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独特の世界観とストーリーの自主製作アニメーション 塚原重義監督最新作『端ノ向フ』

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自主製作アニメーション好きで『ウシガエル』『通勤大戦争』を知らない人はまずいないだろう。いずれも映像作家塚原重義監督の代表作だ。様々な賞を獲得し、最近ではNHKなどのテレビでも作品が放映されているが、9月21日に公開された久々の自主製作作品『端ノ向フ』(はしのむこう)は監督の意欲作だ。今回、塚原監督に作品への意気込みを聞くことができた。

――『通勤大戦争』(2005年)から満を持しての新作ですが、この度『端ノ向フ』を製作することになったきっかけは何でしょうか。

塚原重義監督(以下塚原)「構想が固まったのは2009年の夏です。それまで、企業をはじめとした様々なところに自分の作品を売り込んでいたのですが、ある日先方にこう言われたんです。『結局のところ、あなたが作品を通じて言いたいことは何ですか?』それまで世界観やギミックで作品を作り込んでいたのですが、もっと自分の作品の方向性を考えないといけないと、その時思ったのがきっかけです。完成まで3年かかっていることになりますが、集中して作った期間は約1年です」

――監督の作品はレトロフューチャーで世界観が一貫していますが、『端ノ向フ』のストーリーは何が土台となっているのでしょうか。

塚原「ベースとなる要素は大きく2つあります。いずれも幼少期の体験です。1つは主人公の青柳音羽がお母さんに“小鳥に連れて行かれるよ”と言われるシーン。あれは私が実際に両親に言われたことがモデルになっています。私の場合は“悪い子は子捨て山に捨ててくる”でしたが。2つめは小学生の頃、友達と遊んでいた時に感じていた“世界の境界線”です。いつも遊んでいた地域の先に隅田川があったのですが、壁のような堤防と潮の香りが相まって独特の境界線を作っていました。子供心に、あの先は行ってはいけない、あれが世界の境界線だと感じていました。『端ノ向フ』の川はまさに隅田川です」

――幼少期の体験が本作品に大きな影響を与えているんですね。

塚原「作中に、幼少の主人公が友達と橋を渡っていくシーンがありますが、あれも私の実体験が元になっています。探検のつもりで町屋にある尾竹橋を渡って隅田川を越えたのですが、渡った先で迷子になってしまったのです。その時感じた恐怖や、向こう側の雰囲気も作品の土台となっています。作中、怪活動弁士が難しい言葉で映画説明をするシーンがありますが、あの台詞の中に、作品のモデルとなった要素が沢山含まれていますので、興味がある方は分析すると面白いかもしれません」

――オチに、これまでの監督の作品にない要素がありましたが、何か狙いがあるのでしょうか。

塚原「これまでは世界観やギミックで作品を構成していましたが、今回はストーリー、特に強烈に印象に残る要素を入れてみました。トラウマになるような強烈さを感じていただけたら、まずは成功だと思います」

――映像の作り方の話に移ります。『通勤大戦争』から7年が経過していますが、使用ツールに何か変化はありましたか。

塚原「『通勤大戦争』はほぼ全て『Flash』で作っていますが、『端ノ向フ』は基本的に『After Effects』を中心に、通常のアニメを作るのと近い工法で作っています。他にも3Dを用いたりしていますが、どのツールを使うにしても、背景や絵柄に溶け込むように工夫しています。例えば私の作品には独特のメカが登場しますが、メカをキャラクターとして使う時と、世界の要素として背景的に使う時とでは、描画の方法を変えています。過去のFlash作品でも、キャラクターとして使う時は3DのモデルをFlashでトレースしてFlashの絵柄に合わせたりしています」

――音響効果も作品の成立に重要な要素だと思いますが、音声も品質が高かったですね。

塚原「今回は自分の自主製作では初めてスタジオを使用しました。声の収録から音響効果に至るまで、高品質に仕上げたかったので、そこは妥協しませんでした」

――スタッフロールを見ると、多くのスタッフが製作に関わっていて、これまでの作品より規模が大きいことが分かります。

塚原「今までごく少人数で作っていたので、今回は大変でした。一番大変だったのがスケジュール調整でした。本作品ではスケジュールが合うスタッフを見つけるところから初めて、それぞれ手が空いている隙に作業を振っていました。スケジュールが空いているタイミングを計るのが大変でしたが、皆さんプロなので、心配はなかったです。ただ、無理をお願いしたことも多々あったので、そこはスタッフの皆さんにはとにかく感謝するばかりです」

――最後に、これからの意気込みをお聞かせください。

塚原「『端ノ向フ』では、20代で培ってきた技術や経験を全て生かして、自分の自主製作映像の中で最高のものを目指しました。今後作るものにおいて、ややハードルを上げてしまった感じがしますが、それをも超える作品を作り続けていきたいです」

塚原重義監督最新作『端ノ向フ』(YouTube)

公式サイト『弥栄堂』
http://iyasakado.com/[リンク]

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記者:

架空紙幣作家。4歳の頃、聖徳太子の一万円札の美しさに心を奪われ、紙幣デザインフェチとなる。現在では架空紙幣創作のほか、架空新聞記事、架空広告、合成写真を用いた隣接世界訪問写真などを創作している。

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