”ガーリーとストリートのいいとこ取り”はキャラ不明!? 紫文字系ファッション誌『Violetta』の明日はどっち? [オタ女]
双葉社が20代女子をターゲットに新創刊したファッション誌『Violetta』(双葉社・税込620円)。『CanCam』(小学館)などの”赤文字系”と、『Zipper』(祥伝社)などの”青文字系”をミックスした”紫文字系”を標榜し、イマドキ”KAWAII”を発信していくとしています。表紙には、1960~70年代に活躍したイラストレーター内藤ルネ(1932~2007)の”ルネガール”を起用。ストリートをメインにしながら、モードも意識されていることが見て取れたのですが……。
実際に紙面を見てみると、岸本セシルさんをモデルにした「ロマンティック・ボヘミアン」と題したグラビアや、すみれ色のさまざまなアイテムを集めたページに、”紫文字系”の片鱗を感じさせるものの、紹介している着回しやアイテム、メイクなどが雑把でイメージが固まっていない印象を抱きます。
20Pから「お菓子なコーデのおかしな世界」と題したスイーツをモチーフにしたコーデやスタイルを8ページにわたって紹介しているのですが、既にそのようなアイテムを得意とするブランドは数多くあるにも関わらず、ほとんどチョイスされていないあたりに不自然な感じが拭えません。
その次に来るのが、agnes b、リーバイス、A.P.C、コンバースとしたブランドのベーシックデザインのリスト。「トレンドに流さない」アイテムは確かに大事ですが、前後の特集との落差に戸惑います。
ファッション誌定番の一ヶ月着回しの設定を見てみると……。モデルの高橋由真さんが春っぽいトレンドとベーシックなアイテムを組み合わせて31日のシーンを乗り切っていく内容。なんでも、ゆまさんは化粧品メーカーでPRアシスタントとして勤める25歳で、毎日違う服で出社するのが目標。都内で両親と3人暮らしで「そろそろ彼氏が欲しい今日この頃」なのだとか。これ、ちょっと前に話題になった”キラキラ広報”のみたいじゃないですかーヤダー!
肝心の着こなしでも、女子会やフットサルやガーデニング(!?)に忙しく、お仕事では遅刻したりブレイクが多かったり……なんか微妙。ただ、彼氏ゲットに向けて買う襟付きピンクワンピと花柄ミモレ丈スカートはセンスが光ります。最後の顛末はここでは省きますが、どれだけの人が共感できるか、何ともいえないところです。
このほか、ジャン=リュック・ゴダール監督の『気狂いピエロ』をオマージュした有村架純さんと千葉雄大さんのグラビアや、ブリジット・バルドーの特集、パリやトゥールーズの紹介といったフランス色の強い特集も組まれていて、最近『GINZA』(マガジンハウス)が別冊付録をつけた伝説的ライフスタイル誌『オリーブ』のエッセンスも見てとれます。
しかし、”カワイイ”とは日本の中で脈々と培ってきたもの。表紙の「ルネガール」を描いた内藤ルネも、中原淳一(1913-1983)をはじめとする昭和初期の少女文化を受け継いで、現在の”KAWAII”カルチャーが花開く源泉となっています。創刊号を見る限り、『Violetta』はそのような歴史に踏み込まず、「カワイイ」とされる情報をつまみ食い感覚でピックアップして並べているようなイメージを持たざるをえません。
『Violetta』の次号は2015年5月19日発売予定とのこと。現時点では読者層のペルソナやキャラクターが不明で、”紫文字系”というジャンルが定着できるかちょっと難しそうですが、募集中のアンケートをどのように誌面に生かしていくのかを含めて、注視したいところです。
Violetta [ヴィオレッタ](公式サイト)
http://violetta-mag.com/
乙女男子。2004年よりブログ『Parsleyの「添え物は添え物らしく」』を運営し、社会・カルチャー・ネット情報など幅広いテーマを縦横無尽に執筆する傍ら、ライターとしても様々なメディアで活動中。好物はホットケーキと女性ファッション誌。
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