する戦闘、「スカイア」を自由に走る箱庭ドライブの楽しさ……といった要素が融合した、本作ならではの魅力を持つゲームモードなのだ。

圧倒的に脳汁ドバドバ! 超・多幸感が味わえるゲーム性

ここまで『カービィのエアライダー』のゲームシステムを紹介してきたが、では本作の何が面白いのか? 筆者が真っ先に挙げたいのが、たたみかけてくる爽快感だ。

まず本作は、「チャージ」による急加速、敵を倒したときの手ごたえといった基礎的な要素の爽快感が非常に強い。ゲームの手触りが、ものすごく丁寧に調整されていると感じた。

その上で、演出がド派手! 「エアライド」モードでは、空を飛んだり、レールに乗って回転しながら走ったり、トンネルに吸い込まれたり……といった演出が次から次へと押し寄せる。「映像を使った爽快感」の洪水!

そして、各モードとも「1位をとる」という勝利の気持ちよさが用意されている。「超快適操作」→「ド派手演出」→「勝利」という爽快感の見事な三段活用。

だが、それで終わりではない。

本作には、新コース、新エアライダー、新エアライドマシン、コスメティックアイテムといった要素が、アンロック要素として用意されている。これらは、ゲーム内で特定の行動を達成することで解放されていく。この達成ハードルは極めて低く設定されており、序盤はゲームをプレイするだけでも次々とアンロックされる。

そしてこのアンロック演出が極めて気持ちイイ。ゲーム内で何らかの追加要素が手に入る瞬間というのは、それ自体が気持ちいいものだが、そうした気持ちよさが、ビジュアル演出と効果音によって最大限高められている。

「超快適操作」→「ド派手演出」→「勝利」→「追加要素アンロック」! 次々押し寄せてくるこの連鎖がメチャクチャ気持ちよく、脳汁がドバドバ出てしまう。爽快感の暴力といえるほどの気持ちよさだ。

最近のフルプライスゲームは、ほとんどのゲームが一定のクオリティを超えており、どんなゲームをプレイしても、一定の面白さを味わえるように思う。その反面、「このゲームのことが頭から離れない、仕事が終わったらすぐあのゲームをプレイしたい!」と思うほどハマることは、個人的には少なくなった。

だが、本作はハマる。プレイしている間ずっと気持ちよく、もう、幸せを感じるレベル。超・多幸感が味わえるのだ。

「大乱闘スマッシュブラザーズ」のその先へ! 対戦ゲームからいかにストレスを取り払う?

筆者は先ほど、「1位をとるという勝利の気持ちよさ」と書いた。しかし、これは裏を返すと、「1位をとれない」というストレスが用意されているということでもある。

誰だって勝ったら気持ちいいが、負けたら悔しい。FPS、対戦格闘ゲーム、レースゲーム……あらゆるジャンルの対戦ゲームでは、「負ける」というストレスがつきものだ。「対戦」を前提にする以上、「負けのストレス」は必要悪といえる。

しかしながら、桜井政博はこれまで、この「負けのストレス」に対する改善を続けてきた。

(画像は「大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL」)

たとえば、桜井の代表作である「大乱闘スマッシュブラザーズ」は、対戦格闘ゲーム的なルールを持っている。しかし、その本質は、勝敗を競うことを前提とした競技的な対戦格闘ゲームへの明確なアンチテーゼだ。

対戦格闘ゲームをいわゆる「eスポーツ」のように競技的なものと捉えた場合、より上手いプレイヤーが勝つべきだろう。プレイヤーの腕前によって勝敗が決まるからこそ、「競技」は成立するのだ。運や偶然はなるべく影響すべきではない。

しかしながら「大乱闘スマッシュブラザーズ」は、ランダム出現するアイテムや、4人のプレイヤーによるバトルロイヤル形式といった要素を採用することで、意図的に運・偶然性を付加している。だからこそ、「大乱闘スマッシュブラザーズ」を競技として楽しみたいプレイヤーは、アイテム出現をオフにし、1vs1形式でプレイするのだ。しかし、「大乱闘スマッシュブラザーズ」の設計意図は、アイテム出現あり、4人バトルロイヤルという形式に込められている。

(画像は「大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL」)

運・偶然性が影響を与えれば、必ずしも上手いプレイヤーが勝つとは限らない。もちろん、上手なプレイヤーは勝ちやすいだろう。しかし、運や偶然性がからむと、ベテランプレイヤーだって新米プレイヤーに負ける可能性が出てくる。この結果、実力差の離れたプレイヤー同士で遊んでも、勝ったり負けたりといった状況が生じるのだ。

競技ではなく、純粋な娯楽として考えれば、「勝ったり負けたり」という状況が最も面白い。ずーっと負け続けるのがつまらないのは当然だとしても、ずーっと勝ち続けるのだって、別に楽しくはない。なぜなら、刺激がないからだ。

ということは、「競技」ではなく「娯楽」を前提にした場合。誰が遊んでも……それが実力の離れたプレイヤー同士であっても、「勝ったり負けたり」という刺激が発生するゲームこそが面白い対戦ゲームだといえないだろうか?

(画像は「大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL」)

「大乱闘スマッシュブラザーズ」は、こうした「誰が遊んでも勝ったり負けたりする」という課題に対し、ランダムに出現するアイテムや、4人バトルロイヤルという形式によって答えた。

また、見逃せないのが同作で導入されていた「世界戦闘力」だろう。

対戦ゲームには、自分の実力をはかる「ランクマッチ」がつきもの。「大乱闘スマッシュブラザーズ」シリーズではプレイヤーの実力を示す要素として「世界戦闘力」が導入されている。ただ一般的な対戦ゲームのランクシステムはトップからの順位という形式を採用しているのに対し、「世界戦闘力」は「自分がどのくらいの人数を上回っているのか」という形式。

トップからの順位という表現形式は、プレイヤーの実力を直接的に示している。実際の自分の強さをシビアに知ることは、競技的なゲームであれば必要不可欠だろう。

だが娯楽なら、必ずしも、自分の実力をシビアに把握する必要はない。むしろ、「自分も、それなりに強かった」という満足感の方が重要だろう。なぜなら、娯楽は、楽しむためにプレイしているのだから。

この点で、「あなたは50万位です」とシビアな実力を突き付けられても、満足感には繋がりにくい。場合によっては、「自分以上に上手いプレイヤーが50万人もいるなら、プレイを重ねてもそう大したランクには到達しないだろうな」というネガティブな気持ちを招いてしまうだろう。

一方、「世界戦闘力5000」という形式であれば、現実的にはそれほど高い順位ではなかったとしても、「自分は弱いから、プレイしても無駄だな」というネガティブな感覚は持ちにくい。何位なのかを競うのではなく、数値の増加を純粋に楽しめるというメリットが「世界戦闘力」にはある。

「勝ったら気持ちいいが、負けたらストレス」ではなく、「勝ったり負けたりという刺激が楽しい」という「大乱闘スマッシュブラザーズ」の方向性は、本作でも継承。そして、「負けのストレス」をさらに軽減する方向へ発展を遂げている。

まずは、本作において「世界戦闘力」的な指標として用意されている「世界勝利力」。これは、「自分の勝利数が、どのくらいの人数を上回っているのか」を示す数値だ。「勝率」ではなく「勝利数」なので、負けは一切関係ない。

また、「シティトライアル」モードの「スタジアム」において、4つのミニゲームから好きなミニゲームを選んで戦うという設計も、「負けのストレス」軽減に影響している。16人のプレイヤーが4つのミニゲームに分かれて戦うので、1回のゲームの勝者は4人。一見「バトロワ」的なゲームに見えるものの、「勝者は1人」というわけではないのだ。

仮に、自分と同じミニゲームを選んだプレイヤーがゼロだった場合も、「戦わずして完全王者」として勝利扱いになる。とことんまで、「負けのストレス」が対策されている印象だ。

そして何より、本作はプレイそのものが面白い。「超快適操作」→「ド派手演出」→「勝利」→「追加要素アンロック」という流れのうち、「超快適操作」→「ド派手演出」の時点で本作はかなり楽しいのだ。だから、勝っても負けても、「もう一回やろう!」となる。

「勝ったり負けたりという刺激が楽しい」という方向性を発展させたという意味では、本作は「大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL」の精神的続編と言ってもいいように感じた。

まぎれもなくNintendo Switch 2のキラータイトル! 本体を持っているなら買いの一作

ここまで、本作を「対戦ゲーム」という観点から見てきたが、本作にはソロモード「ロードトリップ」モードも用意されている。「ロードトリップ」モードは、3つのミニゲームから1つを選び、クリアすることでコースを進行していく……。ミニゲームの内容によって獲得可能な報酬が変わる、ローグライト的なモードとなっている。

「ロードトリップ」モードにはストーリーが用意されているため、ソロモードとして十分な満足感がある。「シティトライアル」モードの対戦だけでも十分満足度が高いので、本作はボリューム面も驚異的だ。

また、「ロードトリップ」モードはソロモードとして楽しいだけでなく、「シティトライアル」モードの練習として機能する点も素晴らしい。「シティトライアル」モードではさまざまなエアライドマシンを乗りこなさなければならないし、「スタジアム」ではさまざまなミニゲームをプレイすることになる。当然、はじめて扱うマシンや、はじめてプレイするミニゲームで勝利することは難しい。

この点「ロードトリップ」モードでは、強制的にさまざまなミニゲームをプレイすることになるし、さまざまなエアライドマシンを集めて、乗り換えていくことになる。このため、「ロードトリップ」モードのプレイが「シティトライアル」モードの練習に繋がるのだ。ソロモードを遊んでいると、自然と対戦モードの練習になるという理想的な構成が実現されていると感じた。

正直、ここまで触れてきた点だけで、十分本作は傑作だろう。しかし、本作はここまで紹介してきた「エアライド」「シティトライアル」「ロードトリップ」という3つのモードに加えて、ミニチュアになった「エアライド」コースを上から見下ろした視点で最大8名がレースで乱戦を繰り広げる「ウエライド」モードまで用意されており、とてつもないボリュームを誇っている。間違いなく「神ゲー」であり、Nintendo Switch 2を持っているなら、確実に「買い」。

ここまで書いてきた通り、一見レースゲームに見えるものの、「マリオカート」とは明確に方向性の異なるゲームなので、「マリオカート」を持っていても「買い」の一択。Nintendo Switch 2にとってのキラータイトルのひとつであることに間違いはないだろう。

(文/田中一広)

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