宇多田ヒカル本人も「涙がとまらなかった」話題のカバーアルバム制作秘話! 同発のハイレゾ音源へのこだわりも
iTunesのアルバムランキングで1位を獲得、発売直後からはやくも話題沸騰の「宇多田ヒカルのうた -13組の音楽家による13の解釈について-」。井上陽水、岡村靖幸、吉井和哉ら豪華アーティストから、AI、椎名林檎、浜崎あゆみといった歌姫たちまで個性豊かなメンバーが勢揃いしています。
また、同日には「Utada Hikaru SINGLE COLLECTION VOL.1」および「Utada Hikaru SINGLE COLLECTION VOL.2」のハイレゾ配信も開始。そのハイレゾ音源が収録された宇多田ヒカル本人監修による、くま型USBがキラリとヒカルスペシャルなアイテム「Utada Hikaru SINGLE COLLECTION VOL.1+2 HD」も発売されました。
このデビュー15周年企画の発案者がユニバーサルミュージック VirginRecordsの制作A&R沖田英宣さん。「このアルバムは音楽家たちの自由な創造力が満ち溢れながら、その創造力を触発する宇多田ヒカルのうたに秘められた“何か”が重なりあった瞬間の記録です」とコメントしているとおり、これは単なる一枚の音楽アルバムを超えた、15年の軌跡。今回は沖田さんに本企画のきっかけや制作へのこだわりなど色々とお話を伺ってきました。
―まず今回の宇多田ヒカルデビュー15周年の企画がどの様なきっかけで立ち上がったのか教えてください。
沖田:宇多田ヒカルは今年デビュー15周年というアニバーサリーイヤーを迎えたわけですが、ご承知のとおり彼女は今一時活動休止中です。そんな中、ずっと応援し続けてくれているファンの方にむけて何かお礼をしたいなと考えていて。
今年の3月にファーストアルバムである『First Love』のデラックスエディションとして、ハイレゾ音源を発売しました。宇多田ヒカルの楽曲のほとんどの録音をしている、Bunkamura Studioでハイレゾ音源を視聴した時に、スピーカーの向こう側に空間が出来た様な広がりを感じて、驚いたんですね。これは未来のあるフォーマットだなと。
―宇多田さんが好きな“くま”の型をしたUSBメモリーというのもファンにとっては嬉しい限りです。
沖田:アーティストの表現って、音だけでは無くパッケージにもつまっていますよね。今回のハイレゾ音源のパッケージをどんな形にしようかと考えていた時、ディスクメディアに収まるデータ量では無いのでまずUSBにしようと。そしてデザインを宇多田ヒカルと一緒に作り上げていったのですが、まさに彼女らしい「ゴージャスだけど、どっかおかしい」物に仕上がりました。
―「ゴージャスだけど、どっかおかしい」。まさに宇多田ヒカルさんですね! ジュエリーの様な高級感があって女心をくすぐられました。
沖田:そうそう、まさにジュエリーの様に思っていただきたかったんです! このジュエリーの様に見えるデザインは宇多田ヒカル完全監修で、USB本体の色にしても7、8バリエーション作りましたし、ケースも宝石箱のメーカーさんと交渉して。
―ちょっとそもそもの話になってしまうのですが、沖田さん自身ハイレゾ音源にどの様な未来を感じていらっしゃいますか?
沖田:コンサートは前列がSS席やS席でチケット代が高く、2階席などステージから離れていくに従って価格が下がっていくじゃないですか? 今後。音源の提供にもこういった事があっていいんじゃないかと思っています。ステージに近いところがハイレゾ、中央がCD、2階席が配信、といった感じですね。それは、ハイレゾが偉くて配信がダメだというわけでは無くて、音楽をそれぞれの楽しみ方で聴いて欲しい。スマホでダウンロードしてすぐ聴いて踊ってというのも良いし、家でじっくりハイレゾ音源を楽しんでも良いし、と。
―このハイレゾ配信と同じ日に発売となりました、ソングカバーアルバムについてですが。これはもう企画が通ったこと自体がすごい! と感動してしまいました。
沖田:ありがとうございます。この4年間宇多田ヒカルの作品が世に出ていない状況で、宇多田ヒカルの音楽を知ってもらう為にどんな方法があるかなと考えました。そこで、“作家”宇多田ヒカルの作品を、オリジナリティー溢れる音楽を作り続けているアーティストの皆さんにカバーしてもらおうと。それをヒカル本人に相談したら「いいじゃん!」ってノリだったので、この企画が実現しました。
―井上陽水さんに岡村靖幸さんに、tofubeatsさんの様な、宇多田ヒカルデビュー当時に小学生だったという方まで個性豊かなアーティストが集結しました。
沖田:勝手な想像でしかないのですが、宇多田ヒカルと同じ様に音楽への取り組み方がストイックな方々をリストアップしていったんです。そうやってアーティストの皆さんの名前をつらつら書いていくと、自然と歌って欲しい曲も浮かんできたんですね。そこから実際のお願いに。
皆さんそれぞれが声に独特のスタイルを持っているので、その声がどの言葉を歌ったら響くのかという事を考えました。例えば吉井和哉さんの『Be My Last』ならば、「母さんどうして」って歌える男性のロックシンガーって日本に吉井さんしかいないだろうと。言葉と声の結びつきをイメージして依頼しましたが、予想をはるかに上回る素晴らしい個性的な作品に仕上げてくださって、完成した作品が届く度に感動していました。
―どの方も本当にアレンジと表現方法が個性的で面白くて素敵で……。でも特に、同じ時代を駆け抜けてきた、お互い世間に“歌姫”と言われてきた浜崎あゆみさんが参加された事は大きな驚きでした。
沖田:そうですね。浜崎あゆみさんは企画の当初からぜひ参加して欲しいなという想いがありました。ヒカル本人も、浜崎さんが歌ってくれたらすごく嬉しいなあと言っていて。そこで担当ディレクターの方にお願いにいったらすごく面白がってくれたのと、浜崎さんご本人もぜひ! とおっしゃってくれて。改めて、彼女のセルフプロデュース能力のスゴさを思い知りました。
同じ時代を生きたアーティストとして、ライバルとして比較される事もありましたが、それは90年代最後のCDが一番売れたお祭りみたいな時代の中心にいただけで、お互いはそれぞれ一生懸命にやっていただけ。浜崎さんが参加してくださった事によって、宇多田ヒカルの歩んできた15年の時代性までもが浮かび上がるような気がしています。
―宇多田さんご本人はこのアルバムを聴いて、どんな事をおっしゃっていましたか?
沖田:一曲目から順番に聴いていって、途中から涙がとまらなくなったそうです。自分の作った作品を皆さんが真剣にカバーしてくれて、こんなに幸せな事は無いと。彼女らしい例えですけど、「自分の子供を親戚の家に預けたら、その家に馴染んじゃって帰りたく無いって言ってるみたいな感じ」と言っていましたね(笑)。
参加していただいたすべての音楽家のそれぞれの解釈によって、宇多田ヒカルが作ってきた音楽に込められたメッセージを改めて皆さんに感じてもらえるんじゃないかと思っています。ぜひ、じっくりと一枚を通して味わってください。
―今日はどうもありがとうございました!
宇多田ヒカルデビュー15周年特設サイト
http://po.st/utada15th
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