ゲーム・HD動画・データ駆動型アプリケーションにフォーカス アドビが『Flash Player』『AIR』新版の説明会を開催
アドビ システムズは、9月21日に発表した『Flash Player』最新版の『Flash Player 11』と、アプリケーション実行環境『AIR』の最新版『AIR 3』の報道機関向け説明会を開催。Flashプラットフォームがフォーカスする分野、HTML5とのすみわけ、アプリケーションの事例などが発表されました。
3分野にフォーカスした新機能の提供
説明会は、米国との電話会議で米Adobe Systems社Director Product Marketing Digital ImagingのAnup Murarka氏がプレゼンテーションを実施。Flashプラットフォームがフォーカスする分野としてゲーム、HD動画などのメディアアプリケーション、データ駆動型アプリケーションの3分野を挙げ、これらのトレンドが新機能の提供に大きな影響を与えたと語りました。
(1)ゲーム
ゲーム開発に向けた新機能は『Molehill』のコードネームつけられたハードウェアアクセラレーションによる2D/3D描画機能と、振動コントロール、磁力計、光センサ、デュアルスクリーンなどハードウェア機能を活用できるようにする“ネイティブ拡張”、『AIR』で書き出したアプリケーションに『AIR』のランタイムを同梱できるようにする“Captive Runtime”の機能。
特に3D描画ではコンソール機並みのグラフィックを実現する狙いで、海外でPSP用ダウンロードゲームとして配信されている『Zombie Tycoon』がFlashプラットフォームに移植されるなど、プレリリースの段階でゲーム開発会社の利用が進んでいる模様。“ネイティブ拡張”についてはハードウェアのAPI(Application Programing Interface)以外にも、既存の他言語で書かれたライブラリとの連携が可能になることから、日本ではグリーがAIRベースのスマートフォン用アプリを自社の『GREE SDK』と連携させる目的で『AIR 3』の採用を発表しています。“Captive Runtime”はiOS向けに提供していた機能ですが、Windows、Macのパソコン向けやAndroid、Blackberryといったスマートフォン、タブレット用OSでも利用可能になります。これにより、従来はAIRで制作・配布するアプリケーションとは別にランタイムをインストールする必要があるという煩雑さが解消されます。
(2)メディアアプリケーション
メディアアプリケーション向けの新機能は、コンテンツ保護技術『Flash Access』との連携、Flashベースのアプリを利用したiOSを含むマルチプラットフォームへのHD動画と7.1サラウンド音声の配信、レンタルや購読の配信形態への対応といったもの。HD動画配信プラットフォームとしてのFlashプラットフォームが、長編作品でもコンテンツを保護し、モバイルへも展開できるという利点を強調しています。
(3)データ駆動型アプリケーション
データ駆動型アプリケーション向けには“ネイティブ拡張”による既存のシステムとの連携、3D表現によるデータの可視化、乱数生成機能によるセキュリティの強化、64ビットOSとブラウザのサポートを新機能として挙げています。主に業務系アプリケーションの開発に向けた機能が強化されました。
HTML5による代替の意見には「同意しない」
Murarka氏は、HTML5がFlashを代替するという意見について「まったく同意しない」と語ります。Flashはここ数年にわたってウェブ技術の先端技術であり、Flashに搭載する新機能がいずれオープンな標準技術になっていくという見解を示し、今後もFlashが最先端であるよう進化を続けていくと強調しました。
FlashがHTML5に対して差別化できる分野が、今後Flashプラットフォームがフォーカスする上記の3分野であり、配布された資料にはHTML5が応用される分野はウェブ上のリッチメディア広告、製品プロモーションに用いるブランド体験、インタラクティブなウェブページ、汎用のモバイルアプリケーションに限定されると記載されています。
質疑応答で、Windows次期版のWindows 8上では『Internet Explorer 10』の『Metro』スタイルのユーザーインタフェースでプラグインが排除されたことについて質問を受けた同氏は、デスクトップ版ではプラグインがサポートされることに触れ、『Metro』スタイルではiOS向けにFlashベースのアプリケーションを動作させてきたのと同様のアプローチがとれるのではという見通しを示しました。
複数プラットフォームでの豊富なアプリ事例
アプリケーション事例の筆頭として同氏が紹介したのが、もともとFlashゲームとして公開され、その後iPhone/iPadアプリを制作してヒットした『Machinarium』。近日中にAndroid版、BlackBerry版もリリースされるとのこと。ゲームではほかにiOS/Android向けの『Dr. Stanley’s House 2』、『Pyraminx Gaming Apps』、『Coca Cola』、Mac OS/iOS/Android/BlackBerry向けの『Spark Chess』を紹介しました。
メディアアプリとしてはiOS/Android向け『California Academy of Sciences App』、Android向け『WatchESPN』、データ駆動型アプリとしてBlackBerry向け『Facebook App』、iOS/Android/Blackberry向け『Politifact App』を紹介しています。
同氏によると2011年末までに130機種のスマートフォンと85機種のタブレットがFlashベースのアプリに対応予定で、既にFlashベースの数千本のアプリが『iTunes』『Androidマーケット』『BlackBerry App World』で配布されているそうです。
『Flash Player 11』と『AIR 3』の配布は10月初旬を予定。コード開発者向けオーサリングツール『Flash Builder』とオープンソースの開発フレームワーク『Flex』では、年内にリリース予定の新バージョンで『Flash Player 11』『AIR 3』の新機能に対応を予定しています。10月4日と5日には、アドビ最大のカンファレンス『Adobe MAX 2011』が開催されるので、そちらでも今後提供される新機能や先進事例が発表されるでしょう。基調講演は日本語同時通訳付きでライブ配信が予定されています。
Adobe MAX 2011
http://www.adobe.com/jp/joc/max2011/
参考記事:
「HTML5 vs Flash の抗争にすればページビューが稼げるんでしょう」 アドビのFlashプラットフォーム担当者が“HTML5”と“ゲーム”を語る
https://getnews.jp/archives/140401[リンク]
モバイルをテーマに開催されたアドビの開発者向けイベント『ADC MEETUP ROUND01』を振り返る
https://getnews.jp/archives/127879[リンク]
“Mobile is Here.” 米アドビ社のプロダクトマネージャーがFlashプラットフォームのスマートフォン展開を語る
https://getnews.jp/archives/89172[リンク]
宮原俊介(エグゼクティブマネージャー) 酒と音楽とプロレスを愛する、未来検索ブラジルのコンテンツプロデューサー。2010年3月~2019年11月まで2代目編集長、2019年12月~2024年3月に編集主幹を務め現職。ゲームコミュニティ『モゲラ』も担当してます
ウェブサイト: http://mogera.jp/
TwitterID: shnskm
- ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
- 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。