シンデレラの「ガラスの靴」魔法が解けて消えなかったのはなぜ? アニメ版と実写版の違いからわかる驚きの答え

シンデレラ 魔法のガラスの靴

ガラスの靴、魔法が解けてもなんで消えないで残ってるの?」という疑問について2015年版の新作映画『シンデレラ』をみながら考えてみます。妖精が魔法をかけるシーン(動画もあります)をよくよく見てみると、そこにヒントが隠れています。

画像と動画つきで元記事を読みたい場合はガジェット通信サーバーにある記事をご覧ください。

シンデレラ最大の謎

新作映画、実写版の『シンデレラ』観ました。舞踏会のシーンでは感動して泣いてしまいました。王道ではありますが現代風にアレンジされており、子供から大人まで男女問わず楽しめる優れた作品です。

誰でも知っている有名な物語「シンデレラ」ですが、映画を観ているといくつかの疑問が浮かんできます。

例えば「ガラスの靴って履いたら痛くないの?」「割らずに歩けるの?」とか「シンデレラに魔法をかけてくれたフェアリー・ゴッドマザーは、なんであのタイミングで現れたの?」「靴のサイズがぴったりってだけで決めていいの?」などなど…いくつかありますが中でも最大の疑問が、あれです。

「なんでガラスの靴だけ魔法が解けなかったの?」

というものです。

もちろんこういう謎がいくつかあるから楽しめるという部分もあるわけで、追求するというよりは、関連シーンをもう少し詳しく振り返ってみて、どういう解釈ができるのか楽しく考えてみたいと思います。

シンデレラ ガラスの靴

魔法をかけられるシーンを振り返る

シンデレラはフェアリー・ゴッドマザーの魔法でカボチャの馬車や御者、美しいドレスなどを手に入れます。これは1950年公開のアニメ版でもおなじみの場面です。実写版でもこのシーン、実に見事に美しく描かれており、思わずため息が出るほど。アニメ版も素敵ですが、それとくらべても、ゴージャスさが格段に増しています。さらに言えばこの場面はサウンドもすごく、地響きのような音が映画館では体感できなかなかの迫力でした。そしてなんと言ってもふわりと揺れるたびにキラキラ輝くドレス。筆者は女子ではなくおっさんなのですが、思わずシンデレラに感情移入してときめいてしまいました。

そんなゴージャスな馬車やドレスですが、夜中の12時の時計台の鐘が鳴り、その最後の鐘の音が消える時、すべての魔法が解けてしまうんです。

魔法が解けることを思い出し、慌ててシンデレラは階段を駆け下り馬車へ向かいますが、その階段の途中、ガラスの靴を片方落としてしまい、そのまま馬車へ乗り込んですごい勢いでお城を後にします。

そして最後の鐘の音が終わるとき、すべての魔法が解け、馬車はカボチャに戻り、御者は元のトカゲやガチョウに、白馬はネズミに、シンデレラのドレスは元の破れた服に戻ってしまう。しかし、ガラスの靴はそのまま。

お城に落としてきたガラスの靴もそのまま。シンデレラの手元に残ったもう片方のガラスの靴もそのまま。

魔法が解けたはずなのに、ガラスの靴はそのままなのです。
魔法が解けたのになんで消えちゃわないのでしょう。

注目したいのは、ガラスの靴が現れる場面。アニメ版の場合、ドレスに魔法をかけると、いつの間にか赤い靴がガラスの靴に変わっています。魔法をかけた瞬間はドレスに隠れてて見えなかったのですが、ドレスの裾を少し上げると、知らない間にガラスの靴に変わっているのです。

これが実写版だと、ドレスと靴と、別々に魔法がかけられます。

アニメ版ガラスの靴と実写版ガラスの靴

靴以外のものはすべて、元となるものがあって、それに魔法をかけることでより美しく、ゴージャスなものに変化しているということ。しかし靴だけは別で、シンデレラは靴を脱がされ素足の状態でそこにまったく新しくガラスの靴を作ってもらっています

ディズニー公式で、その場面を切り取った動画が公開されているのですが、確かにフェアリー・ゴッドマザーは「早く脱いで」「新しいのを出すわ」「靴の魔法は得意なの」と言いながらガラスの靴を新しく作っています。

古い靴に魔法をかけて綺麗にするのではなく、なにもないところから「新しい靴を作り出して」いるのです。

ドレスやカボチャの馬車は、元があって「魔法で変化」しているのですが、靴だけは「新しく作って」います。

魔法でガラスの靴という形を保っているわけではなく、そこにあるのはガラスの靴そのもの。ということのようです。

おそらく魔法をかけたフェアリー・ゴッドマザー本人も、ガラスの靴だけは残ることを最初からわかっているのでしょう。もしガラスの靴がなくなってしまうものだったら、魔法が解けた瞬間、シンデレラは素足になってしまいます。つまり帰るときに履くものがなくなってしまうわけですから、古い靴を持っていくように言うはずです。

でもフェアリー・ゴッドマザーは何も言いませんでした。

さまざまなバリエーション

シンデレラ姫の物語は、ディズニー版だけではなく、さまざまなバリエーションがあります。

例えば、グリム兄弟版はディズニー版と少々違ってこのような話です――
まず、パーティは1回ではなく、3日連続で開かれることになります。そしてシンデレラは3日3晩開かれるパーティに3回ともでかけます。ただ、意地悪な継母とその二人娘よりも早く家に帰らなくてはならないので、毎回シンデレラは急いで家に帰ることになります。美しいドレスと靴は、魔法ではなく鳥たちからもらいます。そして最初に履くのは、鳥たちからもらった「絹の靴」。3日目にはそれが「金の靴」になります。いずれも、魔法ではなく、鳥たちからもらったもの、ということになっています。

アッシェンプッテル ―灰かぶり姫のものがたり― (グリム兄弟)
http://www.aozora.gr.jp/cards/001091/files/46344_23172.html

まとめると、グリム兄弟版では
・急いで帰る理由は、継母達より早く帰る必要があるため(魔法が解けるからではない)
・ドレスや靴は、鳥たちにもらったもの(魔法ではない)
・靴は金でできていた(ガラスではない)
・王子は靴がくっつくよう、階段をベタベタにするという細工をしていた(転んで脱げたのではない)

つまり、もともと靴は魔法で現れたものではないので、なくなってしまうことはないのです。

シンデレラの1950年公開アニメ版では、そのあたりの説明をはしょって、いつの間にかガラスの靴を履いているということになっていますが、新しい実写版では、ガラスの靴があらわれるところをきちんと描いており、じっくり観ると納得できる説明も丁寧に加えられているように感じます。

とはいえ、やっぱり魔法は魔法であるわけで、魔法が解けてたらガラスの靴も消えちゃうんじゃないかと思うのが普通だと思います。フェアリー・ゴッドマザーはそこらへんもう少し説明してくれてもよかったんじゃないかという気はちょっとしますが、なにしろ彼女は妖精なので、もしかしたらこの物語の先を予見し、どうなるのか知っていたのかもしれませんね。

映画館の前に展示してあったガラスの靴

映画館の前に展示してあったガラスの靴。キラキラ光って綺麗でした。

(執筆:深水英一郎)
―― 見たことのないものを見に行こう 『ガジェット通信』

画像:The Cinderella Trailer Gets Animated (ディズニー公式)
https://www.youtube.com/watch?v=R8ZLo7rHr0o
日本版エンドソング「夢はひそかに (Duet version)」
https://www.youtube.com/watch?v=-ofg6rx2Zsw
より

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深水英一郎(ふかみん)

深水英一郎(ふかみん)

トンチの効いた新製品が大好き。ITベンチャー「デジタルデザイン」創業参画後、メールマガジン発行システム「まぐまぐ」を個人で開発。利用者と共につくるネットメディアとかわいいキャラに興味がある。

ウェブサイト: http://getnews.jp/

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