Album Review:Nao Yoshioka『RISING』 ネクストジェネレーションが生み出した世界標準の和製ソウル・ミュージック
ニューヨークのソウルの殿堂、アポロシアターで行われるアマチュア・ナイトで準優勝したキャリアを持つことでも知られるシンガー、Nao Yoshioka。本場仕込みの新世代のシンガーが、メジャーデビューアルバム『RISING』でその実力を改めて見せつけた。この作品は、日本だけなく世界を意識した1枚に仕上がっている。
世界を見据えているのは、楽曲の製作過程からもよくわかる。レコーディングは、東京、ニューヨーク、セントルイス、ロッテルダムの4都市3か国で行われた。彼女は、その都市を訪れ、各地の空気感をこのアルバムに取り入れたかったのではないだろうか。
プロデューサー陣には、アレサ・フランクリン、ホイットニー・ヒューストン、ビヨンセなどに楽曲提供してきたアメリカのゴードン・チェンバースをはじめ、ブライアン・オウエンズ、シャーマ・ラーズなど世界の第一線で活躍しているメンバーが名を連ねる。さらに、バンドには、アレサ・フランクリンの現行バンドメンバーやプリンスの専属トランペッターなど名プレイヤーが参加。彼らたちのバックアップとNao Yoshioka自身のエッセンスを合わせて昇華させたのが『RISING』だ。
アルバム全編を通して感じることができるのは、ソウル通から支持を受ける彼女のパワフルかつシャープな歌声と楽器の生音感。ゴスペル、ブルース、R&Bなどを取り入れて、自分流に聴かせることができる彼女の歌と、楽器の質感が伝わってくるような音が交わり、聞いていると非常に心地良いアルバムになっている。
アルバムの幕開け1曲目「Love Is the Answer」から、彼女の伸びがあり力強い歌声は全開。自然に体が動いてしまうリズムと美しいコーラスとがマッチし、一気にNao Yoshiokaの世界に連れて行ってくれるファンキーな1曲だ。また、このアルバムではアレサ・フランクリンの「Rock Steady」をカバーしている。ライブでは敬愛しているアレサの曲を歌っている彼女だが、原曲の良さはそのままに自分の持ち味のシャープな歌声で歌い上げている。ここまでのカバーは、心からアレサをリスペクトしていないとできないことであろう。先行配信していたバラード「Dreams」は、ゴードン・チェンバースのプロデュースによるもの。繊細なバラードで「夢は叶う」と高らかに、かつ力強く歌っている。英語だが是非歌詞をご覧いただきたい。彼女の感謝の気持ちと意思表明がこの曲に表れているように感じる。
今回のアルバムで、Nao Yoshiokaは“和製ソウル・ミュージックの新しいスタンダード”を示した。彼女は日本人が歌うソウルのレベルを次の段階へ上げていくであろう。そして、今後はさらに広く世界のフィールドで活躍していくことができるのは想像に難しくない。
このアルバムのリリースパーティが6月15日にBillboard Live OSAKAで行われる。この公演限定メンバーによるフルバンドセットで、彼女がどんなパフォーマンスを見せてくれるのか。見ごたえのあるライブになることは間違いない。
text:中谷聡
◎Nao Yoshioka「Dreams」MV
http://bit.ly/1EVqmIc
◎リリース情報
『Rising』
2015/04/08 RELEASE
YAMAHA MUSIC COMMUNICATIONS
YCCW-10259 2,700円(tax out.)
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