「うつ」の同僚への正しい接し方

 「うつ」をはじめとする気分障害の診断数は増え続け、ここ10年で倍以上になったとも言われています。精神面の不調による一か月以上の休職者がいると答えた会社は70%にのぼるという調査結果もあり、もはや職場に「うつ」と診断された同僚がいるという状況は珍しくなくなっています。
 もし、自分の職場にそのような人がいる場合、彼らとどう接すればいいかというのは、職場全体で考えていかなければならない非常にデリケートな問題です。特に同僚としての立場では、できることも限られることから、よりむずかしい問題となります。
 臨床心理士の尾崎健一氏の著書、『職場でうつの人と上手に接するヒント』(TAC出版/刊)は、「うつ」と診断された人と職場の同僚としてどう接するべきか、という視点で書かれており、この病気の理解を深めつつ、彼らを傷つけない接し方が記されています。
 今回はその中から一部紹介します。

■休職期間中は本人との連絡は避けるべき?
 たとえば同僚がうつ病と診断され、急きょ休職することになった場合、満足に業務の引き継ぎを行えないケースが出てきます。
 この際、すでに休職期間に入ってしまっている同僚に不明な点を問い合わせていいかどうかは、悩みどころです。
 この問題について尾崎氏は、休職にあたっての手続き関係の事案や、休職中の待遇、連絡手段といった最低限の事務連絡を、本人の負担とならない方法(電話やメール、書面の郵送など)で伝えた後は、しばらくは連絡しないようにすべきだとしています。
 うつ病初期の治療は投薬と休養が中心となり、この際に重要となるのは、休むこと以外は極力考えないようにすること。
 その環境を作るためにも、あえて仕事を思い出させるようなことはすべきではないのです。

■復職した同僚へ何と声をかけるべき?
 うつ病と診断され休職していた人は「もしかしたら、もう自分の席はないかも」「自分がいなくても仕事が回っている。自分はもう必要ないのだろう」と考えてしまったこともあるでしょう。
 そんな人が職場に復帰してきたら、まずはその不安を取り払ってあげることが重要となります。
 「復職おめでとう!」
 「おはよう、おかえり」
 などといったあいさつで構いません。こちらから大きく、元気な声であいさつをしてあげましょう。
 本人はそれで受け入れられたと、ひとまずは安心できるはずです。

■復職したが、職場で孤立してしまっている同僚とどう接すればいいか?
 長期間休職してしまうと、復職しても周囲となじめずに孤立してしまうこともよく起こります。
 そんな同僚に積極的に話しかけるのがいいか、それとも一人にしておいてあげた方がいいのか、判断が分かれるところです。
 その迷いは、「少しでもよくなって、早く仕事になじんでほしい」という配慮のあらわれでしょう。それならば、その気持ちを本人に伝えて、「こうして話しかけているけど、もし負担だったら少し控えるようにするよ、どうかな?」などと、本人の希望を聞いてみるのは一つの方法です。
 彼をよく観察して「今、どう感じているのだろう」「いったいどちらなのだろう」と思ったら、それも本人に聞いてみましょう。そうしているうちに、彼の気持ちが、だんだんとわかってくるはずです。
 
 「うつ」と診断された同僚とどのように接するか、職場として彼らをどのように迎え入れるか、それは今や誰もが考えておくべきテーマとなっています。
 本書はQ&A方式で、うつ病の同僚と上手に接するための心構えや個別の対応例を紹介していますので、今すでにうつ病で休職中の同僚がいるという人も、そうでない人もぜひ参考にしてみてください。
(新刊JP編集部)



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