【MobileHackerz X 竹中直純 スペシャル対談:番外編】深水英一郎が訊く!

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このほど完結した、テレビの新しい楽しみ方を探る対談シリーズ。番外編として、未来検索ブラジル代表取締役の深水英一郎が登場。MIRO(MobileHackerz)と竹中直純(未来検索ブラジル取締役、SPIDERの仕掛け人)の2人の論客にテレビへの疑問をぶつけます。(バックナンバー:第1回 / 第2回 / 第3回 / 第4回 / 第5回)。

編集:ガジェット通信編集部・宮原俊介(shnsk)

■テレビはライブで「観られたがっている」
深水 テレビって基本的にライブで観られたがっていると思うんですよ。なんでですかね?

MIRO 視聴率という数字に出ることと、CMを観てもらわないと商売にならないから。

いくつか理由があって、まず視聴率という数字に出ないことには商売にならないから。あとは彼らはあくまでも放送しているコンテンツというのは、全部自分のものなんですよ。自分たちの所有物を見せてやっている。それを録画して手元に置かれてしまうと、「自分たちのを持っていかれた」という考えをしますよね。

竹中 理詰めでいくと商売にならない。
感情的には、後者の「自分たちのものを分けてあげてやってるのに」という考えなんでしょうね。これは多分に、戦後間もなくから続いている課題のような気がする。

今のテレビを牛耳ってるのはどの年代か知らないけど、現在のようにインターネットが出てきて、情報がフリーに「なりたがっている」ことが分かる人が上層部になったら、変わるんじゃないか。それで商売にならないことが重石になるので、今度は理詰めで「ライブで見てね」というのを言い出すかもしれない。

改変期の『TBS祭り』のライブ感とか、スポーツとか、それは大事だとテレビの人は思っていると思う。それを茶の間で見ることによって、その場を共有していることを日本中に広めることがテレビのいい効果でもあり、怖い効果でもある。ということじゃないですかね。

■“全録”環境VSオンデマンド配信
深水 NHKワンセグの受信料って、個々に課金できるんですか?

MIRO 世帯ごとですよね。
これ以上収益を拡大することは、みんな許さないんじゃないですかね。

深水NHKオンデマンド』(アーカイブ配信)を全テレビ局でやったら、24時間、全局を録画しなくてもよくなる気がするんですけど。

MIRO 全番組を無料でできるんだったら、要らないですね。でも、放送事故まで再現するのかというのは疑問です。

放送されたものがそのまま配信されるんだったら要らなくなると思うんですけど、24時間録画でできることって、番組を観るというのと、そのとき起こったことを追体験できるメリットがあるんですよ。ドラマとかバラエティとか、作り込まれた番組が再配信されるならかまわないんですけど、放送事故みたいなものがあったことを後から話を聞いて追体験しようと思ったら、そのまま来ないと意味がない。

竹中 インターネットで、既存メディアを信頼しないような空気が蔓延(まんえん)してますけど、放送局側がこれ以上改善するとは思えない。たとえば、毎日新聞にこんなこと書いてあったみたいなのが、突然消されたりするわけですが、ウェブアーカイブとか『ウェブ魚拓』っていうのがこれだけアラ捜しに使われていますよね。

放送局がオンデマンド配信をやったとして、放送の『ウェブ魚拓』がない状態だと証拠もなくなるわけですよ。放送したコンテンツが、放送局の事故でいつなくなるか分からないという状況を、消費者は意識が高いほど不安に思うと思う。

そういう意味で、自宅に全部録っておくニーズは消えないと思う。多数派になるかどうかは分かりません。オンデマンドでいいや、という人もある割合でいると思うし、必死になってインターネットは見たくないやって人もいると思うし。そういう市場ができるんじゃないですかね。基本料金が2万円ぐらいで済むなら“全録”するでしょうね。

■「情報談合」はあるのか
深水 『2ちゃんねる』で「情報談合」という言葉を見たんですよ。

竹中さんが「報道番組で一斉に報道したりすることがある」と言ってたんで、そういうことなのかなと。そういう談合ってあるんですかね。

MIRO 意識を持って、膝つき合わせて「こうしましょう」はないと思う。

なんというか、報道なんかは特に「バカの視聴者を頭のいい俺たちが啓蒙してるんだ」という意識はあって、自分たちが考えているシナリオにのっかるような視聴者のコメントが取捨選択されていて。上を握っているインテリ(パワーを持っている人)が、お互いに意識の共有をしているわけでなくて、同じ方向を見て同じことを考えている、ということはあると思う。

ちょっとした意識のすり合わせはあるかもしれないけど、「ちょっとこれはマズいよね」とか。

竹中 談合なのかどうか分からないですけど、放送禁止用語とかは流通してて、「これはOKなんだけど」みたいなことは共有されている。広い意味では談合ですね。

民放では『ニコニコ動画』って、絶対に声に出して発音されないんですよ。たぶんNGなんだと思う。『2ちゃんねる』もずっと前はそうでした。

MIRO 『2ちゃんねる』はかなり最近ですよね。

竹中 まぎらわしいのかも。「1ちゃんねるで2ちゃんねること言ってる」とか(笑)。

自分に対して脅威を及ぼすと思う人、かなり団結した力を持つ勢力に対してはですね、それが裏でどんなやり取りがされているか分からないですけど、(扱いが)ぞんざいになっちゃう。

MIRO 『2ちゃんねる』のメディア上での扱いもそうだと思うんですけど、人がやったんだったらウチもいいか、という横並び意識はあるじゃないですか。

■談合=感覚が一緒?
深水 もしくは、テレビ局はみんな感覚が同じで、同じ刺激を与えると同じ方向に向いてしまうとか?

竹中 そこまで画一化されてはいないと思うな。特にテレビ東京とか。

今だと、伊藤ハムを潰しにかかってると思いませんか?(編集部注:対談を収録したのは2008年10月30日)
全放送局の全ニュースで伊藤ハムをつぶさに観察してるでしょ。

MIRO ターゲットが同じになりやすいってのはありますよね。
それは談合してるというよりも、横並びじゃないですかね。
どこが詳しくやってたら、「ウチもやらないと観てもらえない」とか。
視聴者もそれに引きずられて、ちょっと前だとシンドラー社とかを報道しないとまずいような空気。

竹中 夕方のテレビでも、後ろに全放送局のモニターがあって何を放送しているのか分かるのに、自慢げに流してるのはどういうことだろうって思いますけど。

CNNみたいなものが日本でもできればいいのに。ニュースしかやりません、ということなら視聴率を集められると思うのに、なぜないんでしょう?

MIRO 取材力を確保するのが難しいんでしょうね。民法のニュースの取材力があって、それをベースに専門チャンネルをやるしかないでしょうね。CNNを一から立ち上げるコストはかけられない。

竹中 機材に関して言えば、CNNが立ち上がったときと比べものにならないほど安くなってますよね。それを編集するコンピュータも安くなってるし。「俺のまわりニュース」でも6時間ぐらい埋められるんですよ。4人いればできますよね。編集の人も必要ですけど。本気でやる人いないなあ。

深水 それやるならインターネットから出てくるんでしょうね。

このシリーズおわり

深水英一郎プロフィール:
ガジェット通信発行責任者。IT業界きってのイケメン社長。イケメンというだけで社長に選ばれた。また、イケメンというだけでどんどん仕事が舞い込んでくる。さらにイケメンというだけで人気ウェブサイトを多数プロデュースし、イケメンというだけで近所のおばあちゃんに「よく挨拶するいいこだねぇ」と言われる。もちろん成績はオール5である。

MIRO プロフィール:
MobileHackerzの中の人。
デジタルガジェットをこよなく愛するモバイル男。でも最近「自転車」にハマり、引越して電車移動の時間が短くなりでガジェットをいじる時間が少なくなってます……。

竹中直純プロフィール:
有限会社未来検索ブラジル取締役、武蔵野美術大学講師。
インターネット草創期より、数多くのWeb サイトやシステムの設計・運営に携わるプログラマー。技術家を自称している。現在は、システム開発のみならず、Web関連のディレクションやプロデュースを多数手がける。

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宮原俊介(エグゼクティブマネージャー) 酒と音楽とプロレスを愛する、未来検索ブラジルのコンテンツプロデューサー。2010年3月~2019年11月まで2代目編集長、2019年12月~2024年3月に編集主幹を務め現職。ゲームコミュニティ『モゲラ』も担当してます

ウェブサイト: http://mogera.jp/

TwitterID: shnskm

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