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ドキュメンタリーの新境地に動物行動学者も驚がく! 映画『シーズンズ』撮影の裏側がたくまし過ぎる

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『オーシャンズ』のジャック・ペラン&ジャック・クルーゾ監督コンビによる最新ネイチャードキュメンタリー映画『シーズンズ 2万年の地球旅行』(1月15日より公開中)。400人ものスタッフが集結し、製作費40億円、製作期間4年をかけて本作が挑んだのは、時代を超えた生命の歩みを描き出すことだ。最新の撮影機材を駆使して数々の動物たちを撮影しながら、歴史学、動物行動学、人類学、哲学、民俗学、植物学などの多方面から見つめた地球の変革を見事に表現した作品となっている。

本作で日本語版ナレーションの監修を務めたのは、動物行動学者の新宅広二先生。新宅先生は専門である動物行動学の研究に取り組みつつ、その分野の面白さを多くの人々に広めたいという熱意から、生物を中心とした自然科学系のテレビ番組や映画の監修を数多く務めている。そんな新宅先生に、本作が画期的な作品と言われる理由を教えてもらった。

――本作は、映像そのものはドキュメンタリーなのに、編集とナレーションを加えることで2万年の歴史を巡る“物語”を描いているのが面白かったです。

新宅:実を言うと、元々はナレーションが付いていない作品なんですよ(笑)。

――そうなんですか!?  そうすると、観客は「群れから一匹で離れるオオカミがいるのはなぜ?」「オスのトナカイが角をぶつけあうのはなぜ?」などの疑問をいちいち消化しきれずに終わる可能性もありますよね。

新宅:製作国であるフランスに限っては、ネイチャードキュメンタリーにナレーションを付けない手法がここ最近のトレンドになっているんです。とはいえ、映像が凄いというのは一目瞭然ですが、ナレーションなしに映画が意図するメッセージを受け取るのは明らかに困難です。かなりのチャレンジをしている作品とも言えますけど。

――ナレーションに関しては日本のオリジナルだったんですね。

新宅:日本で公開するにあたっては、配給会社のGAGAさんから「日本の観客に向けた作品にしたい」というリクエストがあったので、子どもから大人まで楽しめる日本の風土に合った作品を目指しました。基礎となるナレーション台本がないので、動物のどんな特徴をとらえた場面なのか、監督がそのシーンに込めた思いを読み取って、一つひとつ言葉に置き換えていくという作業には骨が折れました。

――鑑賞していて、博物館や動物園の行動展示に近い映像だと感じました。ただ動物を撮影するだけでなく、動物の行動に重点を置いていますよね。

新宅:動物行動学を専門とする私から見ても、まさに教科書のような映像だと感じましたし、新たな発見もありました。動物は“動く物”と書くことから分かるように、どんな動きをするのか理解するのが面白いんです。図鑑や活字では伝わらない魅力がたくさんあって、本作でも特徴的な行動や相手とコミュニケーションをとるための表情の変化などが丁寧に映し出されていましたね。

――カメラのレンズを通してはいるものの、動物たちとの距離がかなり近いのも驚きました。

新宅:もともと接写を得意とする監督ですが、それが可能なのはスタッフが動物の専門家集団で構成されているからです。あとは撮影の技法や使用しているガジェットに関しても非常に画期的と言えます。

――まずは接写の技法から教えてください。

新宅:安直な考えを持った撮影クルーの中には、野生動物たちに餌付けをしてしまう製作者もいるのが事実です。その場合、動物たちは人間に慣れはするものの、餌をもらうためにカメラの方を向いてしまうようになります。野生としての行動を失ってしまうんです。

――本末転倒ですが、手っ取り早い方法ですよね。

新宅:その点、本作に登場する動物たちは、あらゆる学術的な手法を撮影に用いています。例えば、鳥類が卵から生まれて最初に見た動くものを母親だと思う“刷り込み”の本能行動を利用して、カメラマンを親だと思わせて撮影するんです。刷り込み行動のない動物には、“人慣れ”という野生動物の調査の手法で、人間や機材を警戒しなくなるまで撮影を始めません。だからこそ、動物たちの自然な姿を接写できるようになるまで何年もの歳月を費やしているんです。元々はナレーションがないと言っても、本作の構成は非常に緻密な設計を持ち合わせています。撮影前にはしっかりと絵コンテを描いているんです。予測不可能な野生の動物を相手にですよ? まさに知識と忍耐力の結晶です。

――気が遠くなるような努力ですね……。オオカミの群れが馬の群れを追いかけるシーンも迫力満点で気になりました。どうやったら疾走する群れを何台ものカメラで追いかけて撮影することができるのでしょうか? 思わずCGかと疑ってしまったのですが(笑)。

新宅:あの場面は、本作の撮影のために独自開発された無音電動バギーを使用しています。大きな音が出ないので動物が警戒することはありませんし、CO2を排出しないので森林の環境にも配慮しているんです。そのおかげで、世界で初めて“疾走する群れの目線”で動物を撮影することに成功しました。オオカミの群れがチームで役割を分担し、頭脳的に狩りをする様子がバッチリ映し出されていましたよね。訓練されたタレント動物ではなく、すべて野生の動物だということを考えると、まさに歴史に残る名シーンだと思います。

――後半部分は「かつての人間は知識がないから野生動物を恐れて排除した」というのがひとつのハイライトとして重要なメッセージになっていると思うのですが、動物の生態と人類の歴史を知る上でも、これ以上の教材はないのではないでしょうか?

新宅:本作では自然に生息する動物たちの四季の暮らしが描かれます。しかし、1年間の生活を映した映像というわけではありません。『シーズンズ 2万年の地球旅行』というタイトルが示す通り、氷河期から現在に至る2万年の歴史を四季に例えて描き出しているのです。その中には動物と人間の関係性を描いたセクションもあり、乱獲や森林伐採が横行していた時期を冬に例えている。でも、厳しい冬の後には必ず春が来るので、共生を目指して取り組んでいこうというメタファーですよね。非常に壮大な話で、感動的でもあります。

――期間限定で子ども料金500円ということなので、ぜひ多くの子どもたちにも観て欲しいですよね。

新宅:かつて迫害された動物たちがかわいそうだと思う子もいれば、いろんな動物の姿にワクワクする子もいると思います。メッセージの受け取り方に様々な余地が残された作りになっているので、ぜひ素直に楽しんでほしいです。

――本日は貴重なお話ありがとうございました!

映画『シーズンズ 2万年の地球旅行』本予告(YouTube)
https://youtu.be/SdLrFO06yM8

『シーズンズ 2万年の地球旅行』公式サイト:
http://gaga.ne.jp/seasons/

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記者:

PR会社出身のゆとり第一世代。 目標は「象を一撃で倒す文章の書き方」を習得することです。

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