スタンフォードの心理学教授に学ぶ子供のほめ方

スタンフォードの心理学教授に学ぶ子供のほめ方

この記事は宗像 淳さんのブログ『海外ウェブ情報満載のイノーバ・ブログ』からご寄稿いただきました。

スタンフォードの心理学教授に学ぶ子供のほめ方

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最近、世の中的に育児がブームである。僕の周りでも育児をする男性、イクメンが増えているし、親ばかを売りにする親ばか芸人も増えている気がする。
僕自身も、5才と3才の娘がいるのだが、子どもがいる親が共通して抱えている悩み、それは、子どもをどうやって育てて行くのか?という事だろう。

一般には、ほめて育てて行くのが良いけれど、ほめると調子に乗ってしまうし。やはり、昔のように厳しく育てるのがいいのだろうか?などと親の悩みは尽きない。

実は、このような育児の悩みを長年研究しているスタンフォードの心理学の教授がいる。キャロル・S・ドゥエック(Carol S. Dweck)という人だ。以下、彼女の書籍(原著 Mindset 邦題『「やればできる!」の研究』*1)から、子供のほめ方のコツを紹介したい。

*1:「やればできる!」の研究―能力を開花させるマインドセットの力 [単行本]
http://www.amazon.co.jp/dp/4794216807

子供には2種類のタイプがいる

彼女が、子供を対象に研究を進める中で、気付いた事があった。それは、学ぶことが大好きで何にでも挑戦しようとする子供がいる反面、失敗する事をおそれ、新しい事に挑戦するのを避ける子供がいるという事である。

そして、彼女が行った研究で、衝撃的な事実がわかった。彼女が発見したのは、親が子供にどのようにほめるかで、子供達の性格(努力型か、失敗回避型か)が変わってくるというのである。

子供のほめ方が性格にどう影響を与えるのか?

彼女は実験を行った。
思春期初期の子どもたち数百人を対象に実験を行った。まず、生徒全員に、知能検査のかなり難しい問題を10問やらせた。ほとんどの生徒がまずまずの成績。終わった後で、ほめ言葉をかけた。

ほめるにあたっては生徒を二つのグループに分け、一方のグループではその子の能力をほめた。「まあ、8問正解よ。良く出来たわ。頭がいいのね」といった具合。
もう一方のグループでは、その子の努力をほめた。「まあ、8問正解よ。良く出来たわ。頑張ったのね」といった具合。

グループ分けをした時点では、両グループの成績はまったく等しかった。
そして、子供達に、新しい問題を見せて、新しい問題に挑戦するか、同じ問題をもう一度解くのか、どちらかを選ばせるという実験を行った。すると二つのグループの間で、明確に差が現れた。

まず、頭の良さをほめたグループは、新しい問題を避け、同じ問題を解こうとする傾向が強くなった。ボロを出して自分の能力を疑われるかもしれないことは、いっさいやりたがらなくなった。一方、努力をほめられた生徒達は、その9割が、新しい問題にチャレンジする方を選び、学べるチャンスを逃さなかった。

つまり、子供が努力した事をほめると、子供は努力する事に喜びを感じるようになるのだ。

子供が難しい課題と、どう向き合うか?

さらに、生徒全員になかなか解けない難題を出した。
頭の良さをほめられたグループは、難問を解くことにフラストレーションを感じ、自分はちっとも頭が良くない、こんな問題を解いても楽しくない、と思うようになった。そして、自分は頭が悪いのだと考えるようになった。

努力をほめられたグループは、難問をだされてもいやになったりせず、むしろ、難しい問題の方が面白いと答える子どもがおおかった。なかなか解けない問題があったとしても、イライラしたりせず、「もっと頑張らなくっちゃ」と考えたのだ。

すなわち、努力をほめられた子供は、積極的に難しい事に挑戦できるようになるのだ。

ほめ方は知能にも影響を与える

その後のテストでも驚くべき結果が出ている。
難問が出された後、頭の良さをほめたグループは、成績ががくんと落ち、再びやさしい問題がだされても回復しなかった。自分の能力に自信がなくなり、スタート時よりも更に成績が落ちてしまったのだ。

一方、努力をほめたグループの出来はどんどん良くなっていった。難問に挑戦した事で、スキルに磨きがかかり、その後、ふたたびやさしい問題がだされたときいは、すらすら解けるようになった。

ドゥエック教授の研究によると、以下のような事が判っている。
能力をほめると生徒の知能が下がり、努力をほめると生徒の知能が上がった事になる。

子供をほめる時のコツ

彼女によると、子供をほめる時には、コツがある。
このようなほめ方をしてはいけないそうだ。

「そんなに早く覚えられたなんて、あなたは本当に頭がいいのね!」
「マーサ、あの絵を見てごらん、あの子は将来のピカソではないだろうか?」
「あなたはすごいわ。勉強しなくてもAが取れたんだから」

励ましているつもりが、違うメッセージを送っている。
子供達が受け取るのは、次のようなメッセージだ。

はやく覚えられなければ、頭が良くないんだ。
なにか難しいものを描こうとしないと、ピカソとは思ってもらえないんだ。
勉強しない方がいい、さもないと、すごいと思ってもらえない。

逆にこのようなほめ方をした方が良い。

「ずいぶん長い時間、一生懸命に宿題をやってたな。集中して終わらせる事が出来てえらいぞ」
「この絵、きれいな色をとても沢山使って書いたのね。色の使い方の事を話してくれる?」
「この作文には自分の考えが書いてあるね。シェークスピアが別の角度から見えてくる」
「心をこめて弾いてくれて本当にうれしいわ。ピアノを弾いている時ってどんな気分?」

すなわち、ほめるときは、子供の能力をではなく、努力して成し遂げた事をほめるべきだという事である。

能力をほめるのをやめよう

以上の通り、子供をほめる時は、能力をほめては行けない。努力をほめないといけないのだ。
当然ながら、親としては、自分の子供に、学ぶ事が好きな子供に育って欲しいと思うはずだ。
更には、先行きの見えない社会の中で、自分の生き方を切り開いていけるように育って欲しいと願っているのではないだろうか?

今回の研究は、学ぶのが好きで、しなやかに生きていく子供を育てるヒントになるはずだ。参考にしてほしい。
どうだろうか?興味を持って頂けただろうか?今後も、このブログで色々と紹介して行きたいと思っている。

執筆: この記事は宗像 淳さんのブログ『海外ウェブ情報満載のイノーバ・ブログ』からご寄稿いただきました。

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