【モゲラプロジェクト】Flashゲームクリエーターインタビュー powered by 0stage 第7回:ババラ(前編)
Flashゲームクリエーターへのインタビュー第7弾は、ババラさんのシリーズがスタート。世界的に注目される人気クリエーターが、どのような道をたどってゲームを制作してきたのか。その来歴を語っていただきます。(編集:未来検索ブラジル、インタビュー・写真:0satage 星野健一)
クリエーター:
ババラ
『BABARAGEO』(http://babarageo.com/)で作品を発表するクリエーター。ドット絵をフィーチャーした、レトロゲーム調の作風が特徴。アクションRPGの『ゼノレダ』やシューティングゲーム『ウチューフォース』で注目を集め、2007年に発表したアクションRPG『太くて長いオレの○○○』、2008年に発表した続編『太くて長いオレの○○2』を世界的にヒットさせた。
BABARAGEO
http://babarageo.com/
■個人の活動としてゲームを発表
星野 お仕事のことをお伺いしたいんですけど、ババラさんは仕事と自サイトの展開っていうのは、特に関係はないんですか?
ババラ わりとゲーム業界周辺で仕事していたこともありました。
新卒の就職活動のときにゲーム会社を受けて、最終面接までいったりしたんですけど。
夏場で暑くって行くの嫌になってドタキャンしたり(笑) 。
星野 ウソ(笑)。
ババラ でもまあ、そこではないんですけど、別のゲーム会社の面接はちゃんと行って、就職はしました(笑)。
星野 よかった。
ババラ ただ、ゲーム開発じゃない別会社にまわされて、そこが調子悪くなってつぶれちゃったんですよ。
これでゲーム開発に戻れるかと思ったら、「帰ってきても席ないよ」って感じで放り出されちゃって。
星野 おー、厳しい話ですね。
ババラ それでプラプラしてたら、友だちからゲーム雑誌の編集の紹介があって、そこで半年くらい雑誌つくってました。
星野 どんな雑誌ですか?
ババラ 『バーチャファイター2』で格ゲー(格闘ゲーム)ブームだったころ、アーケード雑誌が雨後の竹の子みたいに発行されてたときの1誌です。
で『バーチャファイター2』の技表を掲載し終わったら、載せるものなくなっちゃったんで。
休刊になったみたいです。
そして、その後3社ぐらい変わって今に至る、と。
星野 結構、波乱万丈な感じがしますね。
ババラ でも最初がマーケティングみたいな仕事だったんで、雑誌以外はずっとマーケティング担当みたいなかたちでやってます。
星野 マーケティング担当なんですか?
プログラマとか技術系ではないんですね。
ババラ マーケティングと広報ですね。
星野 ちょっと意外でした。
ババラ 技術系じゃないんで、スクリプトとか本職の人が見ると「なんじゃこりゃ」って感じだと思いますよ。
■BASICからHyper Cardへ
星野 Flashを使う前からゲームは創っていたんですか?
ババラ 創ってましたよ。
私のパソコン遍歴が珍妙なんですけど(笑)。
最初に買ったのがPC-6001だったんですよ。パピコン。
でもベーシックしか覚えなくてマシン語使えなかったんで、パピコンでは大したもの創ってなくて。
その次に買ったのが『AppleII』で。
星野 おおー。
ババラ でもそれは『Wizardry』がやりたくて買ったものなんですけど(笑)。
そのおかげで日本で流行る遥か前から『Wizardry』をプレイしてました。
その後はMac使いになっちゃったんで、プログラム環境的には厳しいところになっちゃって。
それでMacではHyper Cardでゲーム創ってて、そのときに創ったのが『わんわんキャノン』だったんですよ。
星野 『わんわんキャノン』はFlash Lite(編集部注:Flashの携帯電話向けプレーヤー)版の前にHyper Card版がオリジナルであったんですね。
『太くて長いオレの○○○』にも出てくる、キャラクターのWAN-WANもずいぶん長い付き合いなんですね。
ババラ そうですね。
Hyper Card の後にReal Basicっていう開発環境を使ってみたんですけど、これが全然使いこなせなくて(笑)。
それでなんか簡単にゲームつくれるツールはないかと思って、探していたら『Klik&Play』っていう富士通が出してた簡単ゲーム作成ツールを見つけたんです。
それで創った『わんわんキャノン』が今でも『Vector』で公開してますよ。
星野 それ見ました。Mac版だったんでプレイできなかったんですけど。
なぜMac版!と思いました(笑)。
そういう経緯だったんですね。
ババラ 公開してちょっとの間は人気があって、ランキングで2位とかになったりもしてました。
でも『Klik&Play』も、大きなアプリケーションになると、だんだん動作が怪しくなってきちゃって、ちょっと使うの厳しいなぁと思ってたところでようやくFlashにめぐり合って。
■MADが創りたくてFlashと出会う
星野 Flashに出会ったのはいつごろですか?
ババラ Flash5から始めたんで、2000年ごろ。
最初はゲーム創るつもりじゃなくて、『ドラえもん』のMADを観て「オレも創るー」って思って、アキバ行って買ってきたんです。
でも、その時は足を動かしながら歩くアニメーションが自分でうまく創れなくて、「これじゃだめだー」と思って。
星野 また波乱が(笑) 。
ババラ 今なら余裕で創れるんですけど(笑)。
それでアニメーションは諦めて参考書をみてたら、アタリ判定とキャラ移動が載ってて。
「これならゲーム創れんじゃないの?」って思って。
で、やってみたらできちゃった。
星野 最初に創ったのが『ウチューフォース』だったんですか?
ババラ 最初に公開したのは『ウチューフォース』なんですけど、その前に『ゼノレダ』の試作をしていました。
星野 『Internet Archive』の記録では一番最初に公開されてたのは『ウチューウォーズ』でしたね。
ババラ ドメインは『ウチューウォーズ』の公開用に取ったんですよ。
星野 『ウチューウォーズ』のトップ画像とかもババラさんなんですか?
ババラ トップ画像は知り合いのマンガ家さんに描いてもらったんですよ。
ゲーム中の絵は自分で描いてます。
試作してみてゲームっぽいのができて、『ウチューウォーズ』がいけそうな感じだったんで。
せっかくだからドメイン取ろうってなって今に至る。
■「ババラジオ」と読むのが正解
星野 サイト名の『BABARAGEO』はなんと読むのが正解ですか?
ババラ 「ババラジオ」です。なんで「ジオ」かっていうと、ただ単に最初『ジオシティーズ』に置いていたからで(笑)。
『ジオシティーズ』ができて無料のサーバスペースが使えるっていうんで、じゃあ使ってみるかってなったときに、『ジオシティーズ』のババラのサイトだから『BABARAGEO』だろうって。
だから「ゲオ」じゃないです(笑) 。
星野 僕も結構「ゲオ」読みしてましたね(笑) 。
ババラ 『ジオシティーズ』の「ジオ」。
『NEO-GEO』の「GEO」。
星野 『NEO-GEO』は関係ないですよね。
ババラ 関係ないです(笑) 。
星野 『BABARAGEO』のサイトがいつからあるんだろうと思って、『Internet Archive』で調べてみたら、babarageo.com としては2004年からあるみたいですね。
ババラ ドメインを取ったのがその年だと思います。
『ジオシティーズ』の後に『Linkclub』っていう、Macの雑誌によく広告が載ってたレンタルサーバを借りていて、それは多分1999年くらいから。
星野 うわー、『ジオシティーズ』のサービスってそんな前からあるんでしたっけ。
ババラ 『ジオシティーズ』は1997年くらいですね。
星野 babarageo.com での公開当初のアーカイブを見たら、『わんわんキャノン』が『Ynot Flash Lite AWARD 2003 for 505iシリーズ』(関連記事)でゲーム部門賞を取りましたっていう話しが載ってて。
ババラ じゃあ、わりともうFlash使いまくるようになってからドメイン取ったんですね。
Flash Lite がドコモの携帯で使えるようになったのがそのころで、Flash Lite で携帯はいけるんじゃないかっていうんで創ったのが『わんわんキャノン』だったんです。
ですが、Flash Lite があまりにもひどい仕様だったんで、一個だけ創ってやめちゃいました。
■Flash Liteには苦戦も
星野 衝撃の仕様でしたよね(笑) 。
ババラ ゲーム創るにはとんでもなかったですね。
でも、Flash Lite で苦労したおかげで創れたゲームとかも結構あるんで、マイナスではなかったです。
星野 僕も携帯対応しようと思って触ってみたことがあったんですけど。
結論としては、「みんなよくFlash Lite でゲーム創ってるな」という感じでしたね(笑)
ババラ Flash Lite 2.0 になってからはまだましですけど、1.1 までとかはクリエーター殺しですよね(笑)。
『デザヲ』とかはもともと携帯用に創ってたゲームなんで、Flash Lite で動くんですよ。
星野 そういえばサイズも携帯向けでしたね。
ババラ ボタンも1個しか使わないし。
(全段敵キャラのステージが出現)
うわ、なんだこんなのクリアできないジャン(笑)。
これ、どうやって登録したんだろう。 (編集部注:ユーザーが登録したステージをプレイできる)
星野 クリアできないと登録できないんですか?
ババラ エディットしたステージの最後までプレイしてはじめて登録できるんで、クリアできないステージは登録できない。
星野 なるほど。
ババラ だからこれは不正な手口で登録したのではないかと(笑) 。
星野 インタビューの最中にすごいものが見つかってしまいました(笑)。
■ブログでユーザーの声を集める
星野 サイトのトップに載せる前に、試作の段階でブログに公開しているそうですね。
ババラ 開発状況をブログで経過報告みたいな感じで公開して,それをプレイしてもらって修正・デバッグしてます。
星野 多くの意見をもらえるということは、ファンというか楽しみにしてくれているプレイヤーがたくさんいるということですよね。
ババラ そうですね。
サイト設立のころからずっと遊んでくれてる人たちもいるし、最近は小中学生で毎日のぞいてくれている子たちがいて、たくさん遊んでくれてます。
星野 アクセス数ってどのくらいなんですか?
ババラ 全部はカウントしてないんですけど、トップに公開しているゲームのページだけだと1ヵ月で30万件くらい。
星野 そうすると、トップページとブログとあわせると100万とかいっちゃいそうですね。
ブログのコメントを通したユーザとのやり取りが開発の中で重要になってくるんですね。
いろんな意見があると思うんですけど、振り回されたりすることはないんですか?
ババラ
どう創っていきたいかというのは自分のなかにあるんで、取り入れる意見と取り入れない意見はやっぱりあります。
(第8回に続く)
0stage 星野健一 プロフィール:
ゲーム業界で開発に携わりながら個人でもウェブゲームを製作。
「オフィちゅラブ」で「OCNゲームxなつゲー Flashゲームコンテスト」グランプリを受賞。
現在は個人や同人で活動するクリエイターや、それを目指す人たちをサポートするためのウェブサービス提供に向けて活動中。
ブログ:
0stage-blog
※このインタビューの全文は、0stage(http://0stage.jp/)でご覧いただけます。
■関連記事
【モゲラプロジェクト】Flashゲームクリエーターインタビュー powered by 0stage 第1回:石井克雄(前編)
【モゲラプロジェクト】Flashゲームクリエーターインタビュー powered by 0stage 第4回:宮澤卓宏(前編)
携帯ゲームで年収1000万円!個人クリエーター護美童子インタビュー
宮原俊介(エグゼクティブマネージャー) 酒と音楽とプロレスを愛する、未来検索ブラジルのコンテンツプロデューサー。2010年3月~2019年11月まで2代目編集長、2019年12月~2024年3月に編集主幹を務め現職。ゲームコミュニティ『モゲラ』も担当してます
ウェブサイト: http://mogera.jp/
TwitterID: shnskm
- ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
- 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。