【日曜版】『たかぎなおこ』という魔法【書評】
イラストエッセイというジャンルがあります。(仮想人格の場合もありますが)自分の日常を舞台に、そこに感想や情報を付加した上でイラストで柔らかくシュリンクしたメディア、というと難しく聞こえますが、つまりはプロの絵日記みたいなものです。そしてそのイラストエッセイには、ちょっとした特徴(灰汁=アク)があります。ところがアクが美味しくって仕方ない、素敵に楽しい作品を出し続けている、それが『たかぎなおこ』の素晴らしいところなのです。
例えば『まのとのま』の旅ガイド・無敵シリーズに代表される情報てんこ盛りで疲れちゃう系、『益田ミリ』のような男からの視点で読むとイマイチ共感出来ない一人語り系、『ボンボヤージュ』のイラストが濃すぎて逆に情報が伝わってこない残念系など、イラストエッセイのバランスは常に微妙で繊細です。
『たかぎなおこ』の作品の数々は、軽く、切なく、近く、そしてとても優しく出来ています。絵はそれほど上手くなく(誉め言葉です)、文章も気が利いているとは言い難いものがあります。しかしお仕着せがましくもなく、読むのに力を必要としません。食レポをするのには無謀とも思えるイラストテイストかもしれませんが、不思議と「それ」を食べたくなる暖かさに満ちています。リアルな絵や言葉ではなく、それから受けた感動を『たかぎなおこ』は空気感までセットにして描いているのです。
絵と文とキャラクターと、それらが奇跡のバランスで組み合わさった『たかぎなおこ』という魔法。あなたも一度かかってみてはいががでしょう(この記事の詳細はこちら)。
愛しのローカルごはん旅
たかぎなおこ著
価格:¥ 1155 全 144ページ
出版社:メディアファクトリー
ISBN-10: 4840124639
ISBN-13: 978-4840124638
発売日 2008/10/29
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