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【前編】オーケンに全部聞いた! 4年ぶりでもブレない筋少ワールド『THE SHOW MUST GO ON』アルバム発売記念インタビュー

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2014年10月8日、『筋肉少女帯』が4年4か月ぶりに、待望のオリジナルアルバムをリリースする。ニューアルバムのタイトルは『THE SHOW MUST GO ON』。

『THE SHOW MUST GO ON』
オーディエンス・イズ・ゴッド
労働讃歌
ゾロ目
霊媒少女キャリー
ムツオさん
みんなの歌
月に一度の天使(前編)
愛の讃歌
月に一度の天使(後編)
恋の蜂蜜飛行
吉原炎上
気もそぞろ
ニルヴァナ
※全13曲収録
※初回限定盤付属のDVDには『ゾロ目』( MUSIC VIDEO)、LIVE映像7曲(全曲初映像化)が収録

今回、ガジェット通信では大槻ケンヂさんにインタビューを行うことが出来た。その様子をお伝えしたい。

―今回、4年4か月ぶりのアルバム『THE SHOW MUST GO ON』がリリースということでお話を伺わせてください。
創られたものに対して、作品意図を伺うのは野暮なことだと思いつつ、リスナーとして、内容についてお聞かせいただければ嬉しいです。

大槻ケンヂさん:ええ、どうぞどうぞ。

―まずタイトル『THE SHOW MUST GO ON』なんですけれども、これってそもそもは、英語のことわざですよね。“途中でやめちゃいけない”と。

「ショーは続けなければならない」っていうのですね。

―タイトルの訳を聞いたときに、「それでも生きていかざるをえない」(※踊るダメ人間)とか「生き急げ」(※人生は大車輪)という大槻さんのメッセージが思い浮かびまして。
ただ、以前に「生き急げ!」とおっしゃってた頃よりも、ちょっとこう、歩みが落ち着いた印象を受けました。

そうですか!!

ジャケットは「大好きな」江戸川乱歩 少年探偵シリーズから

―その一方で、ジャケットは江戸川乱歩さんの『蜘蛛男』の表紙イラストを使用されてます。アルバムタイトルに対して、『蜘蛛男』がなぜ?っていう驚きがあったんですが。

えっとあのー、まあ、いろいろジャケット案があったんですけど、ポプラ社の少年探偵シリーズの絵が世代でね、僕はとっても好きだったんで、「あの絵って使えないのかなあー」って話を言ったところ、意外に「どうぞどうぞ」って言ってくださって。で、「どれを使っても確認しますよ」って話になったんです。

「昔の、今出してない本でもいいんですか?」って言ったら「それも確認しますよ」って言う話になって。

で、バーッと見て、一番タイトルに合うなあって思ったのを絵柄で選んだんですね。そしたらたまたまそれが、『蜘蛛男』だったんです。だから話の内容とかは関係ないですね。

―むしろインスピレーションとか絵柄のイメージ、好みのところで。

そうそう。本当は僕、『魔術師』ってのもいいなあと思ってたんです。ピエロがバーン!と出てて。「『魔術師』がイイと思うんだ」って人に言ったら、その人が表紙のピエロを見て「それ、ニューロティカのアルバムだと思われるよ」って言ったんですね。(一同笑)
「あー、あっちゃん(※ニューロティカのイノウエアツシ氏)だなぁ」って思って。それで『魔術師』やめたんだなあ。うん。

―割とストレートな理由だったんですね。

ライブは好きだけど撮影が苦手。「よし! とにかく俺はヌンチャクを振ろう!」

―PV拝見させていただいた『ゾロ目』なんですけれども、ヌンチャクが素晴らしかったです。

あのー……ぶっちゃけ、僕は今回アルバムに『THE SHOW MUST GO ON』ってタイトルを付けて、ライブの事について歌ってる歌詞が多いでしょ? それ「ライブこそ自分の人生だ!」と思ってるところがあってね。ま、それ以上に、リア充する場所が生活においてライブ以外に無いからだと思うんですけれどもね。うん。……あれ、なんでしたっけ?

―えっと、ヌンチャク?

ああ!ヌンチャク!(笑)
それで、だから、(僕は)ライブだけがやりたいロッカーなので、ぶっちゃけ、レコーディングとか、あの、衣装合わせとか……衣装合わせは言わなくていいか(笑) MV(※Music Video)撮影とか、……好きじゃないんですよね……。

―あまり……。

なんかほら、世の中多少バブルな頃とかさ、必ず廃屋みたいなところに連れていかれて、朝早く廃屋に連れて行かれてさ。(一同笑)
変な山の上とか連れてかれて。もう朝から晩まで……イヤでしょうがなかったんですね、正直(笑)。うん。

で、最近はまあ、スタジオなんかで撮ったりもするんですけれども、口パクでこう、ワー、なんてやるの恥ずかしくてしょうがないって言うか、ダメなんですよ、僕。

なんかこう、でもなあ、そのMVを楽しみにしてらっしゃる方もいらっしゃるし、スタッフの方も頑張って資金やなんやら捻出してくれたわけだし「俺も頑張らなければいけないな」って思って。
だから今回はMVを撮ってもらう上で、「オレはやり切った!!」って思えることをやろう!と思ったんですね。

―なるほど。

そん時に、「思いっきり気合いを入れて歌う」っていうのはまあ普通ですよね。
そこは“大槻ケンヂ的な発想”とういか、そういう方向に行かずに。
そこを頑張らずに、「よし! とにかく俺はヌンチャクを振ろう!」と思ったんです。

―気合いを伝えるために。

家からマネージャにも20本ぐらいヌンチャクを持ってきてもらって。

―結構お持ちなんですね。

あります。次から次へとね、一日中ヌンチャクを振るって「今回本当俺はMVはやりきったな!」っていう、初めての充実感でしたよ。MV撮影に関しては。

―内田さんも振ってるレアなシーンが見えた気がするんですが。

うん、みんな振ってもらおう!と思って。ええ。

―「君たちも振りなよ!」という大槻さんの前のめりな気持ち?

そうですね。「ただ演奏しているだけじゃ普通だよ!」って。次はけん玉かヨーヨーにしようと思うんですけど。やったことないんだけども(一同笑)。
毎回なんか歌いながら頑張ってるシリーズって、なんかバカバカしくていいんじゃないかな。

―歌いづらくないですか?

うん、そこではないからね、問題は(一同笑)。

1曲目にしようと思ったくらい気に入っている『労働讃歌』

―『労働讃歌』は『ももいろクローバーZ』さんにも歌詞提供されたということで話題になりました。

労働讃歌ってのは勤労感謝の日に発売された“労働を讃歌する曲”だったんだけれども、「労働のプライドや喜びをみんなで歌おう」、「みんなで叫べばそれが見える“かも”しれないぜ」って歌ってる。でもそこは見える“かも”だから、本当は労働のプライドや喜びなどというものは無くて!働く者たちは、まあ、言うたら奴隷のように扱われ搾取されている“だけ”なのかもしれない、っていうね、裏の皮肉めいた意味も込めて作詞したんです。

でも、ももクロちゃんが元気いっぱい歌ってくれたら、それが全て吹っ飛んだんですよね。その“負の部分”が。

で、「あー、すごい。才能あふれる女の子たちが歌うとこんだけポジティブになるんだな」って思って。でも、これ筋少でやったら、負の部分が出るかもしれないなあ、と思ってね。

そういう意味合いもあってやってみたいなあと思ったら見事になんかちょっとね、……確かに“労働讃歌”なんだけど、(ももクロが歌った)「見える“かも”しれない」、という部分が、(筋少が歌うと)それは「無いの“かも”しれない」、っていう風に聞こえてくる部分が僕にはあって。

「うまいこといったな」と、これ(労働讃歌)、とっても気にいってますね。本当は1曲目にしようかと思ったくらいで。うん。ただ、そこまでももクロさんに、ねえ、ご迷惑かけるのも悪いなあと思ってねえ。なんか。
これはあれ、モノノフ(※ももクロの熱狂的ファン)の方々にも納得戴けるアレンジにしないといけないなあと思って、アルバムの中でもみんなで頑張って作った曲ですね。

光と闇

―過去に『労働者M』って曲がありました。

あーあー!『労働者M』!はいはい。

―僕は『労働者M』のときの「働け、働け」というフレーズから、今回『労働讃歌』で「働こう、働こう」という風にシフトしているのがとても面白かったです。

うんうん。あれはね、でもね、『労働讃歌』のね歌詞を書くときに、「どんなフレーズがイイですか?」「どんな詞の感じがイイですか?」って聞いたときに『特撮』の『ヨギナクサレ』って曲があるんですけれども、それのイメージでっていう話が合ったんですよ。だから、(労働讃歌は)『労働者M』よりも特撮の『ヨギナクサレ』の方なんです。

―おお!そうだったんですね。

そうですね。歌詞的な意味だと『労働者M』の方が近いのかもしれないけれどもね。

―でも確かに曲調は全然。

そうですね!うん。

―ももクロと筋少で、光と闇のような。

うーん。そうだね、闇の労働讃歌だね!筋少の(労働讃歌の)方は。そこがイイと思う。
ま、単純にオヤジの労働讃歌とも言えますが。リアルですよね。50近い男たちが「働こう、働こう」って歌ったほうが、少女たちが歌うのとは、意味合いが変わってきますね。

これ、カラオケで男の人たち歌うときは、筋少バージョンの方がキーが上がってイイと思いますよ。

―そうですね。より密着感も高まるような気がします(笑)。

ステージでしか生きられない“お父さん”の組曲

―今回、『月に一度の天使』という楽曲が前編・後編にわたって収録されています。さらにその間に『愛の讃歌』がカヴァーされているという……。
これ、3つの楽曲でワンセットなんですか?

そうです! えーと、ココでしか生きるところがないんだ、とライブハウスで歌っているお父さんですね……あのお父さんはね、多分ね、ハコはね、下北の○○かね、○○○とかね、高円寺の○○○○かね、池袋の○○○とか、ぐらいの(小~中規模の大きさの)ところなんですよ。そこにね、自分でオケ持ってくる。自分でオケ持ってきてハードロックアレンジの『愛の讃歌』をギラギラの衣装着て歌うんですよ。お客、MAX40人だと思うんです。

―リアルですね。

リアルなね。ま、たまにありますよね。そういう人だと思うんですよね。そういう人が歌って、で、リハが終わって帰ってくると、っていう……なんか、僕の中では組曲ですね。 いいなあ、このお父さん(笑)、絶対、自分でオケ作って持ってくるんだよなあ。で、PAさんに「これかけてください」って持ってきて。

―テープ……テープですかね、やっぱり。

今時、DATとか持ってきて。いや、白盤で焼いてくるんじゃないですか。
で、(ステージで)飛んだりとかしちゃってね。でもお客さんも特にリアクションないみたいな。

― 一番つらいパターン……

ねー。「ああ、あの人、また愛の讃歌歌ってるよ」って。

『愛の讃歌』のアレンジ―「なんでこうなったか!」

―愛の讃歌、最後、ものすごいアレンジでしたね。なんかジャッキー・チェンの映画みたいな。

そうそうそうラストがね!
いやあのね!……あのね、僕、あんまりレコーディングは行かないんですよ。歌入れしか行かないんで。それはメンバーに対する絶対の信頼感があるので、お互いに。そういう風に分業制なんですけれどね、だからオケが出来上がってくるのを楽しみにしていたんです。
でも『愛の讃歌』のアレンジには「んん~~!!?」って最初思ったんですよ

―(笑)

「なんでこうなったか!」と思ったんですが、でもそれを、『月に一度の天使』で前後でサンドイッチすることで、むしろ、意味合いが出来たな、よかった。だから、ちょっと香港映画的な曲の後、例のお父さん楽屋に引っこんで、黄色いトラックスーツ着て、なんか、また、歌うんじゃないですか? (燃えよ)ドラゴン風の歌を。お客さん、ドン引く感じですけれども(笑)

―勢いだけは強い(笑)

そうそうそう。……居るもんなぁ、本当にそういう人。いや、悪く言ってるんじゃないですよ!

―わかります。リアル、という意味で。

リアルですよ。居るもんなあ……。

―タイトル通り。人生、途中でやめられないから。

“THE SHOW MUST GO ON”ですよ!

―続けていくしかない。

そうなんです。

―『愛の讃歌』のおしまいの部分が、映画っぽい終わりだけど、現実はそれでも続けなきゃいけない。娘にも会って、彼氏の話を聞く。

二つに切ったのは、単純に曲が長かったから、って部分もあるんですけれどもね。全部で8分くらいあるのかな。……だから分けたんですよ。

―分けたことによって組曲になって、かえってまとまりが良くなりました?

そうですね。そう思います。はい。

―いつもの大槻ワールドなのか、それとも(大槻さんの)現実とリンクしてたらどうしよう、なんて思いながら聴いていました。

いや、これはね、ベタな泣かせをやろうと思って。ベタに泣かすいい曲ってあるじゃないですか。ああいうのをやってみたかったんですね。たまにさだまさしさんが歌うような感じでね。「筋少版「親父の一番長い日」をやろう!」って作ったお話。

―そうだったんですか。でも、そこまでベタって言う風には感じませんでした。

あの殺人事件から着想

―僕が個人的にグッと来たのが『ムツオさん』なんです。

『ムツオさん』ね!!

―これ、モチーフは「津山事件」ですよね。
※編注・昭和13年/1938年に岡山で起きた大量殺人事件。1人の犯人によって30人が絶命。

どうでしょうねぇ。

―大槻さんが詞の中で“鬼”と呼んでるものが、彼の中にも、僕の中にもある。

誰の中にも。

―でも、曲調は明るめですよね。

これ、内田君が、……まあ、ディスコの前のソウルってやつですよね、(曲を)作ってきて、どうしようなあ、って思ってたらそういえば昔、心に鬼の住む男が、ミラーボールの回る中で踊り狂うみたいな詞をソロユニットで書いたことがあるんですよね。

だからそれを連想して。……あと、ちょうどその前にお仕事で、岡山に行ったんですよ。そしたら岡山って横溝正史で町おこしみたいのをやってんだけど、基本、連続殺人じゃないですか。しかも、ねえ、八墓村とか、モデルが実際にあるじゃない? なのに普通にそこでコスプレ大会みたいのとかやってるんですよ(笑)。

いや、「これはいい、ファンキーだ!岡山!ポップだね!」って思って。「いやあ、ムツオさんで町おこしかあ」みたいな感じで衝撃を受けて。

だから『ムツオさん』、ポップに行ってみようっていう気持ちがあったんですね。

―心の中に棲む鬼、っていうと『から笑う孤島の鬼』って曲がありました。

ありましたね!

―あの時からするとまた違った、もっとコアの部分だけ取り出したような印象がすごく。

ちなみに歌詞の中で、「今に見ておれ」ってのがあるんですけど、あれは、ええと、三十人殺しをモデルにした作品はいくつかあって、有名なのは横溝正史の『八墓村』なんですけれども、古尾谷雅人が演じた『丑三つの村』っていう映画がありまして。その中で、「今に見ておれでございますよ」っていうキャッチコピーがあったんですよね。「皆々様、今に見ておれでございますよ」この、ルサンチマン(※弱者が恨みや怒り、憎悪などの感情を持つこと)がね、うん、「非常に筋少的だな」っていうのがあって、引用させてもらいました。

―なるほど……。

“ムツオマニア”は今もたくさん居て、そういう人には、「いや、電話線はナタで切ってないだろ」とかいろいろツッコミどころがあるかと思うんですけれども、あくまでモデルにした歌詞なんで、そこはご容赦ください。
確かナタじゃないんだよな、……なんか……違うもので切ったんだよな(ブツブツ)。

―ナタだったような……気がするんですけどもねえ
※編注・この部分は不明

ナタでしたかねえ?!ナタが詞として強いと思ったんで。

ゴスロリホラーをやってみたかった『霊媒少女キャリー』

―『霊媒少女キャリー』ですが、昔、『イタコLOVE』って曲がありました。

ありましたねえ!『イタコLOVE』もありましたね。

―あっちは老婆が主人公だったけれども、今回は16歳の少女に。

自分の中では、その『イタコLOVE』との対比は全く無くて、それより『爆殺少女人形舞一号』って言う曲を何枚か前のアルバムで書いたことがありまして、あのテイストですね。ま、ゴシックロリータ……ゴスロリホラーみたいな感じ。をやりたかったんですね。『ゴスロリ幻想劇場』(2005年大槻ケンヂ著)みたいなことをやりたかったんです。

で、アーバンギャルドの(Vo.浜崎)容子さんに……これね、橘高君がね「アーバンの彼女をお呼びできないか」って、そう、彼の発案なんですよ。そうしたら、快く引き受けてくれて。

―世の中のウソにいいものがあるのか、悪いものがあるのか、みたいな、ちょっと『ドルバッキー』の時みたいな、問いかけも感じつつ。

なるほど!そういう見方もあるかもわからないですね。うん。

(後編に続く)[リンク]

筋肉少女帯 | 徳間ジャパン
http://www.tkma.co.jp/jpop_top/King-Show.html

筋肉少女帯 大情報局!
http://eplus.jp/king-show/ [リンク]

(インタビュー・撮影:wosa)

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記者:

「予備校生のような出で立ち」で写真撮影、被写体(スチル・動画)、記者などできる限りなんでも、体張る系。 「防水グッズを持って水をかけられるのが好き」などの特殊な性質がある。 好きなもの: 食べ物の写真、昔ゲーム(の音)、手作りアニメ、昭和、穀物

TwitterID: wosa

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