海江田経産大臣による「更迭人事」は浅はかな演出
「人事権者は私」と更迭を言い渡した相手は、この夏の定期異動で辞めてもおかしくない人達だった?
海江田経産大臣が4日朝に発表した更迭(こうてつ・中央省庁官僚に対する左遷のこと)人事。いかにも人材一新を図る、という口ぶりでの発表だったが、この3名はそもそもこの夏の人事異動で「勇退」するであろうとされていた方々らしい。「勇退」とはつまるところ、どこかへ天下りしていく、ということ。それは「更迭」ではなくて「花道」とでも言うべきなのでは…じゃぁわざわざ「更迭人事」を演出するのは何故だろう。
元経産官僚で、慶応義塾大学大学院教授の岸博幸さんにコメントをいただいた。
岸博幸さんのコメント:
今回の人事は海江田経産大臣の政治決断でも何でもなく、経産省の事務方と一緒に作った出来レースに他ならず、その狙いは経産省の組織防衛だということです。官僚の側からは組織防衛のための防衛線を構築でき、海江田大臣の側からすれば政治的な手柄を作れるという、両方にとってメリットのある行動なのです。
本来更迭された3人は、定期異動で辞めておかしくないヤツばかり。それが辞めるのは更迭でも何でもありません。国民はこんな浅はかな演出に騙されてはいけません。
※岸さんのツイッターアカウントでも関連のツイートを読むことができます
https://twitter.com/#!/hiroyukikishi [リンク]
古賀茂明氏を事務次官に
今回、更迭される3名は以下の方々。
・松永和夫(事務次官)
・寺坂信昭(原子力安全・保安院長)
・細野哲弘(資源エネルギー庁長官)
この方々が将来天下ることがあれば、それは更迭とは言えない。特に松永次官は、改革派の古賀茂明氏に対して法的根拠のない「クビ宣告」をおこない「とにかく早く辞めろ」と迫った人物として有名だ。また「津波に弱い」発電所の原因となった津波想定5.7メートルを認めた当時の原子力安全・保安院長でもある。それらの人物に対しての更迭劇が海江田大臣の「手柄」のための「演出」だったとすれば、まさに私たちの目を欺いているとしか言いようがない。昔ならマスコミとのアウンの呼吸でそのような手も使えたかもしれないが、今やネットで事情に詳しい方のさまざまな意見をきくことができる。また、検索すればさまざまな資料をすぐにひっぱりだせる時代だ。例えば、歴代の事務次官がどこに天下っているかは、数秒でリストを引き出せ、実態を知ることができる( http://bit.ly/nFQe57 )。そんな時代である。わたしたちに疑念をいだかせるような出来レース人事に意味があるのだろうか。
もちろん、松永次官の後任として改革派の古賀茂明氏を就任させる、というサプライズでもあるのであれば、海江田大臣の言う「事務局の人心一新を図りたい」は本気だと捉えることもできるが……。失点続きの中「経産省の解体」という話もきかれる昨今ではあるが、更迭された人達の行く先と、後任人事に注目だ。
トンチの効いた新製品が大好き。ITベンチャー「デジタルデザイン」創業参画後、メールマガジン発行システム「まぐまぐ」を個人で開発。利用者と共につくるネットメディアとかわいいキャラに興味がある。
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