BOMI『BORN IN THE U.S.A.』インタビュー

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BOMIのニューアルバム『BORN IN THE U.S.A』。本作で彼女は過去の自分を埋葬し、新たな人生を踏み出すまでの物語を描いている。全体的にシンセを軸にした構築の比重が高まったサウンドは、これまでより格段に洗練されシェイプアップされている。そして、必然的にBOMIの歌唱力も過去作と比べものにならないほど浮き彫りになっているのが何より喜ばしい。おめでとう、新生BOMI。

 

——ホントにいいアルバムができましたね。

BOMI「ありがとうございます」

——それはそれで間違いないなく必要な時期だったもと思うんだけど——今まではサウンドも歌のアプローチもギミック重視だったと思うし、カラフルにしなきゃいけないという観念があったと思う。でも、もうモノクロの表現性も込みで歌ったほうが説得力あるじゃん、っていう堂々としたコンテンポラリーなポップミュージックがクリエイトされていて。おめでとうって言いたいです。

BOMI「うれしいです。やっぱり今までの作風とは一線を画すものを作りたいという明確な意志があって作り始めた楽曲たちなので。必然的に色が変わりましたね。モノクロのイメージはもともとあったし」

——そういう発想に至ったのは、メジャーレーベルから離れて、自分が体現すべきポップミュージックとは何なのかって本気で対峙したからだと思うんですけど。

BOMI「うん、そうですね。今までは周りの人が求めるものに翻弄されてしまっていたところがすごくあったので。環境が変わったときに思ったのは、やっぱり自分でコントロールできないと私は音楽を楽しめないんだなって思ったのが大きくて」

——うん。それは本質的な問題で。

BOMI「そうなんですよね。作品の方向性も含めて、自分がしっかり舵を取らないと私がやっている意味がないと思ったし。もう、キュートな感じとかキッズが反応するとかじゃなくて、シンプルに歌がよく聴こえて、サウンドがカッコいいものを作りたかったんですよね」

——うん、少なくともBOMIちゃんに関しては10代の青文字系ファッション誌読者をターゲットにしてとか、そういうベタな発想はいらないと思うんですよね。表層的な戦略にとらわれてシンガーとしての本質がスポイルされるなら、しんどくなるのはBOMIちゃん自身だと思うし。

BOMI「そうですね。今の時代、『カワイイ』っていう言葉もなんか怖いですもんね(笑)」

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——だって、ファッションで言えばこのアルバムからモードの服も着こなせる説得力があるわけで。

BOMI「そうかも。メイクも全然しなくなったし。妙に飾らないほうがいいと思っていて。だから、今までは周りの環境云々っていう以前に自分でがんばっちゃってたところがあったんだなって。環境にアジャストすることにも必死になってたし。ホントはがんばらなくていいところもがんばってたかもしれない」

——うん。もちろん、周囲の期待にも応えたいと思うのは当然ではあると思うけどね。

BOMI「そう、期待に応えたいという思いが強いんですよね。根本的な性格としてそうで。それは生い立ちの影響もあると思うんですけど、いつも周りの期待に応えなきゃってまず思うから。そういう自分も含めて、私は今回とにかく一度自分の活動や音楽性を更地にしたほうがいいと思って。更地にして誰にも一緒にやりたいってい言われないなら、私の才能はそこまでだったんだなっていう話なわけで」

——最悪の場合、表立った音楽活動はできなくなるとも思ってたと。

BOMI「思ってました。これでダメだったら、何年かかってもホントに自分がやりたい音楽をイチから一緒に作ってくれる人とやろうと思ってました。それでも前のアルバムからは時間がかかっちゃいましたけどね。もっと時間がかかっても仕方ないと思ってました」

——最終的にはBOMIちゃんの思いをプロデューサーのWTF!?氏も理解してくれたからこそ上がってきたトラック群もあったわけですよね。

BOMI「そうです。『BOMIの言ってることが理解できないと』って言われながらも(笑)、『こんな感じ?』って送ってくれたのが、2曲目の“Mayday”という曲で」

——この曲、素晴らしいですね。もちろん、津野米咲(赤い公園)が楽曲提供し、ハマくん(ハマ・オカモト/OKAMOTO’S)が見事なベースプレイを聴かせてくれるリード曲「月曜のメランコリー」も痛快なんだけど、今のBOMIちゃんの核はこの曲にあると思う。

BOMI「”Mayday“は完全にBOMI節であり、WTF!?節だから。デモを最初に聴いたときは今までと大きくイメージが変わる感じではないと思ったんだけど、聴き込んでいったらよくなりそうだなと思って。私は、最初から『1枚でワントーンのアルバムを作りたい』と言っていて。でも、曲を作り始めたときはまだメジャーの環境にいたんですけど、私の意見と周りの意見が明らかに対立してたから。それもあって、曲作りをしていくうえでレコーディングした曲の色はバラバラだったんですよ」

——最初は純然たるフルアルバムを制作しようと思ってたんですよね。

BOMI「そうですね。ホントは全12曲くらいのフルアルバムを作るつもりだったんだけど、曲を録ってから環境も変わってリリースするってなったときに、やっぱりワントーンでまとめた作品にしたいと思って。それでバラエティはありつつもワントーンでまとめられる6曲を選んで、残りはCDエクストラに収録するというパッケージにしたんです。CDでしか聴けない5曲が付いてるというのも、この時代にCDを買う理由にもなるかなと思ったし」

——本編に入ってる6曲で言えば、バンドの編成が変わったことが大きく影響してますよね。平たく言えば、生のバンドサウンドにとらわれないシンセポップとしての要素が強くなった。

BOMI「すべてデジタルになるのもつまらないと思ってるから、いかにデジと生を融合させられるかということはかなり意識してました。そのあたりを今のメンバーにすごく助けてもらったし。点じゃなくて、面の発想でサウンドを組み立てられるというか」

——そういうサウンドの方向性とワントーンで統一する作品性は、BOMIちゃんの歌のうまさがかつてないほど浮き彫りにしていて。今まではギミックがあなたの歌を殺していた部分もあったんだなって。そういう気づきがありました。

BOMI「小文字時代のbomiとして活動をスタートさせたときに私はまず歌をうまく歌っちゃダメだなって思ったんですよ。そうじゃないとサウンドにハマらないし、じゃあ私の歌は素材に徹したほうがいいんだと思って。気をつけることがあるならリズムだなと思ったし」

——でも、こんなに歌えるなら、やっぱり殺すのはもったいないよ。

BOMI「今作に入ってる曲を聴いて、いろんな人に『BOMIちゃんってめっちゃ歌うまいじゃん』って言われて(笑)。歌がうまい基準っていろいろあると思うし、私は技巧的にうまいという感じでもないと思うんですけど、やっと私なりの歌のうまさが伝わったんだなって思うとうれしいですよね」

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——「月曜のメランコリー」だってものすごくギミックに富んだ曲なんだけど、でも実はこの曲のプログレッシブな展開やサウンドのギミックってサビのグッドメロディを強調するためにあると思うんですよ。そこはやはり津野米咲はさすがだなと思ったし。

BOMI「ホントに。おもしろかったのが米咲ちゃんに『歌詞を付けにくいメロディでしょ?』って言われたんですけど、めちゃくちゃ付けやすかったんですよ。日本語が乗りやすくて。最初に『次のアルバムに楽曲提供してほしいんだけど、興味があったらどうですか?』って話して、『するする!』ってノってくれて2曲送ってくれたんですね。そのうちの1曲が“月曜のメランコリー”で。最初にデモを聴いたときは全部キーボードでメロが入っていて『え、これ私歌えるのかな?』って思ったんですけど、米咲ちゃんに私がこれを歌えると思ってもらえてるなら負けないぞって思って」

——彼女はBOMIちゃんのスキルをあらかじめ見抜いてたんだと思う。

BOMI「だとしたら光栄ですよね。私もこの曲が大好きなんですけど、ただこの曲がリードとしていろんなところに流れで、このロッキンな感じが今の私だと思われるのは違うなとも思っていて。でも、この曲を入口に新しいリスナーが振り向いてくれるならありがたいことだから、この曲を提供してくれた米咲ちゃんとベースを弾いてくれたハマくんにはすごく感謝していて」

——でも、サビの哀愁に満ちたメロディはワントーンの全体像と調和してると思うから。ホントにこの曲を入口にほかの曲も楽しんでもらえたらいいですよね。

BOMI「そうであってほしいですね」

——過去の自分を埋葬し、そして新生するという作品の全体像は、ここ1、2年でBOMIちゃんに起こった出来事やそこで覚えた感情を総括して、この作品から明確に新たなフェイズに立とうとしたからこそこうなったのは間違いないですよね。

BOMI「うん、そうですね」

——前回のインタビューと重複する部分もあると思いますが、あらためてそのあたりを話してもらえますか。

BOMI「どういうパッケージにするかスタッフとやり取りを重ねていくなかで、私が“さよならミゼラブル”という曲を書いて。いろんなしがらみをチャラにして、すべて更地になったときにあの曲が生まれたんですよね。そういう状況を今のスタッフが見たときに『だったら自分で自分のお葬式をすればいいんじゃない?』って言われて。『ああ、確かに』って思ったんです。再生=リボーンとかよくあるテーマだし、それじゃつまらないと思って。それなら生まれ変わることを前提に、お別れをするというところにフォーカスしたほうがいいんじゃないかと思ったんですね」

——そもそもBOMIちゃんの人生を考えたら、これまでいくつかの局面で区切りを付けてるじゃないですか。生い立ちにしてもそうだし、シンガーを志してからも名義や音楽的なスタイルを一新してきたバッグラウンドがあって。今回のタイミングもそうですよね。

BOMI「うんうん。ひとつ言えるのは、私は出自も含めて根無し草だと思うんですよ。あとは、そのときどきの人生の流れだったり感覚があって、いつも嘘をつきたくないと思ってる。嘘をついでまでやりたいことなんてないなって今あらためて思う。自分ではなんか違うなと思っても、何かを優先してそれを見ないようにすることってあるじゃないですか。その状態に入っちゃうことって今までもあったんだけど、そうなると自分が発揮できないんですよね。ずっと同じ場所にいるのって、ある意味では温かいし安心もするんですけど、私の場合はどうしても『もっと、もっと!』って思っちゃう。もう、そういう性格だから(苦笑)」

——でも、今回はそういうバックグラウンドやパーソナリティも等しく音楽化できてるじゃないですか。

BOMI「私ってたぶん崖っぷちにある状態のときのほうが真に輝くんだなって思うんですよ。それも問題あるなって思うんですけど(笑)」

——今、BOMIちゃんはすごく女性的な腹の括り方ができてると思う。

BOMI「そうかもしれないですね。次に劇的に自分が変わるとしたら、子どもを産むしかないと思う。結婚じゃ変わらないと思うんですよね。今の自分の考え方や癖って強固に形成されてしまったものだから、自分でコントロールできない存在と状況が現れないと変わらないと思いますね。子どもって自分でコントロールできないじゃないですか。そのときにまた全然違うスイッチが入る作品ができるのかなって」

——最後にここからの展望を語ってもらえたら。

BOMI「私が目指す先は、やっぱりロックじゃなくてポップですね。最近思ってるのは、チャーチーズまできれいになりすぎず、ちょっとスカイ・フェレイラのようなダーティーさ込みの、あいだのポップミュージックを作れるとおもしろいんじゃないかなって。3月にレコ発ライブがあるんですけど、それまでに1曲作って、ここからの方向性をお客さんに見せることができたらいいなと思ってます。だから、ホントにレコ発ライブには多くの人に来てほしいです」

 

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BOMI

『BORN IN THE U.S.A.』

発売中

 

BOMI

2012年6月、ミニアルバム「キーゼルバッファ」でメジャーデビュー。芯の通った繊細な歌声と、緻密に積み上げた洋楽ライクなトラック、都会に生きる女の子の日常を鋭角に切り取るリリックが注目される。これまでにフルアルバム1枚ミニアルバム3枚、EP盤を1枚リリースしている。2015年1月21日に「BORN IN THE U.S.A.」をリリース。3月には東阪リリースイベントも決定している。

http://bomibomi.com/

 

撮影 中野修也/photo  Shuya Nakano

文 三宅正一/text  Shoichi Miyake(ONBU)

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NeoL/ネオエル

都市で暮らす女性のためのカルチャーWebマガジン。最新ファッションや映画、音楽、 占いなど、創作を刺激する情報を発信。アーティスト連載も多数。

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