日本人は肩書き偏重主義?

日本人は肩書き偏重主義?

 日本人にとって「肩書き」は結構重要なもの。自分は肩書きなど気にしない、という方もいるかも知れませんが、多くの方は、その人の肩書きで手の社会的地位を判断するのではないでしょうか。事実、大企業に勤めていたり、それ相応の役職に就いている人は、程度の差こそあれ無条件に信頼される傾向はあります。

 一方、以前「執筆活動に専念したい」と所属事務所を退所した俳優の水嶋ヒロさんが、当時ニュース番組で語った自身の肩書きは『表現者』。また、元サッカー日本代表の中田英寿さんが引退後、世界中を旅していたときに定着した肩書きは『旅人』。前者は自称、後者はメディアの言葉遊びみたいなもので、本来はそこまで意味があるものではないかもしれませんが、少なくともそうした肩書きは、その人のキャラクターを規定するには十分役割を果たしたと思われます。

 肩書きには、それがあることで自らを社会的な存在や個性的な存在へ導くという「目標からの逆算思考」的な発想があるということかもしれません。

 それに対して、書籍『武道の教えでいい子が育つ! スウェーデン人空手家ウルリカの子育てメソッド』の著者・柚井ウルリカさんは、それとはまったく違った発想で自らの肩書きを決めたそうです。

 母国スウェーデンで16歳のときに空手と出会い、空手道を極めるため21歳で単身日本に渡ったウルリカさん。現在は空手師範の日本人の夫とともに東京の立川で道場を営むかたわら、3人の娘さんがいるママでもあります。他にも、通訳者・翻訳者・コンサルタント・ビジネスコーディネーターなど様々な顔を持つ彼女にとって、肩書きを1つに定めるのは難しいことでした。

 そうして悩んだ末に思いついたのは、『ライフ・クリエーター』という肩書き。

「人はみんな自分の人生の創造者である」という思いから編み出した言葉で、これは人を選ばず誰でも使える肩書きとのこと。ウルリカさん自身としては、自分は大好きな空手に取り組んだり、母国の子育て文化を日本で実践したりしながら毎日を積み重ね、結果的に自分は日本とスウェーデンの最良の部分を伝え合う、両国の橋渡し役になれたらいいと考えたそうです。そこで、結果よりもプロセスを大事にする「積み上げ思考」に基づき、肩書きを『ライフ・クリエーター』と名乗るようになったというのです。

 ただ、ウルリカさん自身は肩書きをさほど重視していません。むしろ肩書きよりも大事なのは、自分が日々何をするか。同書では、日本人が肩書きに縛られ、結果を追求するあまりに、プロセスを軽んじていることへの鋭い指摘があります。正直、自称・日本通の外国人による日本人批判には辟易させられることが多々あります。ただ、空手を愛し、日本を愛し、日本と母国の橋渡し役になりたいと語る彼女のそうした言葉の数々は、紋切り型の日本人批判とは一線を画します。

 たしかに、私たちはあまりに肩書きにこだわりすぎているのかもしれません。

 

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