増税秒読み、改めて問われる「朝霞の国家公務員宿舎建設」の是非

朝霞の国家公務員宿舎に関する図面

■キーワード「朝霞公務員宿舎建設問題」とは
「朝霞公務員宿舎」とは埼玉県朝霞市に800戸を超える国家公務員のためのマンションを建設、3LDKで4万円程度の家賃、礼金敷金更新料ナシといった条件で住めるようにするという事業で総事業費は105億円と言われています。ちなみにここに住むことができるのは国家公務員だけなので、建設地のすぐ隣にある「朝霞市役所」で働く公務員の方々はここに住むことはできません。

既に何回かご紹介させていただいている朝霞市の国家公務員マンション建設の話。反対の声があがる中、9月1日に着工し、今も工事が進んでいます。しかし一度事業仕分けで凍結した工事を再開するのであれば、その前に再度「再事業仕分け」のような場を設けるべきじゃないか、という素朴な疑問がよぎります。じゃないと「あの事業仕分けって結局なんだったんだ」ということになりかねません。おなじみ元官僚の原英史さんにこの問題についていろいろときいてみました。

――凍結されていた朝霞の国家公務員宿舎の建設が再開したことに注目が集まっています。この件、何が問題なのでしょうか。

原:増税の前になされるべき、ムダの削減や、資産売却による財源確保の議論が置き去りになっているのがまず問題なんですね。この朝霞宿舎の建設事業だけだと100億円程度ですが、全国各地の国家公務員宿舎を全廃して売却すれば1.7兆円にもなるといわれています。この事業は政権の姿勢を問うひとつの象徴となる事業だと思うんです。

――野田総理はこの問題にどのような姿勢をとっているのでしょう。

原:先日の衆議院本会議の代表質問で早速、野田総理はこの問題で追求を受けていました。
野田総理は「朝霞再開」の立場を守るという立場で、

・「朝霞については、真に必要な宿舎として、再開を決定した」
・「公務員宿舎は5年で15%強、3.7万戸削減する」
・「不要な宿舎の跡地は売却するので、復興財源にもなる」

という趣旨の答弁をおこないました。

――公務員宿舎の削減目標ってのがあるんですね。

原:「5年で15%削減」というのは財務省での検討の結果昨年末にまとめられた「国有財産行政におけるPRE戦略」というものに出てくる数字です。「真に必要な宿舎」を精査しその結果「現在21.8万戸」の宿舎を5年で「18.1万戸」にすると決めたとのことです。

でもこれ、自衛官など特別職約30万人を含め、総数60万人の国家公務員に対するものなんです。60万人に対して18万戸の専用の住居を用意しなければいけないというのはちょっと多くないですか?

――約3分の1ということになりますね。民間であれば自分で賃貸住宅を借りて住むところですよね。国家公務員の皆さんもそうするのは難しいのですか。

原:極端に転勤が多い、深夜や早朝の緊急対応が必要、などといった専用住居が必要なケースはあると思いますが、それが国家公務員の3分の1を占めるということはないですよね。「真に必要な宿舎」の精査が足りないような気がします。そもそもケタが違う話だと思います。

――古い宿舎跡地を売却して復興財源にするということも考えられてるんですね。

原:これが売却だけ、ということであれば大きな財源になりますね。でもそこに建て替えをおこなおうとしている。その建て替えが「真に必要」かどうか精査する必要があります。

――この問題、そもそも事業仕分けで凍結されたはずなのに、議論が生煮えのまま話だけが進んでいるような気がします。

原:現在の経済産業大臣の枝野さんは2009年11月27日の事業仕分けで、仕分け人をおこなっていたんです。その時、この公務員宿舎の問題に対して、このように追求しています「なぜやめないんですか。なぜ壊した分、別のところに作らないといけないんですか。……国家公務員法か何かに宿舎を提供しなければならないと決まっているんですか」と。

まさに正論です。事業仕分けでおこなわれたこのまっとうな指摘を政策で具現化できるか。それが今問われているのだと思います。

――ありがとうございました。

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深水英一郎(ふかみん)

深水英一郎(ふかみん)

トンチの効いた新製品が大好き。ITベンチャー「デジタルデザイン」創業参画後、メールマガジン発行システム「まぐまぐ」を個人で開発。利用者と共につくるネットメディアとかわいいキャラに興味がある。

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