『ニモ』とカクレクマノミは違う種です
『ファインディング・ニモ』はカクレクマノミではなかったということに驚かされましたが、かわいいからとか、減ってきているからといって、放流しようという安易な考えが、生態系に大きな悪影響を与えるということを知ることができました。今回はにいむらさんのブログ『リバーリバイバル研究所』から『神奈川県立生命の星・地球博物館』の瀬能 宏さんにもご許可をいただき、転載をさせていただきました。
『ニモ』とカクレクマノミは違う種です
『ニモ』放流と報道されたとき、魚類専門家は大変心配しました。
『ニモ』放流の問題について、魚類の分類・保護が専門の神奈川県立生命の星・地球博物館の瀬能さんが外来生物MLに投稿したメールを許可を頂いて転載します。
補足:結果的には放流されたのは「ニモ」(クラウンフィッシュの仲間)ではなかったのですが、メダカの例 *1 のように、カクレクマノミであっても、自然に対して問題であることには変わりはありません。
瀬能さんの記事再録
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●映画の『ファインディング・ニモ』はカクレクマノミ(Amphiprion ocellaris)がモデルではありません。よく似た別種のクラウンフィッシュあるいはクラウンアネモネフィッシュ(Amphiprion percula)がモデルです。つまり、『ニモ』とカクレクマノミは分類学的には別種として扱われています。ディズニーの公式ホームページをはじめとして、「カクレクマノミのニモ」として宣伝されたため、誤った認識が広まったのです。現在では「カクレクマノミのニモ」とは宣伝されていません。さりげなく訂正したようです(笑)。
●近年、熱帯性海水魚の放逐事例がいくつかあります(きちんと報告しなければならないのですが、バス問題に忙殺されて未公表のままになっています)。クマノミの仲間では2003年に伊豆半島でスパインチークアネモネフィッシュが見つかっていますし、2004年には逗子でハマクマノミが見つかりました。後者の目的はわかりませんが、前者の例ではダイビングで観察するため、わざわざ住みかとなるイソギンチャクのあるところまで持っていったと推定されています。
●さて、養殖に成功したというカクレクマノミの産地はどこでしょうか。話の筋からしても沖縄のものは使っていないでしょうから、通常のルートだとフィリピンもしくはインドネシアと推定されます。
(注:この時点では放流されたクマノミの仲間が何か判っていなかった。そして、激減してから養殖するという趣旨から、減っている生息地から持ってくるということは考えていなかった。ニイムラ補足)
それを養殖して沖縄の海に放逐すれば、遺伝的に問題が起こることは必至です。上記の例から養殖個体を空いているイソギンチャクに放して回るなんてことが起こらないとは言えないでしょう。まさか、クラウンフィッシュを取り違えているなんてことはないでしょうが、今回のことが新たな外来種問題になる可能性は十分にあると考えています。減ったのだったら放流して増やしてあげようという発想はメダカで散々経験済みですし。
●そして同様に恐れるのはクラウンフィッシュをカクレクマノミ同様に養殖して日本のサンゴ礁域に放流することです。カクレクマノミとの競争が起こるでしょうし、両者が雑種を形成してしまうことも十分に想定されるからです。『ニモ』に日本でも会えたら楽しいなんて思うダイバーがいないとも限りません。
神奈川県立生命の星・地球博物館 *2
瀬能 宏
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『神奈川県立生命の星・地球博物館』の瀬能さんが外来生物MLに投稿したメールより転載
*1:「その3 なぜ放流がいけないか メダカを例に」 2005/09/11 『リバーリバイバル研究所』
http://blog.goo.ne.jp/niimuray/e/42c8e46eaaa04a0a6aa25ab21e20b291
*2:『神奈川県立生命の星・地球博物館』
http://nh.kanagawa-museum.jp/
執筆: この記事はにいむらさんのブログ『リバーリバイバル研究所』から『神奈川県立生命の星・地球博物館』の瀬能 宏さんにもご許可をいただき、転載をさせていただきました。
文責: ガジェット通信
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