シンガーソングライター・甲田まひるインタビュー「互いに思いやる気持ちを、恋に限定せず表現したかった」

ジャズ・ヒップホップをバックボーンとして、ジャンルに束縛されていない自由なサウンドを放つシンガーソングライター甲田まひるさん。映画『ババンババンバンバンパイア』の挿入歌として書き下ろした新曲『ナツロス』が配信中です。
作詞・作曲へのこだわりやMV・振り付けのポイントなど、お話を伺いました!

――『ナツロス』はとても素敵な楽曲になっていますが、『ババンババンバンバンパイア』の世界観も散りばめられていますね。

今回書き下ろしさせていただくにあたって、台本をいただいて、コミックは自分で買って読んで書きました。この綺麗だけどクセになる絵のタッチが好きで、元々素敵な絵だなと思っていたんです。それでコミックを読んだら、面白すぎてイッキ読みして「こんな面白い作品に曲を書けるんだ!」って嬉しかったです。映画もすごく面白かったです。

私の曲を挿れてもらうシーンを先に観たら、シャワーで遊ぶ姿がスローモーションになっていて、しっとりしている印象も受けたので、詩は2人の関係にフォーカスしようと思いました。ラップパートが十分激しいので、詩はもっと恋愛っぽくて良いかなと。

浜崎監督(映画『ババンババンバンバンパイア』)からの要望として「夏祭り」というワードは入れてほしいということと、はっちゃけた感じというよりは、切なさ・大人っぽさを重視して欲しいと言われていたので、そちらに舵を切ろうと思いました。私もコミックを読んで、面白さ以上に切なさが残るなと思っていたので。

映画の中で吉沢亮さんと板垣李光人さんのお芝居が素晴らしいこともあって、楽しい・笑えるシーンのはずなのに心情がめちゃ伝わってくるんですよね。観ていてすごく気持ちを持っていかれたので、2人のお互いを思いやる気持ちというのを恋に限定せずにもっと広げて表現したいなと思いました。恋にももちろん似ているし、家族みたいに大切だから踏み込めないみたいな部分もあるし。「好き」というワードも挿れていますが、その愛の対象はご覧になった方、聴いてくださった方それぞれに感じて欲しいなと思います。

――ギャグ、恋愛、銭湯、ヴァンパイアと良い意味で要素が盛り盛りなので、曲を作る側としては迷いそうですよね。

そうなんですよね。書けてしまう部分が多いので。最初コミックを読んで、気になったセリフとか、良いなと思った言葉をどんどん書き出していって。最初は「カレーを一緒に食べる」とかも挿れていたんですよ。そこから最終的に削っていって。これもいれたかったけど、やめておこう…みたいな。挿れたい要素がたくさんあるけれど削らないといけないことが幸せな苦しみでした。

「入道雲にダイブしたい」という表現を思いついた時に、完成のイメージが広がってきました。最初のサビにあたるメロディーはあったのですが、そこに当てはまる言葉がなかなか思いつかなくて。最初は「入道雲」という言葉だけが優先だったんです。でも、入道雲をただの景色にしちゃうと勿体無いなと思い、李仁(演・板垣李光人)の存在自体にリンクさせようと思いました。直接的に恋愛やセクシーな表現をしているわけではないのですが、そこで思春期の揺れ動く気持ちを表したいなと。

――そういったキュンとしたりドキッとするワードの中に、カッコいいメロディーがのっているギャップも素敵ですよね。

ありがとうございます!今回プロデューサーさんとも相談して、「ジャージー・クラブ」というジャンルを取り入れています。ヒップホップでめちゃめちゃ使われているビートなんですが、それで行こうと決まった時にメロディーの方向性は見えたなと。トラックコード、メロディー、歌詞みたいな順番で曲を作っていくことが多いです。

――まひるさんは俳優としても活動していますから、その視点でも映画を楽しめそうですね。

お笑いが大好きなのでコメディに挑戦してみたいのですが、笑いのツボが浅いのですぐ笑っちゃう気がしてダメそうですね(笑)。目の前で吉沢さんがあんな変顔をしているのに笑わないのすごい!って。感動していました。

――MVもヴァンパイアイメージですごく可愛くて。

衣装は私がデザインして作ってもらっているんですが、浴衣をベースにさレンジしていて。ルイヴィトンと村上隆さんのコラボの、白地に村上さんのモチーフが散りばめられているデザインが昔から大好きで。しかも、今年結構ラッパーが身につけている印象があったので、取り入れちゃおう!と。
まさにヴァバンパイアっぽく棺桶の中から起き上がるシーンなどを撮ったのですが、監督がピンクの棺桶を持ってきてくださって。ピンクの棺桶!最高!って監督のことを大好きになっちゃいました(笑)。

――個人的にも、いつも振り付けも楽しみにしています。

今回の振りも、めちゃめちゃ可愛いんです!個人的には難易度が高めの振り付けだなと思っているのですが。何せヒップホップの曲ですので。同じ様なリズムの楽曲の振りを自分でも探して研究して、パワーパフボーイズさんとも相談しながら振り入れしてもらっています。ダンプラ動画もアップしたので一緒に踊ってもらえたら嬉しいです!

――まひるさんのSNSを拝見しているといつもアイデア豊富で、やりたいことがたくさんおありなんだなと感じるのですが、メモをためたりしているのですか?

歌詞を書くときは字をたくさん書きだしたりするのですが、日記とかやりたいことリストを書くことは全然ダメで出来ないんです。「何歳までにこれをする」とか、叶わなかった時が怖くて書けない。ラジオを聞くのが好きなのですが、先日「自分のなりたい姿とか画像を集めてボードにまとめると良い」というのを聞いて、なるほどそれはありかもなって。いつも頭の中がごちゃごちゃで、いつも必死に引き出しを開けている感じなのですが、今は困っていないからそれでもいいかなっていう(笑)。

――ボード、確かに面白そうですね。そのボードをそのままスタイルブックみたいな感じで出版していただきたいですが!

スタイルブックは中学校の時に一度出していて。その時はニューヨークのハーレムに泊まっている時に、お母さんがたくさん写真を撮ってくれてそれをまとめたのですが、確かに久しぶりにやりたいですね。

――これまでの衣装、私服スナップとか、歌詞のためのノートとかぜひ拝見したいです。SNSでもファンの方とよく交流されていて素敵ですね。

もう習慣みたいになっていますね。身近な存在すぎて。小6からインスタをはじめていて、インスタで知り合った子に会うということもよくあったし、一緒に成長しているというか、お友達みたいな距離感ですね。私のもう1つのアカウントがあって、800人ぐらいしかフォロワーいないんですけど、そちらのアカウントでは雑なストーリーとかでも全然アップ出来ちゃうので、そこで質問返しをよくしていますね。「今日誕生日です!」とか報告してくれる子も多いから、名前と年齢も覚えていたり、いつも近くで応援してくれている存在って本当にありがたいです。

――本当に素敵なご関係だなあと思います。今日は楽しいお話をありがとうございました!

撮影:You Ishii

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藤本エリ

映画・アニメ・美容が好きなライターです。

ウェブサイト: https://twitter.com/ZOKU_F

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