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都市生活者の腸内フローラをアフリカ原住民と比較してみたら

都市生活者の腸内フローラをアフリカ原住民と比較してみたら

今回は神無久さんのブログ『サイエンスあれこれ』からご寄稿いただきました。

都市生活者の腸内フローラをアフリカ原住民と比較してみたら
昨今、現代人の間には、肥満、食物アレルギー、炎症性腸疾患など現代病と呼ばれる様々な疾患がじわじわと広がりをみせていますが、最新の研究結果によれば、これら疾患の原因は、現代人の食生活や衛生環境の変化によってもたらされた腸内フローラの変化で説明できるかもしれません。

腸内フローラとは、我々の腸の内部に生息している多種多様な腸内細菌 *1 群が作り出す一種の生態系のようなもので、我々の摂取した食べ物の消化を助けてくれたり、外部から腸内に進入した病原細菌の増殖を抑えたりすることで、腸内の恒常性維持に役立っています。そして、今からおよそ1万年前、ヒトが定住、農耕、牧畜生活を始め、その食生活が食物繊維中心から動物性タンパク質中心へと変化していく中で、この腸内フローラも少しずつ変化していったと考えられています。
*1:「腸内細菌」フリー百科事典『ウィキペディア』参照
http://ja.wikipedia.org/wiki/腸内細菌

さらに、20世紀の公衆衛生の進歩や抗生物質の発見は、この腸内フローラの変化にさらに拍車をかけました。これと時をほぼ同じくして、肥満や食物アレルギー、炎症性腸疾患が増え始めた(出典 *2)ことは、腸内フローラの変化とこれら疾患の間の関連性を示唆していましたが、実際のところは、肥満以外については、ほとんどわかっていませんでした(腸内フローラと肥満の関連はこちら *3 )。
*2: 「Who are we? Indigenous microbes and the ecology of human diseases」Martin J Blaser 2006 October; 7『EMBO reports』
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1618379/?tool=pubmed

*3: 「太っている人に朗報・あなたは何も悪くない」2010年4月19日 『サイエンスあれこれ』
http://blog.livedoor.jp/science_q/archives/1122697.html

そこで今回、アメリカ科学アカデミー紀要の8月2日付けオンライン速報版に掲載された論文 *4 では、現在も初期農耕生活を維持しているアフリカ原住民の健康な子供の腸内フローラを、典型的な都市生活を送っているイタリアの健康な子供の腸内フローラと比較し、両者にどのような違いがあるのかを調べました。
*4:「Impact of diet in shaping gut microbiota revealed by a comparative study in children from Europe and rural Africa」June 30, 2010 『PNAS』
http://www.pnas.org/content/early/2010/07/14/1005963107

その結果、最も大きな違いは、高食物繊維・低カロリー食で育ったアフリカ原住民の子供の腸内フローラでは、グラム陰性細菌であるバクテロイデス門 *5 に属する細菌が優勢だったのに対し、低食物繊維・高カロリー食で育ったイタリアの子供では、グラム陽性細菌であるフィルミクテス門 *6 (低GC含量とグラム陽性に特徴付けられる真正細菌の門である)に属する細菌が優勢な点でした。この結果は、低カロリー食によって適正体重を維持した場合、バクテロイデスがフィルミクテスより優勢な腸内フローラになるというこれまでの研究結果*7を裏付けています。つまり、腸内フローラと高カロリー食による肥満の危険性との間には確かな関連性があったというわけです。
*5:「バクテロイデス門」フリー百科事典『ウィキペディア』参照
http://ja.wikipedia.org/wiki/バクテロイデス門

*6:「フィルミクテス門」フリー百科事典『ウィキペディア』参照
http://ja.wikipedia.org/wiki/フィルミクテス門

*7:「Human gut microbes associated with obesity」 21 December 2006 『nature』
http://www.nature.com/nature/journal/v444/n7122/full/4441022a.html

2つめの大きな違いは、アフリカ原住民の子供の腸内フローラにのみ、食物繊維から短鎖脂肪酸を合成できる能力の優れた細菌種が見つかり、実際糞便(ふんべん)中に検出されたこれら短鎖脂肪酸量もイタリア人の子供と比べて有意に高かったという点です。これらの細菌種によって作り出される短鎖脂肪酸には、腸の炎症を抑える働きが知られており(出典 *8)、おそらくこれが、アフリカ人に炎症性腸疾患がほとんどみられない(出典 *9)原因ではないかと推測しています。
*8:「old wine in new bottles?」2004 Sep 『PubMed』
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15295277

*9:「Epidemiology of large bowel disease: the role of fibre」 『CAMBRIDGE JOURNALS』
http://journals.cambridge.org/action/displayFulltext?type=1&fid=655388&jid=PNS&volumeId=32&issueId=03&aid=655380

最後に、アフリカ原住民の子供の腸内フローラは、イタリア人の子供と比べて、多様な細菌種から構成されていることがわかりました。これは、病原菌に対する抵抗力を高めるとともに、無害な異物に対する過剰な免疫反応を抑制することで、食物アレルギーなどを防いでいると論文著者らは考えているようです(出典 *10)。

以上により、高カロリー食による肥満のなりやすさや、食物アレルギー、炎症性腸疾患の罹(かか)り易さは、腸内フローラを構成する細菌種と深い関連があり、炎症性腸疾患に関しては一部そのメカニズムも明らかになったわけですが、今後は、アフリカ原住民の食料とイタリア人の食料を互いに交換することで、遺伝的要因がどこまで腸内フローラの違いに関与しているのか(いないのか)を知ることが重要になってくると、この分野の他の研究者らは考えているようです(出典 *11)。
*10 *11:「Western Diet Tied to Intestinal Disease and Allergies」 by Michael Price on August 2, 2010 『Science』
http://news.sciencemag.org/sciencenow/2010/08/western-diet-tied-to-intestinal-.html

執筆: この記事は神無久さんのブログ『サイエンスあれこれ』からご寄稿いただきました。

文責: ガジェット通信

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