横浜市立図書館の蔵書が年間1万9000冊 も行方不明と判明! その真相は?
横浜のココがキニナル!
横浜市立図書館の蔵書が年間で2万冊近く不明になっているというけど、対策などはしているの?(はまれぽ編集部のキニナル)
はまれぽ調査結果
3年間所在が不明の「不明除籍図書」が2013年度は1万9000冊。ICなど有効な施策の実現は厳しいのが現状で、利用者のモラルに頼るしかない
年間1万9000冊が不明!?
話題の本をその場でも、借りて自宅で読めたり、ちょっと調べものをしたり、なにかと便利な図書館。
横浜市には18の市立図書館があり、その蔵書は約400万冊。しかし、そのうち毎年約1万9000冊が持ち去られて行方が分からなかくなっていることが判明した。
市立図書館の蔵書は、市民が読み終えた本を寄贈してくれるものもあるが、多くは税金で購入したもの。それがなくなっているとなるとはどういうことか。早速話を聞いた。
対応してくれたのは、横浜市教育委員会事務局中央図書館企画運営課の坪内一(はじめ)課長。
対応してくれた坪内課長
坪内課長によると、市内の図書館で毎年新たに購入する書籍の約7割が税金で購入したもので、残りは読み終わったものを市民が提供してくれる「寄贈」という内訳となっているという。
2013(平成25)年度は書籍の購入のために年間1億5000万円程度を計上しており、約9万8000冊を購入。寄贈本も5万冊ほどあった。
毎年多くの書籍が新たに書架に並ぶ
市内の図書館では年に1回3日間ほどかけて蔵書点検を行っているが、本来書架になくてはならない「不明書籍」が出てくる。これは全体の書籍の0.5%ほどで、全国的にも同規模の割合の書籍の行方が不明になっていると坪内課長は言う。
不明書籍は次年度の蔵書点検で戻ってきているケースもあるというが、3年以上経過しても見つからない場合は「不明除籍図書」として、データベースから除籍する。前述の1万9000冊というのは、この「不明除籍図書」のことで、税金で購入した書籍が2万冊近くなくなっていることを意味する。
毎年約2万冊が「不明除籍図書」に
行方が分からなくなっている本の特徴は新書や小説、旅行のガイドブックなどが多かった。通常行われるべき貸し出し手続きを経ずに館内から持ち出されたケースが大半で、いわば、盗難にあったかたちだ。
横浜市がランダムに抽出した鶴見、保土ケ谷、港北、栄の4図書館監査した結果、鶴見図書館は10万859冊の蔵書に対して「不明除籍図書」が1121冊で1.1%と圧倒的に多かった。次いで保土ケ谷図書館の1250冊(0.7%)、栄図書館の701冊(0.6%)、港北図書館の1021冊(0.5%)となった。
毎年多数の蔵書の行方が分からなくなっているという事実を、市はどう捉えているのか。さらに詳しく聞いた。
現状は打つ手なし?
図書館の利用は無料だ。希望すれば自宅で読むこともできる。にもかかわらず、これだけの書籍がなくなっていることに、坪内課長は「悲しいことだが、自分の利益を最優先に考える人が増え、持ち出すという行為に対する『心のバリア』が低くなっているのでは」と話す。
前述の通り、不明除籍図書のほとんどは正規の貸し出し手続きを経ていないケースが多いが、「盗難である」と言い切れるだけの法的根拠はない。
中央図書館では出入口にゲートが設置されており、ここを通らないと館内に出入りできないようにしている。また、正規の手続きを経ずにゲートを通り抜けようとするとセンサーが反応する仕組みになっている。
中央図書館出入口にあるゲート
しかし、ゲート管理をしているのは中央図書館のみで、各区の図書館ではゲートがない。先に挙げた鶴見図書館は、詳細は言及できないが、ほかの図書館に比べて職員の書籍を持った人の出入りを確認しにくいという構造上の問題があることは市も認識しているという。
となれば、ICタグによる管理などが有効のようにも思えるが、現状では全館でそのような対策は取られているわけでない。
バーコードシールによる管理がメイン
以前、はまれぽでお伝えした川崎市の中原図書館*1では、全書籍をIC管理しているが、これには膨大な時間がかかったそう。
*1:「4月2日オープン! 国内最高レベルの図書館、中原図書館ってどんなとこ?」 2013年03月31日 『はまれぽ.com』
http://hamarepo.com/story.php?story_id=1768
ICで管理
横浜市でも同様の施策が有効のように思えるが、そのためには設備をそろえなければならない。2014(平成26)年度、横浜市は市内図書館の運営費として14億1352万6000円を計上しているが、これがさらに跳ね上がることになるため、優先すべき政策と財源のバランスも考慮しなければならない。
政策の優先順位の判断を迫られる
その上で、市が現状行っているのは防犯カメラによる監視と抑制、警備員の巡回、持ち出し禁止を呼び掛ける啓発のみにとどまっている。
これだけでは十分とは言えないだろう
坪内課長も「根本的な解決策とは言えない。今のままだと不明除籍図書は減らないだろう」と危機感を見せる。「持ち出しを確認したら、それは窃盗だし、毅然(きぜん)とした対応を取るが、ICなどについては市の政策判断にゆだねる」と話した。
取材を終えて
まずは、年間に2万冊近い書籍が、しかも毎年のように無くなっているという事実に驚きを隠せない。
毎年変動するので一概には言えないが、平均的に0.5%ほどが「不明除籍図書」になるということは、昨年度書籍購入に充てられた1億5000万円のうちの75万円がいわば「どぶに捨てられた」格好だ。
これは間違いなく税金であることを忘れてはならないし、坪内課長が言う「心のバリアが低くなった」というだけで片付けていいものでない。
このような現状が続けばIC管理やそれに変わる施策を検討しなければならないだろうし、そのためには、また多額の税金がかかることは間違いない。
証拠や根拠がないため「不明」という言葉を使っており、現状は利用者のモラルに頼るしかないのだが、書籍を持ち出すという行為は窃盗罪というれっきとした犯罪であることを自覚してほしい。
その上で、これ以上の被害が増えないことを願いたい。
―終わり―
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