ボブ・ディランがノーベル文学賞の”候補”に入っている理由
今年もノーベル文学賞発表の時期が近づいてきています。そもそもノーベル文学賞とは、「ダイナマイトの発明者であるアルフレッド・ノーベルによってつくられた、いわゆる「ノーベル賞」のうちの一つ。
彼の遺言によると「理想的な方向性」の文学作品を生み出したものに与える、とされている。発表は年に一度、通常十月の木曜日に行われ、賞金はその年によって異なるが、一億円を越えることが多い」ものなのだそうです。
日本国内の作家では、村上春樹さんが受賞するか否か、ということで毎年大いに話題になっていますが、日本国外でどのような候補作家たちがいるか、すぐに思い浮かぶでしょうか。
本書『ノーベル文学賞にもっとも近い作家たち』では、タイトルが示す通り27カ国38人の、ノーベル文学賞受賞に近いとされる作家たちが紹介され、それぞれの作品の特徴や、日本語で読める作品リスト、またその作家が好きな人にオススメの作家や作品の紹介もなされています。
38人の中には、ミュージシャンのボブ・ディランも入っています。ボブ・ディランの作品の特徴は、「これまでの歌詞とは異質の『詩』を歌い、ポピュラー・ミュージックを革新し、詩が歌と同じ『声の文化』であることを再認識させた」とのこと。
ここで言われる歌詞と詩の違いとして、詩には「過去から繋がっている、膨大な文化的、元型的な伝承が生きて」いることが挙げられています。そしてディランの作品は、まさに様々な英詩の伝統から生み出されているがゆえ、現代詩なのだと解説されているのです。
例えば、初期の傑作「激しい雨が降りそうだ」(1963年)も、口承詩の様式で歌われているのだそうです。
「この作品は、『ランダル卿』という口承バラッドの応答歌の様式で歌われている。『バラッド』とは、詠み人知らずの物語歌のことで、ときに内容は歌い手によって作り替えられ、時代や場所をこえ歌い継がれてきた口承詩である。その意味では、ディランを現代の吟遊詩人と呼べるかもしれない」
ちなみにボブ・ディランの作品が好きな人には、T・Sエリオット『荒地』、ウディー・ガスリー『ギターをとって弦を張れ』、ジャック・ケルアック『オン・ザ・ロード』、アレン・ギンズバーグ『ギンズバーグ詩集』、アルチュール・ランボー『ランボー詩集』がオススメなのだそうです。
古典文学作品を読むことももちろん大事ですが、現在進行形で盛り上がりをみせる世界の文学シーンにも目を向けてみると、好奇心を駆り立てられる出会いや、大きな発見が待っているはずです。今年のノーベル文学賞を予想しながら、本書で紹介されている作品の数々を読んでみてはいかがでしょうか。
■関連記事
- ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
- 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。