ワクワクするような楽しい研究『三人の研究者展』レポート

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三人の研究者展

『ソニーサイエンス研究所』は自由で不思議な研究所。優秀な人たちが集まっているところ。大事なのは「中途半端はダメ、徹底的にやること」という、なんだかとてもおもしろそうなところなのです。研究を進めて学会に論文をバシバシ出すも良し、本を出すも良し、展覧会で直接いろんな人に楽しんでもらうも良し。アピール方法もなんでもアリなのです。

そんな『ソニーサイエンス研究所』の研究者である大和田茂さんとアレクシアンドレさん、そしてそのお二人に賛同した九州大学の藤木淳さんも加わって、渋谷のギャラリー『ル・デコ』で行われた「三人の研究者展」。

「三人の研究者展」
http://imposs.ible.jp/events/20100226/

そこで展示されていたのは、大人も子供も楽しめる、親しみやすくてワクワクする研究。例えば「コミュニケーションできるトイレ」だったり「2次元と3次元が連動して動いているもの」だったり、「声が虫になる」ものだったり。そんな展示物について研究者さんにお話をきいてみました。

『Communication Toilet』大和田 茂

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大和田 これは中にいる人と外にいる人を仲良くさせるためのトイレです。
トイレに入りたい人が来た時に、トイレの中にいる人は外の人に何分くらいたてば出られるかということを伝えることができます。ドアに音のセンサーがついていて、ノックの回数で伝えることを選びます。ドアについているタッチパネルを通して外にいる人にメッセージを送ったり、外にいる人が嫌な人だったら、トイレの匂いで攻撃することもできます。

トイレを待っている人からも中の人に気持ちを伝えることができます。待ちきれないということをノックで伝えたり、タッチパネルで「気にしないからがんばれ」とメッセージを書いて励ましたり。「がんばれよ」とか、「もうやばいっす」といった表情の写真を撮って中の人に送ることもできます。

実は外からも中の人を攻撃できます。便座を冷たくしたり、怖い音を出したり、強制的にカギを開けたり。とはいっても最終的には顔を合わせることになるので、なかなかひどいことはできないですけどね。

トイレの中にいる人と外にいる人が待っている間にコミュニケーションをして、カギが開いて、始めて顔を合わせる時はもう知り合いになっている。そんなトイレなんです。

記者 この研究を思いついたきっかけは何ですか。

大和田 最初は結構まじめだったんですよ。
病院で自分の前に何人待っているかというのが分かるのと分からないのとでは、待っている時のストレスが全然違うじゃないですか。トイレの場合はそういうのがほとんどないので、トイレに入っている人がどのくらいで出そうなのか分かる、そういうものが必要だと思って研究を始めました。

それだけでは人に受けなかったんで、だんだん尾ひれがついて、ちょっと攻撃するようにしたらおもしろいかなとかとかやっているうちに、こういうエンタメツールみたいになってしまったんです。

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記者 これからはどのような研究をされる予定ですか。

大和田 最近AR *1 というのがはやっていて、僕もすごくおもしろいと思って研究をしています。妖精(ようせい)さんを出していこうと思っていて、ちなみに『Communication Toilet』に出てくるのは『厠(かわや)っ子ちゃん』というトイレの妖精(ようせい)さんです。『萌(も)え木』という植物の妖精(ようせい)さんとコミュニケーションすることで、植物を育てる楽しさを増幅させるというコンテンツも作っています。

植物と人間の間って、あんまりリッチなコミュニケーションはできないですよね。コンピュータと人間というのが一番コミュニケーションできていないんですけど、エージェントという形で妖精(ようせい)を出すことで、もうちょっと楽しいことができるのではないかと考えています。例えば、妖精(ようせい)さんに対して「テレビがCMになったらコーラを持ってきて」と言うと、冷蔵庫から飲み物を出してロボットが運んでくれるとか。スイッチで入力するのではなく、なるべくコンピュータと自然言語でやりとりをできるようにしていきたいんです。

編集部注
*1:AR(Augmented Reality:拡張現実感)
実世界から得られる知覚情報に、コンピューターで情報を補足したり、センサーによる情報を加えて強調したりする技術の総称。 ※『デジタル大辞泉』小学館「拡張現実感」より

「2D. 3D」藤木 淳

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藤木 「2D. 3D」で表現しているのは、現実世界の方が仮想世界の法則に従って動いているという現実世界と仮想世界の逆転です。

床の上には『点ロボ』というマウスのような黒い半球状のロボットが置かれています。ディスプレーには、パソコン上で描いた3次元のコースと、現実世界の『点ロボ』の位置が合成された結果が映っています。ディスプレー上で目標地点となる白いホールを動かすと、現実の存在である『点ロボ』が目標地点があるはずのポイントに向かってコースに沿って動きます。ディスプレー上でコースや目的地を変更すると、『点ロボ』はそれにあわせて動きます。

記者 これからどのように研究を発展させていく予定ですか。

藤木 あえて現実世界と仮想世界のギャップを大きくしたいんです。

遠くにあるものが近くに来ると見かけの大きさが変わりますよね。今は遠くにあっても近くにあっても現実世界の『点ロボ』は同じ大きさです。これに遠近感をつけて近くに来た時は現実のロボットも本当に大きくしちゃったり、床をすごいデコボコにして、ディスプレイ上ではまっすぐ進んでいるんだけど、現実世界ではクネクネ進んでいるとか、そういうギャップを見せていきたいなと思っています。

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記者 なぜこういった研究をやりたいと思われたのでしょう。

藤木 もともと現実ではありえない、物理法則から外れたような表現をやっていました。今までは画面の中だけで完結していたんですが、これをもっと現実世界ものとリンクさせたら、また違った表現が展開できるのではないかなと思って、試しにやってみました。

記者 これからも発表などはされるんですか

藤木 はい、どんどんやっていきたいですね。

『Sound Bugs』アンドレ アレクシ

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アンドレ この作品を通じて音に触れる感覚をお届けします。

丸いマイクに向かって声を出します。そうすると、ディスプレイ上にしっぽの長い虫が生まれます。生まれた虫のしっぽをなでると、音が鳴るんです。虫たちはディスプレイ上を動きまわっていて、相手が見つかると、子供を生みます。

記者 今なにか増えましたね。

アンドレ 子供を作っているんです。生まれた虫のしっぽはいろいろな音の組み合わせになっています。

『Sound Bugs』は好きな楽器の音を取り込み、その音が虫となり、子供を産むことで新しい音がリミックスされ、勝手なタイミングで鳴るという作品です。予測ができない、100%コントロールできない楽器として、かなりアドリブ性の高いものが実現できます。

記者 この研究を思いついたきっかけは何ですか

アンドレ 音に触りたかったんです。最初は普通に波形を並べ、触ったら音が鳴るというふうにしていたんですけど、ちょっとつまらなくなって、落書きで目をつけたら虫みたいになったので、それを発展させて虫の世界をつくってしまったんです。

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記者 これからどのように研究を進めていきたいと思っていらっしゃいますか。

アンドレ これを携帯で動かしたいですね。いつも自分の周りの音を録音できるようにして、録音した音を虫にして自分の携帯の中で育てて、友達の虫と交換する。友達の虫と自分の虫が子供を作って、さらに新しい音を作っていく。そういうことを繰り返して、自分が作った音が世の中にどのように広がり、どのようにまだ残っているのかという楽しみもでてきます。そんなアプリケーションを作りたいです。

——
難しい理論がわからなくても楽しめる研究ばかり。どれもユーモラスでカワイイなぁという印象を受けました。研究者さんたちのこれからの展開にも期待しちゃいましょう。

『三人の研究者』の研究は3月28日(日)まで『野毛 Hana*Hana』でも展示が行われます。

週末は桜もきれいなころですね。お花見散歩ついでに、ちょっと立ち寄られてみてはいかがでしょうか。

「ATFOMU = TMU x AFO」展
会場:野毛 Hana*Hana
会期:2010年3月23(火)~28日(日) 10:00 – 18:00 入場無料
http://www.noge-hanahana.org/hanahanamenu/newsinformation.html

「ATFOMU = TMU x AFO」展 特設Webサイト

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