【大人になっても読みたい児童文学】『こそあどの森の物語』(作・絵 岡田淳/理論社)

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昔からどうしても忘れられない、あのシーンやあのフレーズ、なぜだか分からないけれど、大人になってからも、うっすらと覚えている。そんなふうに、幼い頃に読んだ絵本や物語を、ふと思い出してしまうことはありませんか。この記事では、児童文学から1冊を取り上げてご紹介します。今回取り上げるのは、ふしぎな森に住んでいる、個性豊かな住人たちの物語!『こそあどの森の物語』(作・絵 岡田淳/理論社)です。

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『“こ”の森でもなければ “そ”の森でもない “あ”の森でもなければ “ど”の森でもない こそあどの森 こそあどの森』。『こそあどの森の物語』のカバーに必ず書いてあるフレーズです。この本を読んで、“こそあど言葉”を覚えたという方もいらっしゃるんじゃないでしょうか。
1994年に第1巻『ふしぎな木の実の料理法』が出版され、2013年には第11巻目となる『水の精とふしぎなカヌー』が発売されました。そして昨年、シリーズ20周年を迎え、今なお続いている人気シリーズです。

『こそあどの森の物語 (1) ふしぎな木の実の料理法』

主人公のスキッパーは、こそあどの森に住んでいる内気で口下手で、空想にふけることが好きな少年。博物学者のバーバさんと一緒に暮らしています。だけど、バーバさんは、しょっちゅう旅に出るので、彼はほとんど1人。それでも寂しいと思ったことはありませんでした。旅行中のバーバさんから、あの“ふしぎな木の実”が届くまでは……。
第1巻『ふしぎな木の実の料理法』では、料理法の分からないふしぎな木の実のをめぐるお話です。そのなかで、スキッパーとこそあどの森の住人たちとの交流が描かれています。住人とは、ポットさんとトマトさんの夫婦、作家のトワイエさん、大工のギーコさんと姉のスミレさん、名前がころころ変わる双子。今まで交流の無かった彼らと出会い、スキッパーの気持ちに変化が訪れます。お気に入りの図鑑を見ても、上手に空想することができなかったり、好きだった静けさが落ち着かなくなったり。その気晴らしに散歩に出掛けたスキッパーは、洞窟で2人の旅人に出会います。そして、木の実の料理法とは――。
他者との交流を経たことで、外の世界を知り、広がっていく自分の世界。大勢で居ることを知ったからこそ分かる、1人で過ごす時間の大切さ……。そんなことが押し付けがましくなく、自然に描かれています。ちなみに、物語の最後に出てくる、トマトさん直伝の美味しいジャムの作り方は必見!こんなふうに作るジャムは美味しいこと間違いないでしょう。どんな方法かというと、ぜひ読んで試してみて下さい。

『こそあどの森の物語 (11) 水の精とふしぎなカヌー』

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最新作(2015年3月現在で)11巻目『水の精とふしぎなカヌー』は、足を怪我したトワイエさんを心配する水の精の物語、双子が見つけたふしぎなカヌーの物語の2編から成り立っています。なかでも、水の精の物語では、困難に出会った時のスキッパーの考え方が印象的でした。何かに悩んだ時、人の意見を聞き、それを取捨選択するのは、とてもシンプルなことですが、大人になると難しくなってしまうこともありますよね。スキッパーは、こそあどの森の住人たちなら、どうするだろうと、心の中で問いかけます。ポットさんならこう言う、スミレさんなら……。そんな自問自答の中で、彼なりの答えを見つけます。そして、勇気を出して、一歩を踏み出します。それは1巻からは想像できない成長でした。その他にも、トワイエさんのトリオトコのお話、双子の小さなカヌーへ膨らませていく空想など、現実と非現実が混じり合うような内容で、読み終わった後の余韻がとても心地良い作品です。

児童文学というジャンルにあっても、大人でも十分に楽しめる『こそあどの森の物語』。シリーズ全体を通して、他者を否定するのではなく、受け入れる温かさや強さを感じます。
この森でも、あの森でも、その森でも、どの森でもない “こそあどの森”。一体どこにあるんだろう。もちろん、物語だと分かっている。でも、どこかにこんな森があったらいいなあとしみじみ思わせてくれる1冊です。

『ふしぎな木の実の料理法』
作・絵:岡田淳
出版社:理論社
定価:1700円
発行:1994年12月
参考:http://www.rironsha.com/?pid=27243306[リンク]

『水の精とふしぎなカヌー』
作・絵:岡田淳
出版社:理論社
定価:1700円
発行:2013年10月
参考:http://www.rironsha.com/?pid=64078378[リンク]

※画像は、株式会社 理論社様(http://www.rironsha.com/[リンク])と絵本ナビ様(http://www.ehonnavi.net/[リンク])より引用しています。

※この記事はガジェ通ウェブライターの「すえこ」が執筆しました。あなたもウェブライターになって一緒に執筆しませんか?

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