ガジェット通信 GetNews

見たことのないものを見に行こう

体験を伝える―『ガジェット通信』の考え方

面白いものを探しにいこう 本物を体験し体感しよう 会いたい人に会いに行こう 見たことのないものを見に行こう そしてそれをやわらかくみんなに伝えよう [→ガジェ通についてもっと詳しく] [→ガジェット通信フロアについて]

「今この時代に漫画家を目指す人達へ」喜多野土竜×一色登希彦×スチームトム 漫画関係者ディープ座談会

今この時代に漫画家を目指す人達へ

喜多野土竜さんが「電子書籍と出版の未来」「プロレスと電子書籍」と題しおこなったTwitterでの連続投稿は、出版界の現状を知る手がかりとなるとして多くの反響を呼んだ。それを受けて今回は、さらに漫画に関する話を掘り下げるべく、元発言者の喜多野土竜さん、漫画家の一色登希彦さん、新人漫画家のスチームトムさんにメールでの座談会をおこなっていただいた。テーマは「今、この時代に漫画家を志望する人は何を考え、どこへ向かえばよいのか」というもの。座談会の進行は新人漫画家のスチームトムさんにお願いした。漫画の作られ方に興味のある人、出版の未来について興味のある人、そしてもちろんこれから漫画家を目指す人にとってヒントに溢れる必読の内容。ブックマークしてじっくり読んで欲しい。

●参加者
喜多野土竜:元編集者・漫画原作者。喜多野さんの「電子書籍と出版の未来」「プロレスと電子書籍」と題した連続ツイートがきっかけで、この座談会が実現した。
一色登希彦:漫画家。「日本沈没」「モーティヴ」「ダービージョッキー」等。
スチームトム:新人漫画家。社会人生活を続けていたが、2010年に突如仕事を辞め独立。ゼロから漫画家の道をスタートしたばかり。この座談会の発案者で進行役。

●喜多野土竜さんのTwitter連続発言をきっかけに

スチームトム:それではよろしくお願いします。喜多野土竜さんはTwitterで新人の本を置いてくれる場所や機会が、昔に比べて少なくなったということをおっしゃってました。これに関して1995年がピーク だったという話はきいたことがあるんですが、1995年以前と以後で、実際に大きく新人の数に変化があったのでしょうか?

土竜:細かな統計はないですが、むしろ新人はデビューしやすい状況ができたような気がします。また大手の場合は定期的なマンガ賞デビュー枠がありますから、そこまで増減はないはず。大手出版社のそこそこ部数がある本と、中堅どころの出版社では、事情が変わりますから。中小は安価な新人を使わざるを得ず、看板作家数名と新人という配置になりがちですね。ただ、方針は編集部ごとにまちまちなので、他社の中堅どころでは引き抜きに注力するところもあります。コミケでの新人スカウトから、即戦力のエロ系作家に声をかけたりと、方法はいろいろです。ここら辺は、スポーツのチーム編成方針と似ていて、方針があったりなかったりバラバラ。問題は、マイナー誌からのデビューは容易になっても、原稿料が上がりにくくなる点かと。佐藤秀峰先生も原稿料値上げ交渉の詳細を、自サイトで語っていらっしゃいましたが……。

一色:土竜さんと同様、数字を明確に挙げる事が出来ませんが、自分は逆に新人のデビューの困難さを感じることが多いです。雑誌の新人賞に「準入選以上は雑誌掲載確約」といった感じの謳い文句は多々ありますが、実際に「確約」を勝ち取ったという結果発表と受賞作の雑誌掲載を目にする事は稀です。トムさんのご質問「実際に変化があったのか?」には数字的根拠を自分はもたないので、その点にはお答えする事は困難である事を認めておきます。同時に、自分が(土竜さんも?)提示したい「新人の受難」の核心は、数字で表しにくい事柄だと思っています。

土竜:数字で比較するなら、新創刊と廃刊雑誌の数がひとつの指標になるかもしれませんね。厚さの違いはありますが、作品発表できる雑誌が何冊増えたか減ったかは、数字化可能。中綴じ隔週誌を2として、月刊誌を1、週刊誌を4としてカウントすれば、参考になるかな? いずれにしろ内側にいる人間の感覚的なモノですが、手詰まり感を感じてるのは事実です。

スチームトム:ツイッターで土竜さんがヤングサンデーの事もつぶやいておられたので、こちらも一つご質問させてください。これは僕がそう思っていたという話ではないのですが、ヤングサンデー休刊時、私の周りのヤングサンデーファンはとても悲しんでいましたが、それと同時に不義理な終わり方に憤りを感じていたようです。雑誌編集者は毎週買ってくれているお客たちに恩を感じているのか疑わしいと言ってました。「単行本買ってください」や「移行したから今後はこっちの雑誌買ってください」というような事を投げやりに言われても、納得できない。「我々は毎週数百円の掛け捨てファンクラブ会員ではない!」とその友人は声を荒らげていました。

土竜:元編集者の立場から言わせて頂くと「雑誌を潰したい編集はいない」という点は強調したいです。読者としては「不義理」や「投げやり」に感じても、出来うる最大限の努力はしているはず。雑誌の休刊(という名の廃刊)に立ち会うのは、やはり編集者としては辛いものですから。ここら辺は一色先生のほうが内情は見ていたと思うのですが、増刊も出して対応しました。それでもこぼれてしまう作品・作家は多いわけで、読者には承服などできないのでしょう。自分なども、外野のいち読者として『タナトス』をとても評価していたんですけれど終了。ただ、編集者もしょせんサラリーマンですから、会社の決定には逆らえない部分が、あるのですよ。たまに出版社を飛び出す編集者もいないわけではないですが、圧倒的に少数派ですから。また読者も不満は述べても、値段が倍になっても良いから買い支える人は少数派でしょう。

スチームトム:確かにそうですね。私のその友人は倍になっても買う少数派だったみたいですが。

一色:ヤングサンデーのこと、今になって醒めた言い方をするならば、どれだけ漫画家や読者が思い入れをしていたとしても、雑誌はどこまで行っても出版社の「商品」ですからね。出版社が、自身の収支が苦しいからと自社商品を生産中止にすることを、2百数十円払っていた以上に何か物申す権利は無いんですよね。ただ、掲載作品に対してそうであるように、雑誌の盛衰にワクワクしたりガッカリしたりする筋合いは有ると思っています。ひとつの雑誌を葬ってまで、その先に見せたいビジョンがあるなら、それでワクワクさせてもらいたいなと思うわけです。そのことは語って良いはず。その点において、ヤンサンの消滅とその後にはガッカリした、ということです。

土竜:小学館のフォローをしておきますと、島本和彦先生『吼えろペン』コンビニ配本版を参照してみてください。こちらの中で廃刊時の編集長が、島本先生と次の未来(新雑誌)を語るシーンがありますから。もっとも、予定は未定にして決定にあらず、というのが出版業界にはよくありますけどね。それでも、前身の少年ビックからの愛読者としては、次でもワクワクさせてもらいたいもんです。

1 2 3 4 5 6次のページ
深水英一郎(ふかみん)の記事一覧をみる
深水英一郎(ふかみん)

記者:

トンチの効いた新製品が大好き。ITベンチャー「デジタルデザイン」創業参画後、メールマガジン発行システム「まぐまぐ」を個人で開発。利用者と共につくるネットメディアとかわいいキャラに興味がある。

ウェブサイト: http://getnews.jp/

  • 誤字を発見した方はこちらからご連絡ください。
  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちらから
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。