終わってみれば、貧困ビジネスへの情熱しか感じられなかった『情熱大陸』

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Joe’s Labo

今回は城繁幸さんのブログ『Joe’s Labo』からご寄稿いただきました。

終わってみれば、貧困ビジネスへの情熱しか感じられなかった『情熱大陸』
先週の月曜日、テレビ朝日の『スーパーモーニング』で世代間格差特集が組まれ、若者マニフェストからも小黒、高橋の2名ほど出演した。その際に、堀紘一氏が森永卓郎に言ったセリフが印象的だった。

「あなたみたいに年収一億円稼いでいるくせに貧乏人の味方ぶるのは卑怯(ひきょう)だ」

たぶん、森永卓郎(モリタク)と堀氏の年収はそんなに差がないと思われる。でも、二人の立ち位置は180度違う。

簡単に言ってしまえば、会社作って雇用を生み出すことで自身も豊かになったのが堀氏。
一方、この国から雇用をなくすことで自分だけ肥え太ってきたのがモリタクということだ。

昨夜のTBS『情熱大陸』が典型だが、メディアは今も昔も“強欲な金持ちと貧しい弱者”という構図が大好きだ。当然だろう。「連合のせいで非正規雇用労働者はこんなに苦しんでいます、格差是正には解雇規制の緩和しかありません」なんてやったら視聴者の反発を招きかねないし、何より制作会社に丸投げしつつ安全圏からストまでやってる自分たちは何なのって話になる。

だからそういう水戸黄門的アングルで出演者を組もうとするが、現実はそんなに単純な構図ではないから、なかなかマッチする出演者がいない。特に、ある程度政治や経済に明るい専門家となるとなおさらだ。そこに、モリタクの付け入るスキがあったのだろう。

「弱者に優しく視聴者に心地よい話しかしない経済アナリスト」という芸風を開花させた彼は、メディアの描くシナリオ通りの役を見事に演じ続けてきた。

僕も出演したテレビ朝日の『サンデープロジェクト』*1 では“派遣法改正に携わった当事者”という肩書で颯爽(さっそう)と登場し「あれは間違いだった。大企業は内部留保でいくらでも正規雇用できる」とぶちあげ、議論を3段階くらい低レベル化することに多大な貢献をしてくれた。

昨夜の番組では「オモチャ購入に一億円以上使った」と豪語しつつ、「お金持ちは働かずに稼ぐ人たちだ」と切って捨てていた。そんな人間に「ぜんぶお金持ちが悪いんです」なんて隣で言われたら、堀さんじゃなくても怒るだろう。

*1:「森永卓郎先輩、そろそろ“貧困ビジネス”はやめましょう」2009/2/12『J-CAST会社ウォッチ』
http://www.j-cast.com/kaisha/2009/02/12035724.html

まあ、そんなこんなで今も正規雇用と非正規雇用のダブルスタンダードは変わらず、それどころか派遣法の規制法案まで準備されつつある状況だ。これでまた、数万人が職を失うことになる。ほとんどすべての実務者が反対し、というか派遣労働者の多くも反対しているにも関わらず、それが実現してしまうほどの世論を形成してきたという意味で、僕は電波芸人とメディアの罪は重いと思う。「テレビなんてもうバカしか見てないからいいじゃないか」という人もいるだろうけど、そういうバカをどんどん底なしのバカにしている点は、やっぱり批判されるべきだと思う。

そういう意味では、スーパーモーニングの後半で、モリタクが都内中央区にオープンしたオモチャ博物館が紹介されていたのは、何とも皮肉な話だ。

虚構のシナリオを演じた虚構のヒーローによる、オモチャという虚像の博物館というわけだ。

オモチャのコレクションだけで3000万円。「博物館用のビルも買いたい」*2 とあちこちで言っていたから、ひょっとしたらビル丸ごと買ったのかもしれない。いやあ、もうかってますなあ、森永先輩。氏のメディアでのご活躍でどれくらい失業者が増えたのかはわからないけれども、とりあえず博物館の受付で一人か二人くらいは雇用が増えたわけだ。

*2:「モリタクの資産の大半は普通預金だった!」2010/9/30『Yahoo!JAPANニュース』
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20100930-00000301-zai-bus_all

ちなみにこのノベルティミュージアム、うちから徒歩2分の近所なので訪問してみたところ入口にはテレビ局などからの花輪がたくさん飾ってあった。派遣労働者やフリーターのユニオンは、菊の花でも贈ってやったらどうか。“金持ちの貧乏踊り”が見透かされはじめていると知れば、モリタクも少しはおとなしくなるだろう。

執筆: この記事は城繁幸さんのブログ『Joe’s Labo』からご寄稿いただきました。

文責: ガジェット通信

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