マンガ!アニメ!ゲーム!日本公認メディアアートの祭典『文化庁メディア芸術祭』国立新美術館で開催

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文化庁メディア芸術祭

マンガやアニメ、ゲームを含むメディアアートを広く作品を募集、展示する公募展『文化庁メディア芸術祭』が今月13日まで六本木の国立新美術館で行われている。この公募展はアート、エンターテインメント(ゲームはこの分野に含まれる)、アニメーション、マンガの分野で優れたメディア芸術作品を選定、一般に公開するというもの。主催は文化庁だ。会場は六本木にある国立新美術館。メディアアートの分野は作品数がかなり多いということもあり、公募となっている。14回目となる今回は49の国と地域から2645の作品の応募があり、各部門から選ばれた大賞、優秀賞、奨励賞、審査委員会推薦作品が今回展示されている。

文化庁メディア芸術祭

文化庁メディア芸術祭
http://plaza.bunka.go.jp/festival/

展示されていたいくつかの作品を紹介する。

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●マンガ部門
今回大賞を受賞したのは『ヒストリエ』。『寄生獣』という作品で有名な岩明均氏がデビュー以前から温めていたという歴史大作。原画の展示も行われていた。

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(C)岩明 均 / 講談社

自らの命と引き替えにロボットを操縦して戦う子どもたちの生と死を描く鬼頭莫宏氏の『ぼくらの』は優秀賞を受賞。

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(C)鬼頭 莫宏 / 小学館IKKI

その他の作品もバラエティ豊かで、読んでみるとついつい引き込まれてしまう。マンガ閲覧コーナーには受賞作品などが置かれ、読むことができるので、手にとってみて欲しい。

●アニメーション部門
大賞を受賞したのは湯浅政明氏の『四畳半神話大系』。アニメーションとマンガがミックスされたような、ちょっとレトロで不思議なTVアニメーションだ。

文化庁メディア芸術祭

(C)四畳半主義者の会

劇場上映作品や短編の作品の中で共に優秀賞を受賞したのは『Youtube』で約130万再生、『ニコニコ動画』で約54万再生され話題になった『フミコの告白』。これは大学生の石田祐康氏が友人と作ったという2分22秒の疾走感あふれる作品。こちらは『Youtube』や『ニコニコ動画』で確認できる。会場には作品紹介の映像が流れ、絵コンテなどが展示されている。

文化庁メディア芸術祭

(C)石田祐康

自主制作アニメ 「フミコの告白」 Independent production anime「Fumiko’s Confession」『Youtube』
http://www.youtube.com/watch?v=0QqT1P4VO30
自主制作アニメ 「フミコの告白」『ニコニコ動画』
http://www.nicovideo.jp/watch/sm8750089

●エンターテインメント部門
大賞を受賞したのは、Twitterアカウントで楽しめる『IS Parade』。『au』スマートフォンのプロモーションとして作られた。『Twitter』のIDを登録するとフォロワーがキャラクターになってパレードするというもの。なかなか楽しい。

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(C)KDDI株式会社

IS Parade 作者:林智彦 / 千房けん輔 / 小山智彦
http://isparade.jp/

Perfumeのプロモーションビデオで有名な関和亮氏のミュージックビデオ『サカナクション / アルクアラウンド』も優秀賞に選ばれていた。実際に並べられた言葉の間を歌いながら歩く。ちょっと動かしたり、視点の角度によって歌詞が見えてくる、そして分解されていく。その流れにゾクゾクする作品。

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(C)ビクターエンタテインメント株式会社 / 株式会社ヒップランドミュージック

サカナクション / アルクアラウンド 『Youtube』
http://www.youtube.com/watch?v=vS6wzjpCvec

同じく優秀賞に選ばれたYKBX氏の『amazarashi / 夏を待っていました』。歌詞も映像も明るくはないが、思わず引き込まれ、まるで短編映画を観ているような気持ちにさせられる。独特の世界観、YKBX氏の今後の作品が楽しみだ。

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(C)ソニー・ミュージックアソシエイテッドレコーズ

amazarashi / 夏を待っていました 『Youtube』
http://www.youtube.com/watch?v=9QnFFpyDGgs

審査委員会推薦作品には多数のテレビゲームが選ばれており、実際会場で遊ぶこともできる。そこはいいところだが、ゲームは導入部分など一部をプレイしてもなかなかその面白さが伝わりにくい。設定資料やキャラクターデザインのなど、ゲームをプレイする以外の展示があれば、よりその作品のすばらしさが伝わりそうな気がした。

文化庁メディア芸術祭

以前にも『ガジェット通信』で取り上げさせていただいたエウレカコンピューター(株)犬飼博士氏の『eスポーツグラウンド』が審査委員会推薦作品に選ばれていた。

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(C)エウレカコンピューター株式会社

この作品は床面に映し出されたゲーム画面の中に人間が入り込み、自分の体を使ってゲームをするというもの。今回の展示では誰もが知っている『ブロック崩し』『エアホッケー』がプレイできるように進化していた。『ブロック崩し』は一人でも遊ぶことができる。これはぜひ実際に体感してみてほしい。『eスポーツグラウンド』プラットフォームということで、今後も様々な形で応用・展開されていくことが期待されている。

eスポーツグラウンドウェブサイト
http://esportsground.com/

●アート部門
大賞の『Cycloïd-E』は可動範囲が直径10メートルにもおよぶという巨大な作品。スイスのMichel DÉCOSTERD氏とAndré DÉCOSTERD氏によるCod.Actというユニットのこの作品はサテライト会場である東京ミッドタウン ガレリアB1Fアトリウムに展示されているので見逃さないように注意。※展示期間は11日まで。

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(C)Cod.Act

優秀賞を受賞したクワクボ リョウタ氏の『10番目の感傷(点・線・面)』。静けさとゆっくりと流れる時間が好きな人はぜひこの作品をみてほしい。どこにでもあるものが生み出す光と影がつくりだす空間つい時間を忘れて浸ってしまうだろう。

文化庁メディア芸術祭

(C)クワクボ リョウタ

同じく優秀賞の『The EyeWriter』は病気で体が麻痺(まひ)したアーティスト『TEMPT1』が再び絵を描けるようにとZach LIEBERMAN、Evan ROTH、James POWDERLY、Theo WATSON、Chris SUGRUEなどアーティストや技術者を中心とした多くの人々が参加、目の動きだけで絵が描ける装置を共同開発した希望と可能性を感じる作品。通常100万円くらいするアイ・トラッキング装置を2万円で制作、開発した専用ソフトウェアはオープンソースとして公開されている。実際に試してみたが、目の動きだけで、文字をタイプし、コンピュータがその文字を読み上げることができる。絵を描くのは少し練習が必要だが、可能だ。

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(C)Tempt1, Evan Roth, Chris SUGRUE, Zach Lieberman,Theo Watson and James Powderly

審査委員会推薦作品『MindBox』はChristian GRAUPNERによる人間の映像を使ったスロットマシン。シニカルな説明がついていたが、かなり楽しめる。

文化庁メディア芸術祭

(C)Humatic GmbH Berlin, Artist:Christian GRAUPNER in collaboration with Roberto ZAPPALÀ, Norbert SCHNELL& Nils PETERS

審査委員会推薦作品『百年海図巻』猪子寿之氏による100年後の予測数値に基づいて上昇していく海面を描いたという昔の絵巻のような作品。区切られた展示スペースの中に身をおいて作品を眺めていると、別の世界に入り込んでしまった気持ちになる。

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(C)チームラボ株式会社

審査委員会推薦作品『The Final Media DOMMUNE』。これもアート部門なのだ。本当に幅広い。

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(C)UKAWA NAOHIRO (MOMNDAD PRODUCTIONS)

●学生CGコンテスト
会場内では学生CGコンテストの受賞作品も同時に展示されていたが、インタラクティブ部門の作品がなかなか面白かった。

・第16回学生CGコンテスト
http://www.cgarts.or.jp/scg/2010/index.html

最優秀賞は情報科学芸術大学大学院の須木じゃらし氏によるWifiでデータをやりとりし、直接接触していなくても倒れていくドミノ『エスパードミノ』。これは欲しくなった。

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エスパードミノ
http://www.cgarts.or.jp/scg/2010/prize/int_p1/index.html

関西学院大学大学院の神田竜氏と岩野成利氏による作品は『九i九i九(つくもあいきゅー)』。長年愛用されたり愛着もって使われたり、逆に粗末に扱われたりした「物」が妖怪になるという伝説があり、その妖怪を「九十九神(つくもがみ)」という。次世代の『iPad』が発売されると旧製品は使われなくなるだろうということで、『iPad』を「九十九神(つくもがみ)」ととらえて作ったという。

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『九i九i九(つくもあいきゅー)
http://www.cgarts.or.jp/scg/2010/prize/int_p3/index.html

エンターテインメント賞を受賞した慶應義塾大学大学院の高橋征資氏、堅太太郎氏、岡田泰三氏、高橋宣裕氏、公文悠人氏、竹田周平氏、井出陽子氏による『今世紀マシトミン ~筋肉団の野望~』映像作品だが特別に実演をしてくれた。筋肉と技術が対決するインタラクティブヒーローショーということだが、このパフォーマンスはこどもたちに大人気のようだ。

文化庁メディア芸術祭

『今世紀マシトミン ~筋肉団の野望~』
http://www.cgarts.or.jp/scg/2010/prize/int_p7/index.html

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ピカソ、ゴッホ、ルノワール、ルーブル美術館、オルセー美術館、ポンピドー・センターなど、世界の名だたるアーティストや美術館の作品を展示してきたこの場所で、マンガやアニメやゲームが展示されるということがとても面白い。多様な作品が展示されており、かなり楽しめる展覧会になっているが入場は無料。普段美術館などに行かないという方も、作品が展示されている様子を見に訪れてみてほしい。

本屋やレンタルショップ、インターネット上で確認ができる作品も多い。期間中に開催されるシンポジウムは『Ustream』で配信されるとのこと。会場に出かけることが難しい方は受賞作品をチェックしてよう。

この公募展は実績がなかったとしても、大きな可能性や面白さを含む作品がどんどん選ばれている。メッセージ性の高い作品も多い。今後もたくさんの応募が集まり、マンガやアニメやゲームなどを含むメディアアートの可能性を広げ、すばらしい展示を見せて欲しいと思う。

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『文化庁メディア芸術祭』受賞作品展
会場:六本木・国立新美術館
開催期間:2/2(水)~2/13(日) 10:00~18:00 ※金は20:00まで 2/8(火)休館
入場料:無料
http://plaza.bunka.go.jp/festival/
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