組織の「外から変える」ではなく「中から変わる」―永和システムマネジメント平鍋健児と、LINE横道稔が語る“アジャイル開発”の本質
「ソフトウェア開発は仕様書通りにさえやればいい」そんなふうに思っていませんか?顧客、企画者、開発者、すべてが一丸となって作り上げることで最高の製品を目指す「アジャイル開発」という手法があります。
人と人とのやりとりに重きを置くことで、製品に、世の中にもっとインパクトが与えられないか。作り手の熱意が漏れない製品開発に挑み続けるアジャイル開発の達人・永和システムマネジメント平鍋健児氏と、LINE株式会社で組織の中から価値の伝播に取り組む横道稔氏が、「アジャイル開発の本質」について語ります。
対談者プロフィール
横道 稔(よこみち・みのる)
LINE株式会社 Delivery Managementチーム
SIer、事業会社を経て、2018年 LINE株式会社入社。Delivery Managementチーム テクニカルプロジェクトマネージャー。エンジニアやエンジニアリングマネージャー、プロダクトオーナーなどのバックグラウンドを活かしながら、開発プロセス改善支援などに従事。リーン・アジャイル好きが高じて、その分野のPodcast「omoiyari.fm」を配信中。
平鍋 健児(ひらなべ・けんじ)
株式会社永和システムマネジメント 代表取締役社長
3次元CAD、リアルタイムシステム、UMLエディタastah*(旧名:JUDE)などの開発を経て、現在は、アジャイル開発を実践するエンジニアであり経営者。初代アジャイルジャパン実行委員長、要求開発アライアンス理事。共著書『アジャイル開発とスクラム ~顧客、技術、経営をつなぐマネジメント~』 ほか翻訳書多数
「こんなに楽しく仕事してもいいんだ」衝撃を受けた平鍋氏との出会い
横道(LINE):平鍋さん、ご無沙汰しております。
平鍋(永和システムマネジメント):ちょうど先日、Facebook上で転職の報告を拝見したばかりですね。プレゼントを贈ったのが記憶に新しいです。
横道:その節は、ありがとうございます(笑)。今年の2月にLINEに転職したばかりなんです。
――お二人はもともと面識があるんですね!どのような経緯で知り合われたのですか?
横道:僕はLINEの前は4年ほど事業会社に、その前は7年ほどSIerに勤めていたんですが、SIer時代の2012年にDevelopers Summitに初めて参加して、そこで平鍋さんのセッションを聴いてとても感銘を受けたんです。そのことがキッカケで、SNSやイベントでお声をかけさせてもらってお知り合いになりました。
▲LINE株式会社 Delivery Managementチーム 横道 稔氏平鍋:その時はなんのセッションでしたっけ?
横道:「アジャイル開発の10年と今後を語ろう。」というセッションです。「Innovation Sprint 2011(※)」のちょうど次の年でした。
SIerの頃は僕はJavaでの開発やアーキテクチャ設計、要件定義、プロジェクトマネジメントなどをやっていて、アジャイルについてあまり知識もなく当時お話されていたことは正直そんなに理解できなかったんです。ただ、平鍋さんがとにかく熱意を持って楽しそうに喋っていたことが強く印象に残りました。
※Innovation Sprint 2011……ソフトウェアにおけるスクラムの創始者Jeff Sutherlandと、スクラムを日本型イノベーションプロセスとして発見した野中郁次郎氏の対談を実現したイベント。
平鍋:ええ、本当?僕はあまり意識していなかったんだけど(笑)。
▲株式会社永和システムマネジメント 代表取締役社長 平鍋 健児(ひらなべ・けんじ)氏横道:すごく衝撃的でしたよ。「あ、こんなに楽しく仕事をしている人がいるんだ、そうしてもいいんだ」と。僕はそれをキッカケにアジャイルやスクラムに傾倒していきました。
SIerにいる間にもスクラムマスター研修を受けさせてもらったり、部分的に取り入れてみたりして、その結果もっとアジリティの高い開発をやりたいという気持ちが強くなったので事業会社に転職しました。
事業会社に入ってからはエンジニアや、スクラムマスター、開発責任者、プロダクトオーナー、エンジニアリングマネージャなどいろいろと経験させてもらいました。その後、昨年LINEがスクラムマスターの募集を出していたのを目にして、今回転職することになりました。
平鍋:「スクラムマスター」の募集が出ていたの?それは珍しいですね。
横道:そうなんですよ。スクラムという手法に固執しているのではと邪推し、その時点では懐疑的でした。ただCTOとお話ししていく中で、CTOの持っているエンジニアのコンピタンスや自律チーム文化に関する価値観にとても共感し、そこに会社として投資していくための募集であることに感銘を受けたので入社を決意しました。
今は、その後立ち上がったDelivery ManagementチームというCTO直下組織(DMT)で、テクニカルプロジェクトマネージャーという肩書きで、アジャイルコーチのような形で開発現場の課題解決をサポートしています。DMTでは、他にもプロジェクトマネジメントの支援や、開発プロセスのトレーニングなどを行っています。
平鍋:Delivery Managementという名前はすごくいいですね。作るだけじゃなく、届けないと意味がないですからね。
作り手の熱意が逃げない開発の方法
――平鍋さんは、どういうキッカケでアジャイルやスクラムの道に進み始めたんですか?
平鍋:私自身ずっとエンジニアでして、80年代後半にオブジェクト指向に目覚め、よいソフトウェアを作る肝は技術にある、と思っていました。変更に強いソフトウェアを作ることが鍵だと考え、その答えを見つけたように思ったのです。ところが、SI型の請負開発の中で働いていて、どれだけ技術的に良いと思う開発をしても、いつも最後には開発が火を吹いてエンジニアが倒れてしまうような世界を見ていたんですよね。
どうにか上手くできないかというのをずっと考えていて、開発にはソフトウェアの技術だけでなく、人間と人間のチームコミュニケーションの技術が必要なんだろうなという発想に至りました。ソフトウェア自身の設計を考えると同時に、それを人側に延長してチームのソーシャル活動の設計を考えないと不十分なんだ、という気づきです。
「Extreme Programming Explained: Embrace Change」を読んだ(※)のも、ちょうどその頃、2000年頃のことです。
※「Extreme Programming Explained: Embrace Change(著・Kent Beck)」……人に喜ばれるソフトウェア開発の価値とプラクティスをまとめた本。この本を初めて読んだとき電流が走った、と平鍋氏は各所で語っている。
平鍋:同時に、世界にインパクトを与えるプロダクトなりサービスなりを作ろうという時には、紙に書いた仕様書の実装ではなく、「俺はこう思うんだ!」っていう熱気が逃げない方法での開発が必要だと僕は思うんです。それでずっと、アジャイル開発を啓蒙してきました。
2014年頃からは日本でも、事業会社を中心にインハウスでアジャイルをやるというのがメジャーになってきましたね。現在はアジャイル開発の推進を通していろいろな企業を応援しています。
永和はアジャイル啓蒙の軸と、もとより主軸としているシステム開発の2軸を持っていて、自分たちの開発においても、密なコミュニケーションを取り合って皆で良い商品・プロダクトを確認しながら進める開発になってきたと思います。感動を与えるものを作るチームを作りたいですね。
アジャイルコーチと信頼はワンセット
平鍋:アジャイル開発は、1回やってみるということがすごく重要なんですよね。1回もやったことがない人だけではなかなか難しい。
横道:僕自身も最初にスクラムをやったときは大失敗しましたし、失敗して諦めてしまう人たちも見てきました。
平鍋:コミュニケーションの価値って言葉にするのがすごく難しいから、なかなか上手く伝わらないんですよね。アメリカでは、まずアジャイルをやろうというときにはコンサルタントを呼びますよね。アジャイル手法は、教科書で理解することが難しいので、コンサルタントという「人」を媒介にして、体験を通じて会社から会社へと暗黙知が流動していることを発見しました。
横道:日本では、コンサルタントは少しネガティブなイメージがあることがありますよね。外から来た人がいきなり言いたいことを言って出ていくというような。
平鍋:コンサルタントって、だいたい高いでしょ。チームにコミットせず、それでいてすごくキレイな資料を作って「これが分析結果です!」と言って去っていくけど、後には全然価値が残らないというようなことがある。
横道:僕自身もそういう風に感じた経験があるので、外からチームへ入るときにはデリケートさもセットで持っていないといけないと感じています。第三者視点だから限りなくフラットに近い視点を持てることは強みですけど、第三者であるがゆえにチームの信頼を得るためには並大抵じゃない努力が必要だと痛感しています。ずっと一緒にいるわけではないので、現場の信頼を得るのがすごく難しいですね。
平鍋:難しいよねえ。
横道:ただし僕が普通のコンサルタントと違うのは、僕自身もLINEに所属している一員であるという点です。
平鍋:うちの会社のためにやっていこうという、コミット感の違いがありそうですね。内部でできるのは素晴らしいと思います。
横道:ただし社内の横断組織は、トップダウンで権威的に見えてしまうことがあるので、他社のお客様くらいの誠実さで接するよう気をつけています。入る前も後も、僕のやることにメリットを感じてもらえるようにしないといけないですね。
平鍋:結局のところ、信頼関係がないとコミュニケーションできないですよね。
「外から変える」ではなく「中から変わる」
横道:永和では、それこそコンサルタントのように外からお客様の企業に入っていきますよね。
平鍋:そうですね。永和はエンジニアリングとアジャイルを外部から手伝っていて、開発案件の場合は我々が行くことも来てもらうこともあります。アジャイルなどを含む案件は、コーチとして行ってお客様のチームを育てることもあるし、コーチと開発者が丸ごと行って開発もアジャイルも両方やってくるということもあります。
横道:外から入ってアジャイルを伝えることは内部組織でやるより一層難しいと思うんですが、どうやって信頼を得ていくんですか?
平鍋:アジャイルは「これが正しい」ということがないので難しいですが、まずはどれだけ課題を聞いてあげるかだと思います。いきなり「これが正しいやり方です」という伝え方ではなく、「こういうのどうでしょう、ダメだったらこっちはどうでしょう」と上手くいくやり方を一緒に作っていく。成長を共通体験できれば、一緒に喜びを味わえる親身な関係になると思っています。
横道:「こういうベストプラクティスがあるのでやってください」というのは、人間やはり反発がありますからね。それぞれ思っていることが違う現場の何十人という人たちが、自分たちで解決できる場を一緒に作る。そして失敗しないように全力で支援するのが僕たちだと思っています。
Management 3.0(※)の中で紹介される、”Don’t change things; run experiments”という言葉がすごく印象に残っているんです。直訳すると「変えるのではなく実験しよう」という言葉で、小さく実験してみて失敗したら戻せばいいし、成功したら続けばいいよねという意味合いです。僕がチームを支援するときは、チームで実践する人自身が体験を積んで学んでもらえるようにすることをすごく意識しています。
※Management 3.0……オランダのJurgen Appeloが提唱し世界80ヶ国で展開する、従業員を幸せにするための新たしいイノベーションとリーダーシップ、マネジメントの運動。マネジメントを「グループの責任」とし、リーダーシップの定義を改めた。
平鍋:いい言葉だから、書いてください(笑)。僕も好きな言葉を書いちゃおう。
平鍋:Peter Sengeの”People don’t resist change. They resist being changed.“という言葉です。人は変化に抵抗するのではなく、変えられようとすることに抵抗するんだと。
アジャイルのように物事のやり方を変えることって、人間の持っている力をしっかり使わないといけないんですよね。論理で理解していても、感情が納得していないと上手くいかない 。
横道:「自分たちが選んで変わったんだ」ということですね。
平鍋:そうですね。中にいる人たちが内発的動機で変わろうと思っている状態に持ち込めば、絶対に変わるんですよ。
本質はノンバーバルなコミュニケーションで伝播する
平鍋:2月にLINEに入社されたばかりですけど、もうバリバリ仕事をしているんですか?
横道:そうですね。入社してからすぐにいろいろなことをやらせてもらっています。LINE Fukuoka と LINE Taiwan にも既に出張に行かせてもらいました。
平鍋:拠点がたくさんありますよね。開発メンバーは何名くらいいらっしゃるんですか。
横道:エンジニアという職種でいうと、6月から稼働し始める京都を含めると日本国内で約500名います。海外の開発拠点でいうと韓国、台湾、タイ、インドネシア、ベトナムもあってLINEグループ全体だと約1700名います。
平鍋:えっ、それを全部アジャイル開発でやっているんですか!
横道:すべてが十分に最適化されたアジャイル開発かというとそうとも言いきれません。会社が一気にスケールしたのでそこを整える役割が追いついていない部分もあり、全体のベースアップはDelivery Managementチームの役割の一つですね。
平鍋:徐々にというところですね。グローバルで展開していると、言語で苦労しませんか。
横道:東京や福岡の国内拠点でも海外から来た開発者の方が多いんですが、社内の翻訳BOTや通訳者のおかげで、基本のコミュニケーションに問題は無いです。また、語学習得の支援制度もあるので、その制度のもと英語を学んでいる方もかなり多いですね。
平鍋:そういったツールや制度が用意されているんですね。
横道:チャットツールとしてはSlackやLINEを採用していて、翻訳BOTを含めて会話すると、日英・日韓などを自動で認識して通訳してくれます。社内には同時通訳の方たちのチームがあって、海外とのテレビ会議などでも通訳さんを入れています。
平鍋:ただアジャイルを伝えるような場合だと、対面でしっかりと伝えないといけないことも多いですよね。
横道:そうですね。キックオフのためや定期的にいずれかの拠点に集まる、ということもよく行われます。また、日本語の機微な表現を他の言語で上手く伝えることが難しいので、できるだけエッセンシャルな会話をすることを考えるようになりました。
日本語で話すときは言葉の表現に捉われ過ぎることがあるので、言葉の制約によって逆に本質を伝えることを考え直すいいキッカケになったと感じています。
平鍋:アジャイルを伝える上で重要な要素は、言葉での論理だけでなく感情が納得していることですよね。感情はノンバーバルな(言葉によらない)ものとか、本質だけでなくエピソードも含めたナラティブで会話をしていかないとなかなか伝わらないですよね。
横道:ノンバーバルな部分は言語の壁を越えても伝わると思うので、熱意を持って話すことに気をつけています。下手な英語でも通訳を通すときでも、真剣に喋っていることはわかってくれていることを感じます。
ソフトウェアは言葉でできている。本質的に重要なのは「言葉の伝送効率」
平鍋:LINEさんでは、ビジネス側の企画する立場の人と実際にモノ作りをするエンジニアの人はどういうコミュニケーションの取り方をしているんですか?
横道:僕はいま複数のプロダクトのチームを担当しているんですが、それぞれにプランナーチームとエンジニアチームがあります。自プロダクトに本当に真剣で誠実な方が多く、初期段階からディスカッションの場を設けて率直に意見を出し合うようなこともありますね。
平鍋:それはいいですね。僕は昔からエンジニアのまわりにいたから、古くは技術者とビジネス側が同じ業務を共有しているにもかかわらず、仕様書と納期を突き合わせて試合している様相を見てきました。
横道:僕もSIerにいたので、わかる部分があります。
平鍋:もちろん立場が違うのでコンフリクトがあって然るべきですけど、いい仕事したって感じるときって、仕様書通りに完成したときではないんですよね。自分の作った機能をすんごく使ってくれる人がいて、「これすげー!」って言ってくれる人がいるときだと思うんです。
横道:自分の作ったものがインパクトを持つというのは、エンジニアがすごくやりがいを感じる瞬間ですよね。
平鍋:いろいろなモノ作りの中で、ソフトウェアは特殊だと思うんです。いろんな産業の基盤になっていますが、例えば同じように建築や機械産業の基盤となる鉄鋼やセメントのような「材料」とは全く違う部分があります。それ単独では材料にならない。
つまり、ソフトウェアでは、企画の人、ユーザの人の言葉がそのままプログラム中の識別子やデータベースのメタデータとしてプロダクトになる。最終製品やユーザと独立して存在できないのです。だから、作りたい人と作る人の伝言ゲームの伝送効率が本質的に重要だと思うんです。言葉とコミュニケーションが本質だというのがソフトウェア開発の大きな特徴だと思っています。
平鍋:作りたい人と作る人の意思疎通が重要で、そのために人のコミュニケーションをケアすることをミッションにする人たちが出てきたんです。ソフトウェア開発において、人間同士のコミュニケーションに焦点があたって然るべきなんだと思います。
僕は技術が世界を変えると思っているけど、それは「チームで仕事をする」とか「誰かのためになっている」ということ抜きには語れない。だから、作りたい人と作る人が話し合いながらやっていく開発を実現することが重要だというのを伝えたいというのが僕の熱意の根幹にあります。
横道:僕も平鍋さんの熱意に衝撃を受けて、そういうふうに取り組むことで仕事というものは楽しんでもいいと思うようになってから人生が変わったんですよね。
平鍋:楽しくない仕事はしない方がいいですよね。人生は長いですから。
横道:恩送りのように、自分の仕事を通して誰かの仕事がより楽しくなってもらいたいと思います。
「手を動かすのをやめるのが怖い」という執着が消える瞬間
平鍋:LINEでも横道さんのような役割の人を増やそうとしているんですか?
横道:増やしたいんですが、なかなかいないですね。でもキャリアについて悩みを持っているエンジニアの人は多くて、僕を見てこういうキャリアもあるんだと興味を持ってくれる方もいるので、見つけたり育てたりすることもしていきたいです。
平鍋:それは素晴らしいですね。みんなの良さを発揮することをミッションとする人が社内を回遊するということは会社の価値になると思います。
横道:僕自身も、エンジニアをやってきた中でエンジニアのキャリアって見えていない部分もあると感じていたので、キャリア選択の一つとして僕がアジャイルコーチやスクラムマスターとしてのキャリアのロールモデルになれればとも思っています。
技術の専門性を高めていく選択ももちろんとてもいいと思うんですけど、あまり固執しすぎずに、持っている強みを別の形で活かせる多様なキャリアに挑戦するのも面白いと思います。
横道:僕含め、エンジニアは「手を動かすのをやめることが怖い」という思いが少なからずあると思いますが、他の喜びでその執着が消える瞬間があります。手を動かすことが楽しかったのは、知的好奇心だったり、チームで協力することだったり、プロダクトに貢献できることだったと気がついたので、その内発的動機は今の役割でも充足できています。
また、この経験が元のキャリアや別のキャリアでも活かされるだろうという確信もあります。LINEでのキャリア選択は一方通行ではなくまたエンジニアにも戻れますから、ぜひ挑戦してみてほしいですね。
平鍋:日本では、古い企業だと係長、課長とマネジメントに進んだり、プロジェクトマーネージャになったりというキャリアが多いですよね。でもそんなにマネージャはいらないということになる。そこで海外のコンサルタントのように、組織内の情報の運び屋として、自らの経験を他のチームへと伝達すること、体験を通して伝える人の重要性は上がってくるんじゃないかと思います。
横道:僕もそう思っています。自分の経験をもとにあるチームを支援したとき、自分の3年分くらいの失敗や経験をほんの少し伝えることで、僕の2年分くらいをショートカットして成長するのを体験したことがあります。
LINEに限らず、いろいろな会社でそういった役割が認められて知を伝播する役割の人が増えてほしいと思っています。
「正しいアジャイル」という幻想を取り払う
――最後に、アジャイルやお二人の「これから」についてお伺いしたいです。
横道:アジャイルを実現する手法は増えたりこれからも変わり続ける可能性があると思いますが、アジャイルが言っている価値観はとても普遍的で、これからも大きく変わることのないものだと思います。
平鍋:アジャイルという言葉自体は日本に浸透しましたけど、「正しいアジャイルがある」と思う人が少なからず出てきたことが少し怖いんです。いいビジネスとモノ作りをやってインパクトが出るということが目的なのでそれさえあれば呼び名はなんでもいいと思うんです。僕はアジャイルが一番近いと思っているけれど、それがいい悪いという話ではない。
横道:言葉は置いておいても、本質は変わらないですよね。
平鍋:僕は今自分の半径3人くらいの世界で起こっているビジネスや開発の形がどうやったらもっと良く合わさるだろうかと考え続けることをすればいいと思うんです。
横道:それってこの先どこまでも考え続けられますね。
平鍋:そういうアジャイルの本質を、これからも熱意を持って伝えていきたいと、そんなふうに思っています。
横道:僕も、ずっと変わらないエッセンシャルなことを引き続きやっていきたいなと思います。
――お二人の熱い気持ちが伝わってきました。お二方、本日はたっぷりとお話いただきありがとうございました!
取材・執筆:dotstudio, inc. ちゃんとく
大学までは文系で法学を学んでいたが「モノを作れる人」に憧れて知識ゼロからWebエンジニアの道へ。転職し現在はIoT中心のエンジニア・テクニカルライターとして活動。Node.jsユーザグループ内の女性コミュニティ「Node Girls」を主催。Twitter: @tokutoku393 / dotstudio, inc.
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