【ここは法廷だゼ!】「普段飲めない焼酎を飲んだ」被告人が殴った相手は
酔っぱらうと説教を始めたり、同じ事を何度も話し始めたりするようなタイプは面倒なだけで、まだ可愛い。今回は、面倒を通り越してアブナい酔っぱらいに変身した被告人の話である。
夏のある日、28歳の被告人は住んでいた蒲田で、見知らぬ女性に体当たりして転ばせ、顔を拳で殴り、さらに顔を足で踏みつけ、加療1か月の顔面打撲を負わせたという傷害の罪で逮捕、起訴されていた。
ひょろっとした長身で、見た目はただの若者。ヤンキー臭も皆無で、見た目だけだと犯罪から縁遠そうな気がするが、前科2犯。しかも暴行&傷害と、見た目によらず暴れん坊のようだ。
罪状認否では冗談みたいに消え入りそうな声で「間違いありません……ブツブツ(←聞こえない)……」と何か言っていた。暴れん坊のわりに、声が小さい。
冒頭で触れたように、被告人は今回、酔っぱらってこの事件を起こしている。冒頭陳述や被害者の調書によれば、見ず知らずの被害女性を見つけるやいなや、自転車を走行させながらいきなり被害女性に平手打ちしたという。被告人が乗っていた自転車は横倒しになったが、これについて「お前のせいだ、どうしてくれるんだ」などとイチャモンをつけたようだ。
ここで通りかかった男性が声をかけ、被告人を制止しようとしたところ、被害女性が逃げた。それを被告人は追いかけ、踏切のところで追いつき、体当たり。「警察に通報しますからね」と被害女性が告げると「かけろよ」と言い放った。だが実際電話を手に取ったところで、髪の毛をつかんで顔面を殴り始めたのだ。「ほお骨が折れるかと思いました。何回も足で蹴ったり、踏みつけたり、今まで生きてきた中で、こんな目に遭った事がありませんでした。女性として、というより、人間として計り知れない恐怖を感じました……」と被害女性は語っている。
酔っぱらって女性の何かにカチンときて犯行に至ったのだろうか? と気になって被告人質問に耳を傾けたところ……、
「どこで何をしていたか全く思い出せない」
と相変わらずの消えそうな声で述べていた。飲み過ぎてなんにも覚えていないとは、罪深すぎる。
「普段飲めない焼酎を飲んでしまった」
というが、飲めない酒を飲んだだけでここまで凶暴になってしまうなんて、なにかの病気じゃないかと心配になるほどである。とりあえず酒を飲むのは一生ヤメてほしいが「飲める範囲で飲める量を……ブツブツ(←また聞こえず)」などと語っており、性懲りもなく飲むつもりらしい。この若さで生活保護を受給していて、そのカネで酒を飲んだのかと検察官に追求されていたが、最近、生活保護を受けている被告人をよく目にする気がする。
見ず知らずの無抵抗な女性を殴るという、通り魔的な犯行を犯した被告人、示談金も父親に用意してもらったという。父親もちょっと甘いんじゃ……というより、示談金を払う金があったなら、被告人はなぜ生活保護を受けていたのだろうか……モロモロ気になるが、そこは分からずじまいだった。
このままいくと、いつか人を殺してしまうんじゃないんだろうか。“一生酒を飲んじゃいけない刑”とかがあればいいのに……。
画像引用元:flickr from YAHOO
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傍聴人。近著『木嶋佳苗 危険な愛の奥義』(徳間書店)、『木嶋佳苗劇場』(宝島社)ほか古くは『霞っ子クラブ 娘たちの裁判傍聴記』(新潮社)『あなたが猟奇殺人犯を裁く日』(扶桑社)など。好きな食べ物は氷。
ウェブサイト: http://tk84.cocolog-nifty.com/
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