【DQ3】ドラクエ3で考える高齢化社会と貧困と絶望 / HD-2D版 ドラゴンクエストIII そして伝説へ…
※本記事ではゲームエンディング後の内容が含まれておりますので、ご覧頂く際はご注意ください。
スクウェア・エニックスの新作リメイクゲーム『HD-2D版 ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』(DQ3)が発売され、多くの人たちがリメイクされた伝説の物語に魅了され、いまも冒険の日々を過ごしている。
小中学生だったプレイヤーは現在40~50代になっている
ファミコン版のDQ3が発売されたのは1988年2月10日であり、約36年前のことだ。当時、小中学生だったプレイヤーは、いま40~50代になっている。当時、大学生や社会人だったプレイヤーは、いま60~70代でもおかしくない。
過ぎ去りし時を求めて、リメイクされたDQ3をプレイし、思い出をより深いものにしている「過去からのプレイヤー」は多いはずだ。
死んだ仲間を預けられるようになったルイーダの酒場
今回のDQ3では、死んだ仲間をルイーダに預けることが可能となっている。死んだ仲間を預けようとすると、一度は断られそうになるが、金銭的に貧困状態であることを告げることで、仕方なく預かってもらえるのである。
死んだ仲間が所持している物はプレイヤーに戻される
死んだ仲間を預ける場合、着用している武具は外さずに預けることができ、所持している物はプレイヤーに戻される。生き返らせるお金が工面できたり、ザオラルやザオリクなどの蘇生呪文を覚えたら引き取りに来る流れだ。
ここからは妄想による駄文ではあるが……。
リアル社会の「高齢化社会と貧困と絶望」を表現している!?
死んだ仲間をルイーダに預けられる……。ゲームシステムとして融通がきくようになり「便利になった」といえる。が、実はこのシステム、いま、これから起ころうとしている「高齢化社会と貧困と絶望」を表現しているともいえなくもない(ゲームクリエイターにその意図はなかったとしても)。
「亡くなっても引き取り手がいない」「お金がない」「仲間や親類がいても面倒な存在となって見捨てられる」など、あまりにも無慈悲な、可能性としてありえる問題だ。
DQ3では、ルイーダが親切なおかげで、死んだ仲間を引き取ってくれるが、このリアルな世界にはルイーダの酒場はないし、ザオリクもなければ世界樹の葉もない。もちろん「しんりゅう」もいない。
親族や頼れる人がいない高齢者だらけの日本になった場合、問題解決できそうなお金もないのであれば、あとは絶望だけが残る。
こども家庭庁「最低の合計特殊出生率を更新」
こども家庭庁が2024年に公開したデータによると、2023年の合計特殊出生率は前年より低下しており、最低の合計特殊出生率を更新したという。50歳時の未婚割合も年々高まっているとしている。
2025年現在も解決されないまま
総務省が公開した2011年のデータを見てみると、2050年には総人口・生産年齢人口・若年人口が減る一方、高齢人口が大幅に増加すると予想されていた。
そんな状況へのカウントダウンが、2025年現在も解決されないまま進んでいることがわかる。
<総務省による人口に関する解説>
「我が国の総人口は、2004年をピークに、今後100年間で100年前(明治時代後半)の水準に戻っていく。この変化は、千年単位でみても類を見ない、極めて急激な減少」
「我が国の総人口は、2050年には9515万人となり、約3300万人(約25.5%)減少。高齢人口が約1200万人増加するのに対し、生産年齢人口は約3500万人、若年人口は約900万人減少。その結果、高齢化率は約20%から約40%に上昇」
高齢者だらけの世界がすでに始まっている
内閣府が公開している「令和6年版高齢社会白書」のデータを見れば、高齢者だらけの世界がすでに始まっていることが理解できる。このままいけば、高齢者の孤独死も貧困も、増えていく可能性は高いように思える。
<内閣府による高齢化に関する解説>
「65歳以上人口は、「団塊の世代」が65歳以上となった平成27年に3379万人となり、「団塊の世代」が75歳以上となる令和7年には3653万人に達すると見込まれている。その後も65歳以上人口は増加傾向が続き、令和25年に3953万人でピークを迎え、その後は減少に転じると推計されている。総人口が減少する中で65歳以上の者が増加することにより高齢化率は上昇を続け、令和19年に33.3%となり、国民の3人に1人が65歳以上の者となると見込まれている。令和25年以降は65歳以上人口が減少に転じても高齢化率は上昇を続け、令和52年には38.7%に達して、国民の2.6人に1人が65歳以上の者となる社会が到来すると推計されている。総人口に占める75歳以上人口の割合は、令和52年には25.1%となり、約4人に1人が75歳以上の者となると推計されている。65歳以上人口のうち、65~74歳人口は「団塊の世代」が高齢期に入った後に平成28年の1767万人でピークを迎えた。その後は、増減を繰り返し、令和23年の1736万人に至った後、減少に転じると推計されている。一方、75歳以上人口は、増減しつつ令和37年にピークを迎え、その後減少に転じると見込まれている」
「65歳以上人口と15~64歳人口の比率を見ると、昭和25年には65歳以上の者1人に対して現役世代(15~64歳の者)12.1人がいたのに対して、令和5年には65歳以上の者1人に対して現役世代2.0人になっている。今後、高齢化率は上昇し、現役世代の割合は低下し、令和52年には、65歳以上の者1人に対して現役世代1.3人という比率になると見込まれている」
そう考えると、しんりゅうでオルテガを生き返らせたのは、良かったのか……。いや、オルテガは働き盛り世代か。
「人の命がカジュアルに扱われる時代」がやってくる?
若者が減り、働ける世代も減り、寿命は延び、高齢者は増え、孤独者が増え、でも所得は上がらず……。DQ3のルイーダの酒場ではないが、もはや「人の命がカジュアルに扱われる時代」がやってくるようにも思えてしまう。
未来の行政「孤独や貧困な状態で亡くなっても大丈夫! なんとかするよ!!」
もしかすると、数十年後、行政がルイーダの酒場のようなサービス「ルイーダ制度」を国民の権利として開始し、「高齢者が孤独や貧困な状態で亡くなっても大丈夫! 全員引き取るよ!!」な展開になるかもしれないが、行政もお金の捻出が必要であり、はたしてどうなるか。
※ゲーム画面の画像は『HD-2D版 ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』より引用
© ARMOR PROJECT/BIRD STUDIO/SPIKE CHUNSOFT/SQUARE ENIX
(執筆者: クドウ秘境メシ)
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